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【連載小説】犬と猫⑤

「明日の夕飯は家で食べる?子ども達も平気だからさ」
「え?いいけど?え?大丈夫?」
 
 やはり、こういう現実的なところは大人なんだな。と思ってしまう。心愛とドライブしながら色々と話した。時々景色をみては、綺麗!見て!とはしゃぐ姿は少女の様で不思議な感覚を覚える。心愛は22で一人目を産んで、同じ相手の子を25で二人目を産んだ。なぜ結婚しなかったのかと聞くと、一人目の時は彼が失業中だった為、経済的な理由で結婚せず、彼が経済的に安定するのを待っていたが 二人目を妊娠した段階で彼がキャパオーバーになり蒸発したらしい。その結果、シングルで子育て奮闘中ということだ。その当時の彼の親が哀れに思ったのか今住んでいる3LDKの家を彼の親から安く借りているとのことだ。その当時の彼とは連絡は取ってないが親とは仲良くしている。そんなわけで、一人で中学2年と小学5年の男の子を育ててる。心愛の話はとても楽しい。子ども達のこと過去の恋愛。感性が豊かで自由でまるで猫のような彼女が育てた子ども達に興味が沸いた。海に着くと波打ち際に走って行ってしまった。車から降りて心愛を追いかけると既にサンダルを脱いで波うち際で遊んでいた。夏の終わりが近づいてる為か人が少ない。僕に気づくと駆け寄ってきて、見て!っと拾った貝殻やらシーグラスやらを見せてきた。あまりにも子どもっぽくて、ぎゅーって抱きしめると逃げようとする仕草も可愛いくて愛おしくて 堪らなくなる。足を濡らして遊んでる心愛を呼び戻してドライブ中に買ったパンを渡した。

「心愛さん。砂まみれですがタオルはお持ちで?」
「えっと……それは無いかも」
「でしょうね。タオルあるから綺麗に洗っておいで」

 渡したパンを預かって車からタオルを出して渡すと心愛は足洗い場に駆けて行った。洗い場から帰って来たと思うと足を拭ききれてなくて笑ってしまった。

「心愛さん。ここに座って」

 トランクを開けて抱き上げて座らせる。心愛からタオルを受け取るとサンダルを脱がせ、まだ濡れてる小さな足を拭いてやると顔を真っ赤にして照れてる。

「ありがと……」
「いえいえ。心愛……サンダルどうする?」
「足……届かないからいいや……」

 サンダルをトランクの端に置いて隣に座ると自然と心愛は僕に寄りかかって来る。

「雪那ありがと。なんかごめんね。はしゃいでしまった。」

 

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