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【今日コレ受け】変化への対応と仮説検証【元外交官のグローバルキャリア】

お客様の変化への対応と仮説検証、基本の徹底、単品管理、端的な用語で自身の経営理念を語り続けた経営者がいる。言わずと知れたセブンイレブンの鈴木敏文前会長、名誉顧問だ。

変化対応、つまり朝令暮改。

<挑戦者たちの朝令暮改【さとゆみの今日もコレカラ/第112回】>

7時に更新、24時間で消えてしまうショートエッセイ「CORECOLOR編集長 さとゆみの今日もコレカラ」を受けてそれぞれが自由に書くマガジン【今日コレ受け】に参加しています。 

大学を出てすぐ、鈴木会長のアシスタントになった。配属は秘書室ではない。オペレーションサポート部というオペレーション本部の一角にあった現場に近い部署だ。基本的に仕事は、年に4回ある元親会社のダラスのサウスランド社(現セブンイレブン社)の幹部との会議の調整と随行だ。

会長の言葉を通訳するには、会長の経営理念を理解すべし、と毎週本部で行われる店舗を受け持つ現場のオペレーション・フィールド・コンサルタント(OFC)会議からマネージャー会議、サスウスランドとの幹部会議まで席に付いていた。シェリル・サンドバーグがLean in 前のめりに会議の席に着いて、と説くまでもなく、私に末席に席が用意されていた。それもバックシートではない。一応は会議の一員として、何も分からない新人が制服を着て紅一点座っているのだ。海外出張の時はさすがに制服は着ない。

多様性や男女共同参画という言葉が定着する前から、女性の登用に長けた人だった。まだこちらが学生気分すら抜けていない頃だ。変化への対応、過去の成功体験を捨てる、チームマーチャンダイジング、単品管理、アウトソーシング、ドミナント戦略、そして仮説検証。門前の小僧習わぬ経を読む。

繰り返し聞いて通訳もした経営理念は、私の血となり肉となっている。外交官の仕事をしていた時もどれだけこの経営哲学が自分なりの戦略を立てるのに参考になったことか。

鈴木会長が新卒で初めて務めた会社は、出版取次会社のトーハンだ。あの頃のように無邪気に会長の話が聞きたい。

鈴木 『週刊少年ジャンプ』の立て直しでも、新しいことに挑戦されたわけですね。

鳥嶋 原点回帰の方針を徹底するため、前の編集長の立てた企画を3カ月かけて関係者に頭を下げて回って断り、スタッフには、「もう次の企画は何もないから、君たちが新しくつくるしかない」と言いました。しばらくして『ONE PIECE』という作品が出てきたのです。今や日本を代表する大ヒットマンガとなりましたが、実は連載を決める会議では、2時間もめました。ポイントとなったのは「意見が分かれたものは当たる確率が高い」という編集部の経験則でした。

鈴木 私も、いろいろなことに取り組みましたが、みんなが反対することの方が、成功する可能性が高いですね。みんなが賛成することはやらない方がいい。
・・
鈴木 ところで、今後、出版界はどのようになるとお考えですか。

鳥嶋 今以上にも、今以下にもならないと思います。発展する可能性もないけど、滅びることもない。それは出版社の心がけ次第ではないでしょうか。むしろ、昨今、商店街の本屋さんが極端に減ってしまったことが憂慮されます。これは出版社、販売会社、あるいは書店さんそれぞれの努力が不足していたこと、さらにはコンビニで書籍や雑誌などが売られるようになり、本屋さんの存在意義が変わってしまったのではないでしょうか。

[対談] イノベーションの視点 
四季報2014年 WINTER掲載

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