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映画「鋼の錬金術師」(実写版,2017年)【感想】詰め込み過ぎだが、キャスティングは◎

2022年に公開開始されたばかりの「鋼の錬金術師 復讐者スカー」。その前作にあたる、実写版映画の1作目。キャスティングはどちらも変わらないが、今回限りではハクロ将軍を小日向文世さん(ただし原作では名を聞いたことあるぐらいの存在)、ショウ・タッカーに大泉洋さん、2作目でも一瞬だけは出てた、ラストを松雪泰子さん、ヒューズを佐藤隆太さんが演じている。

今作だけでなく2作目も言えることだが、キャスティングのハマり具合は溜息が出るほど良かった。(全部が全部じゃないにしても) 一方で肝心のストーリーはどうだろう。

まずは母・トリシャが亡くなり、エドとアルが彼女の錬成を試みるところから始まる。(兄弟が若干幼過ぎな気もするが、こんなもんか‥)そして、エドが「アル――!!」と叫んだところで、急にコーネロというエセ神父が暗躍するリオールに舞台が移るものの、コーネルがひたすら逃げた挙句に速攻でやられて終わる。原作、そしてアニメでも兄弟が出会うロゼという女性は今作では出てこなかった。だが、1期アニメのような目にあうよりはある意味よかったのかもしれない。

そして、ウィンリィとマスタング、ホークアイ、そしてヒューズと「ハガレン」ではお馴染みの人たちが登場する。そして、兄弟とウィンリィはヒューズのお宅ヘお邪魔して、妻のグレイシアと出会うのだが娘のエリシアちゃんがいない。どうやら、まだグレイシアのおなかの中にいるらしい。ここでなんとなく察する。エリシアちゃんのことに限らず、原作とはまた違う話の展開にするのだろう、と。

予想は的中。寝ていたはずのエドが急に真理の扉の前にいるのだ。夢?回想?なんだかよくわからない展開になっている。真理の扉の前のシーン自体は原作にもあるものだ。だが、なぜここで?という疑問を抱いてしまう。そして母親を錬成しようとした直後の場面に移るが、エドは幼い子供の姿ではないのも解せない。ますますよくわからなくなった。

話はまた移り、ショウ・タッカーと出会う。タッカーの大泉洋さんはナルホドよく似て見えるし、アレキサンダー(犬)もニーナ(娘)も原作と違わずにとても愛らしい。それゆえに、話の行く先を知ってるのもあり余計に、つらいものがあった・・・・。

それから、タッカー宅にアルを残し、エドとウィンリィはドクターマルコーを探すべく列車に乗ってるシーンへ、というオリジナル展開になる。エド曰く、タッカーがアルを「いろいろ調べる」とのことだが、もう嫌な予感しかしなかった。

それからエドたちはマルコーに出会うがラストに即効見つかってやられてしまい、その後タッカー宅に単独で向かったエドはショウ・タッカーの正体を知ってしまう、と怒涛の展開に。さらにアルはタッカーに変なことを吹き込まれたのもあり、”もともとアルという存在はいなかったんだ!”とか言い出してエドと喧嘩になった上で仲直り。かと思えば、今度は軍の秘密を知ってしまったヒューズが殺されて・・。と息をつく間もない。これらは細かい部分は除いて原作にもあった話ではあるが、あれもこれもと詰め込み過ぎて、感情が置いてけぼりになってしまった。どの話も大事なのは分かるが、あまりにも急ぎ過ぎだろう。

だが、さらに悩ましいのはこれからだ。原作では「妻・エリシアの姿になったエンヴィーにヒューズが撃たれた」という印象が強いが、今作ではマスタングの姿で撃った上に通行人に目撃されるという事態になったために、近しい人間であるホークアイとエドが軍に連行される、というオリジナルな展開になる。

結局マスタングの濡れ衣は晴れたわけだが、更にオリジナルな展開が続く。ウィンリィとアルを捕まえた上で、タッカーが再びしゃしゃり出てきてしまうのだ。とは言え、速攻でタッカーはラストにやられ、そののちにハクロ将軍がタッカーをそそのかしたことも分かるが、彼もまた自業自得とも言える悲惨な最期を遂げる。

そして、ようやく原作通りのマスタング対ラストの戦いに話が戻る。展開の詳細は省くが、今作では意外なことにエンヴィーが「最後の命」を燃やされてしまったようなのだ。でも、2作目ではしっかり復活しているので、なかったことにしたのか?と疑ってしまったが全く無駄な心配だった。実にエンヴィーらしく生き永らえていたのだ。(グラトニーは彼のことは気にもしてなかった笑)

こうして、本来の順番とは違うが、2作目→1作目と見てきた。だが、1作目である今作は苦労のあとは見て取れるが、いろいろ話を詰め込み過ぎだし、オリジナル展開もなかなか幅をきかせてるしで、2作目がすごくよかったという思いも相まってか、個人的にはあまり好むところではなかった。こうまでして詰め込んでしまうぐらいなら、オリジナル要素を少なくして(なくてもいい)、もっと原作に準拠して欲しかった。

最初にも書いたが、キャスティングはやはり見事で、ラストの美しくも残忍なところや、マスタングとの戦いも哀しくも魅せられたのが松雪泰子さんだったからだろう。原作では影の薄いハクロ将軍もいい悪役だった。原作ハクロは最初からどうにも胡散臭かったが、さすがの小日向さんで映画では最初はいい人かも?って思わせてくるあたりがさすがだった。ヒューズもおおむね良かったのだが、エドに「友達」を連呼するあたりは違和感があった。確かに、ある意味彼らは「友達」ではあったかもしれない。だが、そんな風にヒューズは言わないだろう。言わなくてもきっと通じる仲だと思うからだ。そして、娘の顔さえ見れなかったのはさすがにないわーって思わざるを得ない。

この映画、上映当時どんな評判が世間で出回っていたかは知らない。見る前に評判を調べることもしなかったし、知る必要もないと思っている。手放しで絶賛することはないが、どうにもこうにもひどい出来だというわけでもない。可もなく不可もなし、というよりはやや可寄りではある。だが、2作目では大きく良くなっているのを感じられた。下手なオリジナル要素もほぼなかった影響も決して少なくないだろう。3作目もきっと2作目同様以上には期待できるという思いを持ちながら、来月の公開を待ちたいと思う。

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