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エッセー「映画 ”激走!5000キロ(The Gumball Rally)" の思い出」

 そろそろ本格的に受験勉強に身を入れなければならないはずの高校2年生の頃、まるで現実逃避するかの如く映画三昧の日々を送っていた。

 そんな中、渋谷ジャン・ジャンで有名な山手教会に程近い渋谷ジョイパックシネマで観たのが本作「激走!5000キロ(原題:The Gumball Rally )である。

 ストーリーは単純で、ヨーイドンでアメリカ東海岸のNYをスタートし、誰が一番早西海岸のLAのロングビーチに着くかという、いわゆる大陸横断キャノンボールものである。この映画の場合、優勝者に与えられるガムボールマシンのトロフィーに因み、作品タイトルにもなっている「ガムボールラリー」と呼称している。

 NYをスタートしたらひたすら全開、もちろん交通法規も完全無視。当然だが、警察はスタートの時点からマークしているが、海千山千の参加者に翻弄され、シオシオのパーになるのもこの手の作品の常道展開。

 レースの発起人であり、自らも1966 AC Shelby Cobra 427で参加する若きエグゼクティブ、バノン役にはマイケル・サラザン。後に「蜘蛛女のキス」と「パラドールにかかる月」でゴールデングローブ賞にノミネートされ、人気作「アダムスファミリー」などにも出演した名優ラウル・ジュリアが、バノンのライバルが、必勝を期すため1972 Ferrari 365 GTS/4のドライバーとして選んだプレイボーイのイタリア人レーサー役で出演している。なお、ラウル・ジュリアは、1994年に胃癌と脳卒中の併発により、54歳の若さでこの世を去った。合掌。

 この作品の場合、ストーリーや役者はいわばどうでもいい脇役で、主役は飽くまでもクルマ。ただひたすら爆走するスポーツカーの姿を堪能する映画である。

 スタントマン出身の監督、チャック・ベールらしく、クルマにはこだわっている。先述した1966 AC Shelby Cobra 427、1972 Ferrari 365 GTS/4をはじめ、1972 Chevrolet Camaro、Porsche 911 E Targa 、1957 Mercedes-Benz 300 SL Roadster 、1969 Rolls-Royce Silver Shadow I、1971 Dodge Polara、1968 Chevrolet Corvette 、それに英語が話せないポーランド人(?)ライダーが乗るバイク、Kawasaki KH 400なんかがスクリーン狭しと爆走する。

 今から考えれば、ポーランド人をバカにしたり、LAでは団体の日本人観光客を皮肉ってみたりと、差別もろ出しの描写や表現も散見されるが、それが嫌味に感じられないのが、この時代の映画のおおらかさなのである。


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