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1000回辞めたいと思った社会起業家を辞めなかった理由【前編】

社会起業家とはビジネスで社会課題を解決するために起業している人のこと。
「大変そう!」とか「偽善者っぽい」と思われた方もたくさんいるでしょう。
私も自分が社会起業家になるまではそんな仕事があることも知らなかったし
そもそも「起業したい!」と思うどころか、「起業なんて不安定。絶対したくない」と思っていたような人間。

社会起業家について説明を聞いてもきっと皆さんと同じような感想を抱いたと思います。そんなタイプだったので、実際起業後も悩みに悩み1年目は冗談ではなく1000回は辞めたいと思いました。

「起業なんて絶対嫌!」と思っていた私がなぜ社会起業家になったのか。
社会問題を解決するためにどんな事業をしているか。そして何度も辞めたいと思ったのに、なぜ今も続けているのか。自己紹介も兼ねて初めてのNoteを書きます。

1.はじめに

初めまして。社会起業家の久野華子です。

外国語が話せるマルチリンガル人材を中心に世界中のイベントでのキャスティングと人材紹介を行う株式会社トライフルの代表をしています。(HP:http://www.tryfull.tokyo)


起業する前、私は約1年間世界放浪の旅に出ていました。旅を始めた特に私が特に興味を抱いていたのが、自分と違う国で育ち違う価値観を持った人の考え。旅の間は得意の英語を使って外国人とたくさんコミュニケーションをとり、今までに50か国に渡航。100を超える国籍の人と交流してきました。

世界中の人が貧乏旅行に使う1泊600円で2食付き8人相部屋といったようなバックパッカーの宿に泊まり、アジア人は私一人という環境に身を置きながらの旅。

現地の人や各国からきた旅人など、外国の友達ができ一緒に観光したり、ホームステイをしたり、経済や文化、宗教、政治、恋愛、将来の夢などたくさんの話をしました。

その中で、「生まれた環境のせいでどんなに努力しても報われる事なく死んでいく人が世の中にはたくさんいる」という事を何度も実感する機会がありました。

2.世界放浪の旅で直面した格差

①お金で生まれる格差
トルコ人の友達から「私も世界旅行をするのが子供の時からの夢!いくら貯めたらいいのか教えて!」と聞かれたので私が「1年間で200万円くらいかな」と伝えると、すごく悲しそうな顔で「impossible」と言われました。

なんて言葉をかけたらいいかわからず、あとで調べたらトルコの平均月収は5〜7万円。200万円貯めるなんて、彼女にとっては不可能だと思えたでしょう。

200万円は確かに日本人にとっても大きい金額です。でも日本にいて必死で働いたら貯めることができる人も多いのではないでしょうか?

②ビザで生まれる格差
インド人の友達が「君みたいに自由に旅行ができたらな」というので、私は無邪気に、日本のバックパッカーの合言葉になっている歌い文句「お金とパスポートと勇気があればどこにでも行けるよ」と言いました。

すると彼が笑って見せてきたのがこの世界地図。

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緑がインド人がビザなしで行ける国です。(出展:wikipedia)

58カ国しかないんです。ちなみに日本人は世界一ビザなしでいくことができる国が多く191か国。

彼らがビザをとるには、年収や貯金の証明書を提出して、場合によっては大使館に行って面接をする必要があります。親の年収や貯金の額まで証明書を提出させられる事もあります。

インド人の彼は私なんかよりずっと立派な人なのに自由に海外にいけない。私は日本人に生まれたから50か国渡航した中で、大使館でビザをとったのは2カ国だけ。しかもほとんど形式上の手続きで書類を揃えればほぼ100%通る。

そんな事も知らずに、自分の力で世界旅行を達成したと思ってたのが恥ずかしくなりました。

3.取り残された人は自己責任なのか?

特権の授業(Privilege Explained)という有名なビデオがあります。日本語字幕付きなのでもしよかったらぜひ見てください。

大学生くらいの生徒達が、かけっこで優勝したら100ドルをもらえると言われみんながスタートラインに並びます。レースをスタートする前に先生が言います。

「もし自分に当てはまる条件があったら、2歩前に進んでください。当てはまらない人はその場に残ってください。」

・両親が離婚していない
・父親がいる家庭で育った
・私立学校に通ったことがある
・無料の家庭教師がいた
・携帯電話を止められる心配をしたことがない
・家計を助ける必要がなかった
・大学の学費を自分で払わなくてよかった
   (スポーツの特待生だからという理由以外で)
・食べ物の心配をしたことがない

前の方に気まずそうに白人の生徒が立っていて、スタートラインから動かず立っている生徒はほとんどが黒人やヒスパニックなどのマイノリティ。

先生は言います。

「前にいるみんな。振り返って見てみてくれ。今提示した条件のどれも君たちの成果ではないし、君たちが選んだものではない。君たちの行動の結果でもない。だけどこの競争は前にいる人たちの誰かが勝つだろう。後ろにいる人には競争する資格がないんだろうか?違う。前にいる人たちにはより多くのチャンスが与えられていたんだ。認めたくないだろう。でも事実なんだ。」

あなたは自分が後ろの方からスタートする時、諦めない自信がありますか?
もしも後ろの方に取り残された人がいたとして、果たしてそれは取り残された人の責任でしょうか?

4.認知する事から全てが始まる

もちろん世界放浪前にもテレビや新聞で嫌と言うほど格差について勉強する機会がありました。けれど、テレビやインターネットの向こう側で苦しんでいる人は名前も知らない、あったこともない誰か。どうしてそうなったかも知らないし、一生話すこともない人。そう思ってたから、情報は自然と耳を通り過ぎて行き私の心には全く残りませんでした。

取り残された人が、友達のAちゃん、B君、Cさんになった瞬間。
自分が友達よりはるかに前の方から競争に参加していることに気づいた瞬間。
初めて「変えなければいけない」と思うようになりました。

すべての問題の解決は認知することから始まる。
だからこそ、この格差という問題をもっとたくさんの人に認知してほしいと思っています。

5.格差を解消しなければいけないという使命感

生まれた環境によって埋められない格差を目の当たりにした時。
最初はなぜ彼らが恵まれた環境で育った自分を応援してくれたり、助けてくれるのかが私には理解でませんでした。恥ずかしい話ですが、「自分だったら、嫉妬してしまう」と。

そんな疑問をある時、発展途上国の友人にぶつけたところ「華子は僕たちが挑戦できないことに挑戦している。だからヒーローなんだよ。僕らの代わりにたくさん旅をして、いろんなところを見てSNSにたくさん写真をアップして、どんな感じだったか教えて。華子を通じて僕らも旅を経験できるから。絶対無事で日本に帰るんだよ。応援してる。」と言われました。

この時ほど自分のことを恥ずかしく思ったことはありません。日本でぬくぬく育って、環境に不満を言うばかりで、海外に逃避してる自分。せっかく彼らよりずっと前の方から競争に参加できるのに努力もしていない。

何より、たくさんの自分より恵まれない環境にいる友達に自分のやりたいことを応援してもらって、協力してもらっている。生まれて初めてそのことに、本当の意味で気づいたのです。

旅を終えたら、何かこの人たちのためにできることをやろう。環境に恵まれなかった人たちの分まで、自分に与えられたチャンスを生かして頑張ろう。

と強く決意しました。

後編に続く

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