くにい

面白かった本の紹介やちょっとした感想を書いています。 よかったらよってって~♪

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最近の記事

五重塔 幸田露伴

読み慣れた中世の古文とも、現代の書き言葉とも違う、言文一致体で書かれていない小説。読むのに骨を折るけれど、それでも読んで本当に良かった。 興味のある方は粗筋をもとに読むことをおすすめします。是非、幸田露伴の作る文章を楽しんでみてください。 主人公は「のつそり」こと十兵衛。あだ名の由来は仕事の仕方から。丁寧に仕事をし腕もあるが、期日に間に合わないことも。大きな仕事をさせてもらえず、親方の源太からまわしてもらう小さな仕事をして生計を立てる。 ある日感応寺に五重塔を建てる計画

    • 葉桜と魔笛 太宰治

      姿が見えなければ、簡単に傷付ける言葉を投げる。いや、投げつける。そんな想像力の無い寂しい世の中に、こんなあたたかい話が埋もれていた。 「桜が散って、このように葉桜のころになれば、私は、きっと思い出します。ーーーと、その老人は物語る。」 この話の中心人物は、私、父、妹。母は私が十三のときに亡くなった。父は頑固一徹の学者気質の中学校長。私は父を心配し、家を出なかった。 妹は大変美しく、髪も長く、可愛い子だったが、からだが弱かった。腎臓結核になり、余命宣告を受ける。 寝たき

      • 悪魔の舌 村山槐多

        こんなことをしてみたい。あんなこともしてみたい。そんな願いは禁止されることによって激しい欲望に変わる。 自分はある宴会で金子に出会う。その口元は特徴的で、悪魔のようなものだった。二つの緑青の棒が、常にびくびく動いている。食事をするときなど、更に壮観。その有様に見惚れるほどである。 ある日、金子から電報が届く。「クダンサカ三〇一 カネコ」。待ち合わせだと思い九段坂へ行くが、彼は来ない。九段坂近くにある、彼の家へと向かう。 彼の家に着くと、入り口に警察官がいる。驚いたことに

        • 桜の森の満開の下 坂口安吾

          大きく息を吸う。吸い込んだ息は風船を三度膨らませる。とうとう風船が割れ、そこにいる自分にはたと気付く。そんな作品。 この作品は気付きをキーワードに四部に分けられる。 一部。美への気付き。 「大昔は桜の花の下は怖しいと思っても、絶景だなどとは誰も思いませんでした。〜中略〜桜の林の花の下に人の姿がなければ怖しいばかりです。」 確かに、桜の花舞い散る中で一人歩いていると、散る花が演出をしているのか、視覚で風の音を感じていたではないか。音もなく音がする。あの不思議な感覚がこの

        五重塔 幸田露伴