見出し画像

20240604

シャープペンシルを使って、久しぶりにイラストを描いた。道具を変えれば、扱う紙も変える。サインペンの場合は、一般的なコピー用紙。シャープペンシルの場合は、1枚1枚をミシン目に沿って切り離すことができる、表面のザラついた薄手のスケッチブックの紙。シャープペンシルの芯(2B/0.5mm)が、適度に引っかかる感じがほしい。

今回のイラストにつけた〈CREATION〉というタイトルは、描いている途中ですでに浮かんでいた。なにを描くかは事前に決めていない。最初に人物の顔の輪郭を描き、そこからすべてを派生させていく。個々のオブジェクトはこれまで何度も描いてきた、自分のストックにあるものかもしれないけれど、それらがどう組み合わさるかは、いざ描いてみないとわからない。即興的な試み。意味を追いかけるのではなく、描いたひとつひとつの要素に対するリアクションとして、次に描く要素が決まる。

シャープペンシルの線画は、ラフな描線を何度もトレースしながら、「これだ!」というバランスに収斂させていく。スキャンするまえの時点で、それなりの完成度にまでは仕上げておき、Photoshopではオブジェクトの配置を若干修整するくらいで、大きくはいじらない(ただし、描線自体はしつこいくらいに整える)。サインペンのドローイングの場合は、あちこちからオブジェクトを持ってきて、Photoshop上でレイアウトを構成したりもするから、デジタルでおこなう作業も異なる。

今回はモノクロの状態でかなり完成されてしまったので、彩色をどうすべきか迷った。カラーによってイメージを限定してしまうかもしれないとも懸念したが、それでもいちおうチャレンジはしてみる。さまざま試した結果、背景には強めのピンク色を入れた。もっとマイルドな案もあったけれど、ここでは一発で目に飛び込んでくる「強さ」を求める。〈CREATION〉という言葉が常に念頭にあり、その「ガツン」とくる側面を特徴づけたくなった。最小限の影もつける。影は一部についてさえいれば、人間の脳がほかを勝手に補完する。

思いがけず、新機軸のイラストが描けたと思う。説明的になりすぎることなく、オブジェクトどうしの関係とそこに発生するリズムだけで、画面をずっと見ていられる。そういう理想に少し近づけた気がしている。Behanceにイラストをまとめたところ、悪くない反応ももらえていて、いくらかホッとした。この方向性で作品の数を重ねていき、次の個展にまで発展できたらいい。ゆるゆるなドローイングで試行したスタイルを、きっちりしたイラストにも取り込んで、新しい表現の糸口を探る。足踏みばかりで亀の歩みとはいえ、まだまだ自分のスタイルを更新していっている感覚はある。その感覚は大事な指針だ。

=

CREATION
Illustration: Takashi KUNO / 2024

=

CREATION (Monochrome)
Illustration: Takashi KUNO / 2024

=

CREATION (Drawing in the Making)
Illustration: Takashi KUNO / 2024

=

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?