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【今日コレ受け】チャンスの神様とクラムボルツ【元外交官のグローバルキャリア】

チャンスの神様には前髪しかありませんよ、前髪を掴まないと後ろには掴むところはありませんよ、と若い頃に祖父に諭された。洒脱な祖父だった。

<直感は過たない【さとゆみの今日もコレカラ/第111回】>
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チャンス、ハップンスタンス、偶発。

キャリアコンサルティングの理論にクラムボルツ(Krumboltz.J.D)のLearned Happenstance Theory 計画的偶発理論がある。キャリア形成の多くは、偶然と直感で作られる、と。

私のキャリアのことだ!と思わず膝を打った。目標に向かうキャリアの山登り型に対して川流れ型キャリアとも聞いたことがある。

「これやってみない?」「ここ、受けてみない?」「ここで働いてみない?」と声をかけてもらっての転職人生だ。それもアメリカ大使館や外務省という公的機関まで。
必ずしも二つ返事では毎回受けていない。でもやると決めたら行動に移すのは早い。そのタイミングで、チャンスの神様が現れているのかもしれない。最初に話を持ちかけられた時点で現れていたなら、前髪は掴み損ねてつるっとした後頭部しか拝めていないことだろう。

チャンスを掴む力は上がるそうだ。クラムボルツ理論はそれを具体化している。直感を磨く、と言う言い方もできるだろう。

チャンスを掴む、キャリア直感力を磨く要素は5つある。日頃から持ち続けるべきものがある。<好奇心><持続性><楽観性><柔軟性><冒険心> Curiosity, Persistence, Optimism, Flexibility, Risk Taking.

常に何にでも好奇心を持ち面白がり続けて、お気楽に、冒険を厭わないで挑戦をし続けていると良いことが起る。その先に何があるか、は一旦置いといてやってみる。
だから、いくら就職活動がうまくいかなくても、物事が途中でうまくいかなくなっても、挫折経験がないのかもしれない。

商社マン家庭で育ち、小さな会社を経営していた祖父の羽振りの良さを羨ましく思っていた。おじいちゃまはいいなあ、と。
社会人になってから、「月給取りだったこともある」と言った祖父に聞いたことがある。どうして社長になったの?と。

甲種合格で徴兵された祖父は帝国陸軍で騎馬兵だった。政府は、恩給を出さないために戦中に祖父を退役させた。兵庫出身の祖父は、大学時代の友人のつてで、上京し三鷹の中島飛行機に勤めた。
軍需産業に勤めていたために二度目の徴兵はなかった。ガダルカナルなどに再度出征することはなく、戦争を生き延びた。母はぎりぎり戦中に生まれている。
戦後、中島飛行機をたたむ時に、関西からのよそ者に会社の残務処理が押し付けられた、それで会社を興したのだ、という説明だった。

私が幼い頃の祖父は、会社を売却して優雅な生活をしていた。日経新聞を読んで政治や株の話をして、ロータリーの会合に出かける以外は、仕事らしい仕事はしていなかった。私たちをドイツに訪ねてくる時はファーストクラスに乗っていた。当時は国際電話さえも高い時代で、私たちは当然エコノミー以外に乗ったことがなかった。
そうか、私は祖父のようになりたいのだ。

晩年、投資に失敗して「貧乏しちゃったからね」という祖父の土地に、父が二世帯住宅を建てた。おかげで祖父と会い、話を聞く機会が増えた。そこでチャンスの神様の話が出たわけだ。
祖父が桜並木を通った数日後に自宅で息を引き取ったのが21年前だ。

願わくは 花の下にて 春死なん その如月の 望月の頃

西行

これからも好奇心が赴くままに冒険や探求を続けていく。先に何があるか、は置いておいて。おじいちゃまを目指して。


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