見出し画像

1000回辞めたいと思った社会起業家を辞めなかった理由【後編】

前編で書いたとおり、私は世界放浪中に「生まれた環境のせいでどんなに努力しても報われる事なく死んでいく人が世の中にはたくさんいる」という事実に直面し、ショックを受けました。

後編では格差を解消するために私が取り組んでいる事業や、社会起業家を何度も辞めたいと思ったのに辞めなかった理由について書きます。

1.格差を解消するために取り組んだ事業

格差を解消するために何をしたらいいのか。と悩んだときに、思いついたのがイベントの仕事です。

学生時代と世界放浪の前後、イベントや展示会でのアルバイトをしていました。特に外国語を使った現場が印象に残っていました。

画像1

これは私が勤務したある展示会で撮影したのですが、日本人、中国人、中国人と韓国人のハーフという多国籍軍で仲良く働いていた現場でした。

年齢や国籍、性別、生まれ育った環境、立場を超えてみんなが一つのチームになってイベントを作りあげる。自分で仕事を選ぶことができ一日から働くことができる。誰でもが平等に挑戦するチャンスがあり、能力次第で評価を得ることができる。

イベントでの仕事は、会社を辞めてぶらぶらしてた私を救ってくれました。旅に出ることが決まってるからと、どの会社でも必要とされなかった私に社会の一員として必要されているのだという自信を、そして自分の夢を叶えるためのお金を与えてくれました。

だからこんな働き方をもっと一般的にすることができたら、今まで働けなかった人や評価されなかった人も正当な報酬を受け取り働くことができる。格差が解消すると思いました。

2.業界の問題点

一方で業界には問題点も多くありました。

①多重構造や不当な中抜きが常態化
特に語学を使用する求人や海外のイベントでの求人のような該当する人が少ない求人では、いくつもの派遣会社が間に入りただ外部に発注しているだけで、実際に勤務した人には少額のギャランティしか払われない。

人気の案件の場合、ギャランティが低くても人が集まるので仲介手数料を不当に釣り上げる。酷い場合はほぼ全額を手数料として徴収し、実際に勤務した人には少額のギャランティしか払われない。

こういったことが多く見られました。

②給料を支払わない会社がある
契約をして仕事をしたのに給料をちゃんと支払ってくれなかったという声も多く聞きました。

私も契約していたイベント会社が夜逃げをしてしまい危うく給料が払われないところだった。という事を経験しました。

③スキルアップをできる環境がない
複数のエージェントに登録し、単発で仕事を行うので帰属意識が低い。このためあまり教育に力を入れない会社が多く売れる時期が過ぎたら使い捨てとなっている人材が多い。

簡単に参入が可能な分、信頼できる会社が非常に少ない。運営面ではIT化が遅れており、業務効率が悪いのでいわゆるブラック企業が多く離職率も高いということもわかりました。

3.ずっと嫌だった起業を決意

登録しているキャストに安心して働ける環境を用意する。
クライアントと一緒になってイベントを作っていく。
運営のスタッフにも働きやすい環境を提供する。

業界を知れば知るほどそんな会社を作りたいという気持ちが強くなり、気がつけば「ないなら私が作る!起業する!」と会社を作ってしまいました。これが現在私が代表を務める株式会社トライフルという会社です。

スクリーンショット 2020-09-25 6.45.20


外国語が話せるマルチリンガル人材を中心に世界中のイベントでのキャスティングと人材紹介を行っています。

世界中どこでも、自分にあったペースで、やりがいを持って、1日から働け、正当な報酬を受け取ることができる。そんな人と企業の良いマッチングをもっとたくさん生み出し、当たり前のものにしていくこと。これが私たちのミッションです。

スクリーンショット 2020-09-25 6.42.55

2020年9月現在、38か国62都市に16000名を超えるキャストが在籍してくれていて外国籍の方が54.4%と日本人と外国人が半数ずつになっています。

4.1年で1000回の「辞めたい」

今でこそ、事業がある程度軌道に乗ったものの、起業した当時は28歳と年齢も若く、出資を受けずに自己資本だけで始めたので文字通り裸一貫でのスタート。

金なし、コネなし、後ろ盾なし。しかも若い女性。悪い人から見れば、カモがネギを背負って歩いているようなものです。案の定企業したはいいものの、大変なことが次から次へと襲い掛かってきてきました。

事業をスタートした時のキャストは20人しかおらず、まずどの企業も相手にしてくれませんでした。騙してお金を巻き上げようとする人もいたし、セクハラのような事もありました。数えきれないくらい嫌な目に会いました。

加えて資金がないので、面接やクライアント対応はもちろんロゴのデザイン、ホームページの制作に至るまで担当は全部自分。休みなんてものはなく、毎日深夜まで長時間労働。慣れない経営に、人を雇用し統制していくことの難しさ。

不安で、悔しくて、不甲斐なくて、もっと先に進みたいのにもどかしくて、、、起業して半年くらいは毎日、家に帰ってきてから夜1時間くらい一人で泣いてました。

なんでこんな大変な事を始めてしまったんだろう。毎日辞めたくて、辞めたくて、辞めたくて…1年間で余裕で1000回は辞めたいと思いました。

5.辞めなかった理由

それでも私が辞めなかったのは、発展途上国の友達の顔が浮かんできて「私が今挑戦していることを挑戦できなかった人もいるんだぞ。 まだやれる。」と思えたからでした。

事業を始めて1年くらい経ったころから、理念を理解して協力してくれる人が少しずつ増えてき結果も出てくるようになりました。

画像4

「華子さん、会社は絶対大きくなりますよ!私初詣で祈っておきましたから! 」
外国人キャストの一人が言ってくれました。

「トライフルで日本企業と仕事した経験が評価されて就職が決まった。」
と発展途上国に住むキャストが報告してくれました。

「結婚を機に来日したけど、なかなか友達ができなくて」
と言ってたキャストがトライフルでできた仲間と一緒に遊びに行った写真をSNSにアップしていた。

私ができるのは、本当に小さな事でたくさんの人を救えないのかもしれません。理想と現実の狭間で悩んで、時々すごく無力だなとも感じます。

けれど、確実に少しずつ私の大事な人たちの生活を良い方向に変えられている。焦らず一人でもたくさんの人に届くようにがんばればいいんだ。そう確信した時、辞めたいと思わないようになりました。

6.最後に

「誰もが自分らしく働ける社会へ」を達成するにはとてつもなく時間がかかるし、大変な事がこれからもたくさんあるでしょう。きっと私一人の夢だったら、すぐに諦めて投げ出していた。

けれど、私の夢を叶えていく過程で、たくさんの人の夢が叶っていく。そして挑戦することができなかった人の思いも背負って挑戦している。だから困難があっても乗り越えられたし、これからも社会起業家という仕事を私は続けていくのだと思います。

このNoteを最後まで読んでくださった皆様が、いつか私たちがやっている事業に何らかの形で関わっていただけたり、理解し応援をしていただけたら嬉しいです。

よろしければサポートお願いします!いただいたサポートは発展途上国へのプロボノ(ボランティア)活動に使わせていただきたいと思います。