休職・復職を乗り越えるには、ネガティブ・ケイパビリティが大事なんじゃないか

僕の主治医は僕が読書が好きなことを知っているので、「くっぺさん、このような本を読んでみてはいかがですか?」と紹介をしてくれます。

休職中、先が見えず悔しい思いをしていた頃に、紹介されたのが『ネガティブ・ケイパビリティ』帚木蓬生著(朝日新聞出版)でした。

この本によると、ネガティブ・ケイパビリティとは、「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える力」とされています。

もっと簡単に言えば、結論づけず、モヤモヤを抱える力です。

休職中はうまくいかない

僕たちは答えを欲しがります。スッキリしたい、わかりたいというのが人間の脳です。教育現場でも答えにたどり着く訓練は多くなされます。

一方で、謎を謎としてとらえたり、判断を保留にしたり、じっくりと構えたりする姿勢の大切さは、なかなか教えてもらえません。ネガティブ・ケイパビリティは、一見すると消極的な力なのです。

僕の場合、休職中はいろんなことがうまくいきませんでした。

仕事を投げ出してしまった罪悪感、なかなか回復しないことへの焦燥感、社会復帰がうまくいくのかわからない不安感。これらの感情に襲われ、休んでいるはずなのに気持ちとしてはむしろしんどい。

家族にも心配や迷惑をかけていることから、「自分は消えてしまったほうがいいのではないか」と日記に書き記している自分がいました。

キャリアの問題もあります。元気になれたとして、その後どうしよう。転職をする?復職を選ぶ?退職をしてフリーランス?それとも障碍者雇用?いろんなことを考えました。

ここまで読んで、みなさんいかがでしょうか。

僕は書いていて、あぁ、とても焦っていたなぁと思いました。答えをほしがって、もがいてもがいて苦しんでいた自分がいました。

ネガティブ・ケイパビリティという救い

ネガティブ・ケイパビリティを知ってから少し生きるのが楽になりました。それは「うまくいかない時期は、ネガティブ・ケイパビリティを高めているんだ」と自分に言い聞かせるようになってからです。

答えを出そう、スッキリしようと思ってもがいてしまうと、気持ちが焦り、メンタルは悪い方向に向かってしまう。それならいっそ、今はモヤモヤを抱える時期だと割り切って、ゆっくりどっしり構える。

うまくいかない。それでも、今日を生きている。

うまくいかない。それでも、できることをやっている。

こういう日々の中で、ネガティブ・ケイパビリティが高まり、休職と言う宙ぶらりんの状態にだんだんと慣れていきました。

じたばたしてもしょうがない、今できることをやろう。それができた自分を褒めよう。そういう境地にたどり着けるようになったのです。

復職後もうまくいかない

何度も書いていますが、僕は1回復職に失敗しています。

復職したときに感じた強烈な不安感に対処できず、人前に立つのがだんだんと怖くなって、自分を保てなくなりました。

敗因のひとつに「先のことを考えすぎた」があります。「今の仕事量でこれだけ余裕がないのに、1年後、2年後仕事量が増えたときに絶対やっていけない!無理!と」考えてしまったのです。

だから2回目の復職は、「うまくいかなくて当たり前」と手帳に書いて臨みました。不安になって当たり前。先のことは考えても仕方ない。目の前の1日、1週間を大切にしようと思いました。結果的にうまくいき、2年以上継続して働けています。

後悔しても遅いのですが、1回目の復職はすぐに答えに飛びつこうとしました。ネガティブ・ケイパビリティ、モヤモヤを抱える力の大事さに気づいていたのに、復職したらそれを忘れてしまっていたのです。余裕がないって怖いですね。

安易な結論に飛びつかず、モヤモヤを抱えておく。これは休職中も復職後も大事な力だと思っています。

終わりに

復職して2年以上経ってから振り返ってみると、休職中や復職直後の自分が、もがいたり焦ったりしていたのを感じます。どうしてあそこまで視野が狭くなっていたのだろうと思うと同時に、あの頃の自分に「よく頑張ったね」と言いたくなります。

結局、モヤモヤを抱えながらなんとか生きているうちに、時間が経ったり、状況が変わったりして、いい方向に向かっていくんですよね。自分の外が変わるだけでなく、自分の中でも怒りや憎しみが減ったり、他人を許せるようになったりします。時間もひとつのお薬。

これは僕が復職にうまくいったから、生存者バイアスが働いているだけだ!と言われたら「ぐぬぬ…」と言うしかないのですが

ネガティブ・ケイパビリティを知って、それを意識して過ごしてみたら結構うまくいったよ~という話でした。

ネガティブ・ケイパビリティは作家や精神科医にとって大事な力らしいのですが、僕は患者にとっても、とっても大事な力なんじゃないかなと思うのです。

おわり。

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