【元外交官のグローバルキャリア】昇進を狙って自己アピールを
英語社会では自己アピールがすべてだ。
昇進を狙うにも、グローバル組織では自分の功績を具体例とともに箇条書きにしておく。転職時に履歴書に書く内容に似ている。定量化と定性化で相対的に自分がしたことを記録して上司とも共有するのである。
日本では、出る杭は打たれる The nail that sticks out gets hammered down だそうだ、とよくアメリカ人が口にする。必ずしもそうではないけれど、個人プレーや功績を主張するのは日本のスタイルではない。誰かが見ていてくれる、という期待がある。上が良きにはかってくれる、という信頼もある。
英語では、まずは自分の要望が通るか訊いてみよう、It doesn't hurt to askとなる。おとなしくしている人は何も欲していないと誤解される。それは組織内の昇給や昇進機会についても同様だ。
軋む車輪は油を刺される
アメリカ大使館で勤務していた時は、上司である外交官が私たち日本人職員の分の人事考課にも真剣に執筆していた。自分が箇条書きにした1年間の実績を元に、具体例を積み上げ、昇級や号が上がるような申請がされる。その内容に対しての本人のコメントと署名で人事課に提出された。日本の外務省員となって、どういうタイミングや理由か分からずに級や号が変わるのとは大違いだった。
アメリカ大使館で、「まだ早い」と言う理由で規定の時期の昇進を見送られたことがある。当たりは強いが理不尽ではない上司に、昇級をさせない理由はわかった、代わりに号が上がるように国務省の栄誉賞の表彰申請をして欲しいと要求した。I would like you to nominate me for the meritorious step increase. バーターだ。転んでもただでは起きない。おかげで私は駐日米大使名で国務省の栄誉賞を個人の功績として手に入れた。インクジェットで印字した内容は薄れているけど、略歴には載せられる。車輪が軋んだら油を差してもらえた。The squeaky wheel gets the grease. 言ったもの勝ちだ。
昇給の交渉にも食い下がる
日本の役所では昇給交渉の余地はゼロだった。転職した先も非営利経済団体だったので給与交渉できる幅は少ないがゼロではない。最初の契約書を交わすときに、「契約更新時に給与額を見直す」Compensation will be reviewed and reevaluated upon successful completion after this one year contract.の一文を入れてもらった。更新時にその一文を流そうとするのを食い下がった。We were going to reevaluate my compensation. I believe I am due for an increase. 上司は言われなければ放置する心づもりだった様だが、コロナ禍での前代未聞の小規模ワクチン接種事業を指揮したことを押し出した。危機や問題があった時に高評価を狙えるチャンスがある、それは外務省の上司が教えてくれた。
給与額は業界水準をリサーチして、給与交渉の前に提示しておく。組織にも体面というものがある。他の組織の採用募集を気にかけておき、スクリーンショットを取っておくのは有効だ。I understand that the industry average is at ¥xxx. There was a job opening advertised at ¥xx at an equivalent position. Perhaps you could consider an increase at this time. 昇給交渉は相手から奪うのではなく、お互いが得したと思う様なナラティブで挑むのが良い。痛み分け、you win some you lose some. win-win、そのいずれでも良いが交渉は共同作業でゼロサムゲームではない。
女性や日本人であるが故のトラップ
ここでも参考になるのは、私が白人アメリカ人男性だったらどう出るだろう、ということである。ただし、書くときと交渉の時はちょっと違うところがある。先方がこちらの属性によってある種のバイアスをかけているからである。
同じ行動を取っても男性であれば、堂々としている(confident) が女性だと威張っている(bossy)と受け取られるというジェンダーバイアスは一時期よく耳にした。アメリカでも私は直接的な物言いをすると苦笑いをされたものだが、日本在住のアメリカ人の多くには日本人女性に対するバイアスがあると感じた。日本人であればもっと慎ましくしておれ、ということか。
そんな先入観を認識した上での立ち回りはより高度となる。相手や戦は選んで、時には援軍を要請した方が良い時もある。引き立ててもらう、代弁してもらう、そんな上司や組織内メンターを味方につけたい。
グローバル組織で上を目指す日本の人には、メタのCOOだったシェリル・サンドバーグの「女性」の活躍に必要なことを語っている部分を「日本の人」に置き換えると参考になると思う。2010年のアドバイスが日本ではまだ有効ということが、日本のグローバル社会での伸びしろを示している。
仕事での功績を定量化、定性化を厚かましくアピールすることで、日本の人がもっとグローバル社会に認められて欲しい。
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