お父さんが怖すぎて理系に来てしまった話②

文理選択。

高校生の一大イベントとも言えるそれは、意外とすぐにやってくる。わたしの高校は少し芸術系にも力を入れていたので、芸術コースなんていう変化球もあったが、ピアノを辞めてしまったわたしにその選択肢はなかった。

こんな風に文章を書き連ねてる時点でお察しかもしれないが、実を言うと文学や心理学、教育といった方面に興味が強く、国語だけずば抜けて成績が良かった。自分でも文系という自覚もあったし、一時期は弁護士もいいなぁと思っていたりもした。

そんなわたしがどうして文理選択という道の分かれ目で理系を選択してしまったのか。

わたしの通う高校は文理選択にあたって事前調査、担任の先生との面談、本調査という3ステップを乗り越える必要があった。事前調査では保護者と相談し、その結果に基づいて希望提出、そして担任の先生と話し合い、本調査を提出するという流れだった。担任の先生との面談が必要なのは悩んでいる子の相談に乗ったり、理系を希望していても明らかに成績が足りない子を文系選択させたりするためだったようだ。成績も問題なく、進路が決まっている子は雑談と応援…といった風だった。

確固として進路を決めている子もいたが、悩んでいる子も少なくはなかった。わたしの高校はいわゆる「リケジョ」を輩出したいようで、成績も良く、進路選択にそこまで強い希望のない生徒は皆国公立理系を勧められていた。文系だと就活が大変…理系に行けば院まで出たとき楽に就職できるしお給料もいい…とかそんな話をされた気がする。

わたしもまさにその一人だった。しかし先ほども述べた通り、わたしはどちらかというと文系志向だった。先生たちの言葉は強制ではなかったから、「文系に行きたい」と言っても何も問題はなかっただろう。

そんなわたしが声をあげられなかった理由はまさに父にある。父は「文系なんて今のご時世必要とされていない。就職できず、大変な思いをするだけだ。理系の時代なんだよ」と言った。それは幼い頃わたしが「音大に行きたい」と言ったのを否定するのと同じ語気の強さだった。

脅しなのか本当なのか分からないが、父はすぐに「学費を出さないぞ」と言った。父の勧める道で頑張るなら学費も出してくれるし、先生たちも理系を勧める。学ぶことは好きだし、文系のことは自分で勉強しよう…そう思い、理系を選んでしまった。

次回:受験勉強と大学入学



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