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【グローバルキャリア】アメリカの精神科医が日本人や日本をどう見ているか、から再認識した日本の良いところ

日本の人は自分がどうしたい、とか自分がどう感じているかに向き合わないよね。それで我慢したり、苦しんでいて自殺率が高い世の中だったりするのをどうにかできないものかしら。日本人は自分の感情に向き合いもっと我儘(わがまま)になるべきだと思わない?とアメリカにいる妹と一致しました。

日本の人は感情に溺れず行動に移す

それを西海岸にいるアメリカ人の幼馴染にも話してみましたところ、きっぱりと否定されました。この友人は海外育ちのインド系アメリカ人の精神科医です。異文化を色々見てきて社会的に多様な患者にも接している人です。

東日本大震災が起こった時、被災地の人々を見て世界は日本から感銘を受けた。日本人は感情に溺れない。悲嘆に打ちひしがれる姿を見せず、避難所でも我先と押し寄せることなく物資配布の時もきちんと並ぶ。自主的ににトイレ掃除までしている。日本の人は前を向いてひたすら行動に移す。日本人はストイック。他のどの国でも泣き叫んで取り乱す映像が多いでしょう。感情に向き合ってばかりいるよりも行動を起こすことが大事よ、と言います。

彼女の日本贔屓は知っていましたが、日本人はそのままで良い。感情に向き合う必要なんてないまで言うって驚きました。

誰でも彼でもセラピーを受けている米社会

アメリカでは若い友人も若くない友人も、「セラピー」やカウンセリングを受けて自分の気持ちや感情に意識を向けています。何不自由なく育ったかに思える友人達は専門的なカウンセラーに定期的に面談をしています。心理学者や認定ソーシャルクリニカルワーカーがカウンセラーとして活動しています。精神科医は、医学的に薬を処方する事が主ですが、くだんの友人も自由診療でならセラピーもしているそうです。

友人は保険適用での公立病院での小児や思春期の臨床と、自由診療で富裕層のセラピーをしています。接する患者と相談内容は極端に違います。守秘義務で中身は言わないながらも、高校生の患者が練習では大丈夫なのにテニスの試合になると結果が出せない治療を経て試合に強くなった、という話を聞いた事があります。

日本は素晴らしい国で親切な人ばかり

友人に限らず知識層の日本贔屓は顕著です。旅行先としても、観光名所が沢山あって、食事が美味しくて治安が良くて、おまけに誰もがとても親切、とよく言われます。道を聞いたらわざわざ案内してくれた、という話もよく聞きます。一、二週間の滞在を経て、あまりにも「日本人は親切で良い人ばかりだ」と力説されるので、いや、悪い人だっています、みたいな変な説明をよくしています。

日本は本当に街が清潔!ともよく言われます。アメリカの都市から見たらそうかもしれません。逆に、南ドイツの田舎に行ったら芝生はいつも刈り込んであり道具もきちんと整頓されていて、この地域で片付け下手な人はどうするのだろう、といらぬ心配をしました。それに比べれば日本やアジア文化は混沌の上で成り立っているんだなと思います。

でも日本ではアメリカの大都市の様にホームレスで薬物中毒らしき人に付き纏わられたりすることはありません。ロサンゼルスの刑務所上がりのホームレスが多いという地域では、ちょっと視線を送ったせいか小銭を投げつけられた事がありました。

東京の郊外で、早朝だろうが日が暮れてからだろうが近くの公園に犬を散歩に連れて行きます。アメリカでは都市部、郊外や過疎地でも、どの街であってもひとけのない所を歩くなんて危なくて考えられない事です。アメリカで大都市の都心部(Inner city)と言うのは貧困と隣り合わせの危険地帯のスラム街を指す婉曲表現だったりします。シカゴでは、親しい地元の友人がホールドアップされて携帯と財布を取られました。別の友人でオペラ歌手の女性の友人は、護身用のポケットナイフを持ち歩いているそうです。彼女のパートナーは警察官女性ですが、私がコロナ明けにシカゴを訪問した際には日中でも電車に乗らないように言われました。東京では日常的に危険と隣り合わせにいることはありません。

日本の社会保障制度って問題はあっても優れている

破綻寸前とされる皆保険制度だって、大多数の人が医療を受けられる最大公約数の制度です。アメリカでは医療保険は民間制度が中心なので、貧困層よりちょっと上の企業健康保険がない中間層は一番苦労します。日本から一時帰国したアメリカの外交官がアメリカの医療を受けるのが複雑で大変だとぼやいていました。アメリカではかかりつけ医をうまく見つけて、自分の保険が適用する専門医と関係を築かないと迅速に治療を受けるのは難しいです。
医療訴訟の関係か、定期的に歯のクリーニングをしたくても口腔外科と一般歯科医と交代で半年ごとに通院しろと言われました。歯科衛生士を説き伏せて自費で半年ごとにクリーニングしてもらってました。東京では、付き合いの長い歯科医本人が保険内でクリーニングしてくれて、来月来られますか?と聞かれる贅沢さです。

保育園の待機児童問題は解消されつつありますが、私の周りのアメリカ人で公的な保育園を使っている人はいませんでした。お金があってもそんなにはなくても皆ナニーさんやオペアを探して雇っていたのは、公的なその代替手段がないからです。ご両親の介護も公的援助がないから、物価がそんなに高くない中西部のミズーリ州でも、私大の学部長の友人がやっとご両親の施設を手配してその出費の高さに「皆どうしているのかしら」と頭を抱えていました。介護保険なんてありません。日系人のためにある養老施設を運営している人に、将来私も入所できるのかしら、と聞くと所得制限がかなり低く抑えられていることから、「入所要件が合えば」と口篭っていました。老後が心配だから、と帰国を選ぶ現地採用の同僚たちを見送りました。

所得格差があっても再分配でギリギリ保たれている

相対的に日本は今はとても住みやすい国です。信頼ベースで物事が動くのはり多様な社会でもなく、違った考え方や価値観をもつ人がたくさんいないからでしょう。行政や政治への信頼はそこそこあります。汚職や賄賂があってもそんな端金で人生を棒に振ったのか!とアメリカとの汚職金額の違いに驚きます。裁判での慰謝料も0の数が2つ3つ違います。選挙で動くお金も、当然為替換算しても桁が裕に二つ違います。医療費も然りです。
日本は中間層が暮らしやすい社会主義的な議会民主制度です。経済も格差が広がっているとは言え、再分配のバラマキがあり、助成や補助制度も使いこなせばたくさんあります。

源泉徴収されていた宮仕え時代には意識してこなかった税率、社会保険制度、50代で脱サラして受給資格が伸びていく年金制度をよくよく考える機会を得ました。高度成長・人口増のモデルの日本人男性が働き、女性が扶養されて有償労働なしで年金を受給する仕組みは、現代の次世代に希望をもたらしません。頑張らなくてもそこそこやっていて、周りに任せておけばなんとかなるという仕組みは、ギリギリ保たれているけれどもう崩壊寸前状態です。

逆ピラミッドで茹でガエルにならないためには主体性と当事者意識

もう少しすると団塊の世代が後期高齢者に達して日本は逆ピラミッドの社会構造になります。その状態で収入が増えたとしても社会保障制や医療費を若年層の負担が増え、所得は上がらず経済は停滞します。経済が弱くて円が安くなれば、ただでさえ先細りの労働力は海外に逃げます。インバウンドの観光に頼れば、サービス業中心で所得の伸び悩みのある経済労働社会になり観光客用の宿泊を優先し土地が高騰します。これはハワイに暮らしていた時に労働市場がサービス業に主に特化し、生産者や農業従事者が減り農地がなくなって地産地消が消えゆく社会を目の当たりにしました。

若者が息苦しくなくて将来に希望が持てる社会を

極端ですが、テロや暴力が横行する社会というのは、私がパキスタンやロサンゼルスやシカゴで見たような若者が将来に希望を持てない社会です。若者を暴力や薬物に走らせやすくなり、極端な思想や他力本願で短期間での救いを求めます。日本でもサイバーネットワークを使ったグローバルな組織的犯罪が増えてきました。物騒な世の中や希望が持てない若者というのは今に始まったことではありません。それでも、私が20代30代を送った頃よりも物騒になり閉塞感は増しているでしょう。おおらかなバブル世代の先輩たちが懐かしいです。

若者が夢を描ける社会を示していかなければ、日本も他の国の都市のように女性や高齢者が暗い道を一人で歩くことができない、感染症が蔓延しても医療制度が機能しない国になってしまいそうな気がします。富裕層の税負担が増えると頭脳流出も進むでしょう。起業しても、組織で昇進しても報われない世の中では頑張っても徒労感が募るばかりです。

アメリカの人が憧れる、安全で人が親切で風光明媚で地産の食事も美味しい、そんな日本の姿を守っていくには、やっぱり一人一人がある程度我儘せずにに自分の感情に向き合っていった方がいいのではないでしょうか。人任せのルールで皆で我慢ばかりせずに。当事者意識を持って主体的に皆で楽しく暮らす世の中を目指していきたいです。自分がどうしたいか、どうありたいかを考えて、自分にやさしくなり、いろいろな考え方を受けれいて人にも寛容になることで、若者に希望が持てて自分を追い詰めることのないゆとりのある社会を作れるといいです。

自死を選ぶ人が減って自殺率が下がり、子供を安心して産めて出生率が上がる世の中。自分の幸せや世の中のことまでを考えて、人任せにしている内に戦後が気がついたら戦前になっていないように、目を開けていたいです。アメリカや多くの国々と違って、若者がほぼ80年間銃を取ることを免れてきた日本のこの平和とも、世界の紛争とも、そして自分とも真剣に向き合いたいです。だから海外から良く見られようが、これだから日本人は、と言われようが、日本にいる者として自分と周りの人と日本社会についてしっかりと自分で考えたいです。


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