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かりんのかんづめ ~イケメングループを嫌いになった日~



 前も書いたけれど、小学生で舘ひろしを好きになってから中学に入っても変わらず好きだった。
 基本的にジャニーズ系よりも、渋い大人が好きで、時代劇に出てくる目つきの鋭い侍に恋い焦がれていた。

「嵐なら誰?キンキキッズはどっち?」
 なんて友人との定番トークでは、空気を読んで何となく誰かの名前を言っていた。

 加入していたバスケ部は陽キャな可愛い子が多く、私は明るいけど可愛い子ではないし、人の後ろにいるタイプだった。

 その可愛い子達といると、イケてる男子グループが近づいてくる事がある。

 それは、冬の寒い日の部活帰り。
 いつもの部活メンバーで歩いて帰っていた。北海道の冬は本当に寒く、私はブラウン色のダウンジャケットを着ていた。本当は白や黒が欲しかったが。買い物時、いつも母が言う「うちは貧乏だから買えないよ!」の言葉が浮かんだ。ブラウンだけ金額が安かったので少しでも安い物を、と本意ではない色を買って着ていた。
 手には、5本指の手袋を付けて(北海道では履くと言いますが)。

 いつものメンバーなので、気を使う事なく和気あいあいとした雰囲気の帰宅だった。
 指先が冷たくなってきたので、私は手袋の指を通さずにじゃんけんをする時のグーの状態にして手袋の中で温めるようにしていた。指が通っていない部分はイカの足のようにぷらんとした状態になっていた。

 気づくと、後ろの方からイケている男子グループの子たちが歩いて来ていた。
 部活帰りの子もいるけれど、そうではない男子もいたので補習があったのか、遊んでいたのかも知れない。

 男子は歩きながら全員で雪合戦をしていた。

 一緒にいた女子のリーダー的存在の子が、ニコニコして男子が来る事を喜んでいるようだった。
「いやだー、こっちに雪投げないでよ!」
 明らかに嫌ではなさそうな顔と声でそう言った。

 男子は嫌だと言われるとその行動をするもので、可愛い女子だと余計してしまう。

 私は場違いのようで居心地が悪かった。

 再び確認のようで申し訳ないが、私は渋い年上の男性が好みだったので、同世代のイケメンは顔が整っているのは分かるけど。舘さんを見てキュンとする感情と同じものは、そうそう沸いてこなかった。

 イケている人達が戯れる姿を見ながら、自分も楽しんでいると言い聞かせ、そこに混ざっている風を装っていた。



 男子グループには中心的存在の子がいて。イケメンではないけど、面白さと気の強さでボス的ポジションを得ていた。


 その男子が私の姿をまじまじと見て、言った。

「お前、バルタン星人かよ!」

 うーん、確かに!
 私もそんな見た目になっている事は、なんとなく解っていた。確かに、茶色の塊がモコモコしてて、五本指をプラプラさせて明らかに変な見た目だ。友人だけで、気が抜けていた。

 周りの男子も笑っていて、私の思春期真っ只中のもろ過ぎるガラスのハートが、パリンと音をたてて割れた。

 そのイジワル男子は、近くにあった誰かが置いていた自転車の鍵を外し、乗り出した。
 こんなド田舎で自転車の窃盗は滅多にない。都会と違ってすぐにバレてしまうから。
 周りの男子は大声で笑い、止める者は誰もいなかった。

 持ち主にとって大事な物だったらどうするんだ!今、まさに私の大事な心が折れている、想像力に欠けた男子の一言で!

 私の中で一つの方程式が出来上がった。  

 イケているグループの男子
 =性格が悪い可能性が高い!

 そう、偏見極まりない。
 だがしかし、思春期のトラウマは根深くて。今でも少なからず、容姿の良い人に会うと最初は腰が引ける。

 そして、心の中で叫んでしまう。

 くっそぉ!青春時代も社会人になっても良い思いをして来たんですよね?!
 そんな奴は敵だよ敵!!

 あれ、南海キャンディーズの山ちゃんみたい?



 だけど、大人になってもっと悲しい事実を知りました。

 意外と爽やか優男や雰囲気イケてる普通顔の人も、けっこう悪い事してるって。
 いや、むしろしているかも!

 安心して付き合った女友達が、泣き寝入りした所をいっぱい見ましたぜ。

 ダメ男逮捕の依頼があったら、友人たちから得た臭覚で、犯人の確保に協力出来ちゃう。


 まぁ、そんな事より。
 今、考えたらバルタン星人は可愛いよね💛

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