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「白人男性」のように書く【元外交官のグローバルキャリア】

ビジネスメールが長すぎず、丁寧すぎず、かつ温かみのある書き方をするアメリカ人の30代女性エイドリアンがいます。

その秘訣は、write like a white man。まずは白人男性みたいに本題を書く。それから柔らかい部分を足す、と言います。
上司からメールで不備を指摘されても、「Got it!」了解です、と白人男性かのように一言で済ませる事を覚えた、と。「Thank you for pointing it out, I will make sure to incorporate that next time. 」ご指摘をどうもありがとう。次に活かします。と長々と返信することは控えるそうです。

Old boys club 白人男性社会

私の文章も限りなく白人管理職男性ぽいです。ぶっきらぼうとも言われます。アメリカ大使館の外交官達に鍛えられたせいでしょうか。最後にThank you!をつけて気持ち柔らかくします。

エイドリアンが「白人男性 White man」というのは、社会の多数派、決裁権者や幹部の多くを構成する層です。アメリカでも女性の進出が進んでも、マイノリティと言われる人種が幹部となっても、未だに組織文化を形成するのは白人男性の文化 Old Boys Club である現実は変わりません。

エイドリアンはアフリカ系の父親と白人の母親を持つバイレーシャルbiracialです。黒人文化、白人文化という二つの文化の間を行き来しています。自分を客観視し、環境へ順応することに長けています。

ちょっと古いけど「Lean in」

アメリカ女性のためのビジネス指南でも、よく男性の発信の仕方に学べ、とあります。今の時代、男女いずれかのジェンダーで分けるのも人種でくくるのも流行りませんが、一昔前に一世を風靡した著者「Lean in 」でもシェリル・サンドバーグが男性の発信の仕方と女性の奥ゆかしさについて詳しく述べています。

女性男性に限らず、日本の人がOld boys club であるグローバル文化で立ち回るための良き指南書だと思います。

男女のメールの書き方

リモートで仕事をしていた前職、部下に20代のアメリカ人女性と男性がいました。その二人のメールの書き方の違いも男女差が顕著でした。女性部下は私とのone on oneの定期個人面談で、自分ももっと彼のように無駄を削ぎ落とした男性的なメールを書く、と気づきを語りました。

部下たちは二人とも日本語に堪能な大卒白系アメリカ人 White Americanなので、本人は白人であることを意識せずに、ジェンダーだけで分別して語っています。アメリカには、ジェンダー以外にも人種や文化圏、性的嗜好によってもマイクロ文化が存在します。

日本語のメール文章は敬語での定型で<お世話になっています。>で始まり、<よろしくお願いします>で終わり、ジェンダーに左右されにくい文体です。

そしてその日本語の文体を英語に置き換えると、米社会でいうところの回りくどい「女性的なメールの文章」と捉えられるのです。

背伸びして書く

日本語だと定型に則っていれば間違いはありません。英語の場合には相手を見て柔軟に変える必要があります。それぞれの人のスタイルもあります。

初めてや久しぶりの相手にはI hope this email finds you well. という定型や、I hope you had a restful holiday./ I hope you are staying warm.と事項の挨拶を入れます。次の文でに何の為の連絡かを一文で端的にいれます。

失礼の無いように丁寧に長く書きたいところを堪えて、相手に時間を取らせない、何を求めているの考えさせない、返事に詰まらせない、を第一に文章を作成します。背伸びして短く書くには、メール作成に結構時間を要します。

C-suiteと呼ばれる常務以上の執行役員級への連絡メールは、3秒で理解できる内容に削ぎ落とす必要があります。先方が一言二言で瞬時に返せる内容にします。箇条書きや番号付けも使います。この時も、自分が執行役員だったらどう書くか、と上席のスタイルを真似します。失礼にならずに端的に、これは模倣と練習での会得です。

組織文化と書き方

官僚出身の私の文章は顧客サービスらしい丁寧さに欠けます。前職の米系商工会議所のスタイルだった、美辞麗句を並べる長いメールをまどろっこしいと感じていました。そう思ったのは私だけではなく、元戦闘機パイロットの新任会頭も同じだった様です。You are so polite. と、暗にメールがばか丁寧で長い、と全返信で入っていました。全返信のおかげで上司もそのやりとりに含まれています。それからは遠慮なく、単刀直入なメールとしました。
自分の上司は女性らしい柔らかい長文を好む白人女性だったので、普段はそれに合わせる努力は続けました。Politeは、「ご丁寧に」であるとは限らないのです。日本の人が誤用、誤認することがありますが「慇懃」というニュアンスを含むこともあります。

良い文章とは上司が望む文章。これは米国務省での研修で教わった事です。そしてその「上司」というのは直属の上司だけではなく、上司の上司までも指します。背伸びして、グローバル社会で先へ先へと目指していくと白人男性文化を制することが必要になってきます。迎合はしません。

結びのHave a great day!

エイドリアンには、シカゴに住んでいた時のコンドミニアムの管理事務所の窓口として知り合いました。隣人の騒音がうるさい、とかベランダに蜘蛛がたくさん出没してる、という私のメールに対応してくれていました。無機質なやり取りの結びはいつもHave a great day! でした。

ビジネスでは、Best, xx、 Sincerely, xx 、Warmly, xx で結びます。Best, では固くて冷たい感じもするところ Have a great day! は使える、と思いました。砕けすぎず、冷たくなく、カスタマーサービスにはぴったりの朗らかさです。

今や転職してプロジェクトマネージャーとなったエイドリアンは、組織人としてうまく立ち回っています。彼女が学んだことの一つに Sorryをなるべく言わない、書かないということもありました。代わりにThank you.と言うのです。お待たせ、をSorry to keep you waiting. ではなくてThank you for waiting.となるべくポジティブに堂々と。

白人男性だとしたら、に則って、胸を張って、肩で風を切ったメールを書いてグローバル社会の階段を昇っていきましょう。

追記: 白人男性でも元大使、CEO、医師で実に柔らかい文章を書く人もいます。メールの書き始めがSorry to bother youで、内容は短くも温かい人がいます。これは女性であれば避けましょうの見本ですが、彼はその業界の著名な名医で論客です。皆さん温かいユーモアも入れています。
人としてさらに上を目指すのであれば、ぶっきらぼうなメールに修飾をつけるのではなく、彼らのように春風接人秋霜自粛といきたいものです。

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