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Essay

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鳴海邦彦が思いつくままに、そして気ままに綴るフリーエッセー。
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2022年3月の記事一覧

エッセー「わがプロデューサー人生会心の一作 "AE86完全復活宣言"」

 TDKコアのプロデューサー時代に企画・プロデュースした60本以上のクルマ系販売用ビデオの中でも特に思い出深い作品は、CVS(コンビニエンスストア)・書店ルートで累計13,000本以上の記録的な大ヒット作となったハウツービデオ "AE86完全復活宣言"である。その作品のロケは、ハウツー部分が群馬県高崎市のカーステーションマルシェ、走行シーンは同県の中之条で行われた。  AE86をカニ走りさせたワインディングロードは、故小渕総理大臣の選挙区の中之条で、小渕一族の強力なスポンサ

エッセー「いま、男は”大藪な奴"を目指す」

 虚々実々、何が善で何が悪なのかもわからない混迷の時代。  ともすれば狡猾な為政者や権力者のプロパガンダに洗脳され、自らのアイデンティティすら失いかねない。そんな時代だからこそ重要なのがMeism(ミーイズム)である。  何があってブレない自分軸、自分こそが世界の中心、自分こそが神、本能と欲望の赴くまま自らの欲することをなす、それこそがMeismのドグマである。そしてMeismの権化とも言えるのが"蘇る金狼"の主人公 朝倉哲也なのである。  唇に微笑み心に拳銃。デモーニ

エッセー「世界最強の無敵艦隊 バルチック艦隊を打ち破った奇跡の戦術 ”東郷ターン"」

「敵艦見ユトノ警報二接シ 連合艦隊は直チニ出動 コレヲ撃滅セントス、本日天気晴朗ナレドモ波高シ」  日露戦争当時、世界最強と畏怖されたロシア バルチック艦隊との海戦に際し、敵艦隊の位置の測距ミスによりバルチック艦隊の正面に出てしまった連合艦隊。この時、危険を避けて敵の西側へ転針すれば逃げられる可能性が高かった。しかし、連合艦隊司令長官東郷平八郎の下した決断は取舵、つまり東へ転針であった。  ここで取舵をすれば連合艦隊が回頭を終えるまで、敵の集中砲火を浴びることになる。東郷

再生

エッセー「古き良き80年代 TBSが誇る伝説の名番組" サウンドインS "の想い出。空前絶後のブラスロックバンド "スペクトラム" と歌姫 ”しばたはつみ" 圧巻のコラボ

 1980年代、TBSの「サウンドインS」は、フジの「ミュージックフェア」と双壁をなすハイクオリティな音楽番組だった。  毎週繰り広げられるトップアーチストのコラボレーションは豪華絢爛。  まさに茶の間にいながら高級クラブでのショーを楽しむことができた。  番組レギュラーの"しばたはつみ"は、その見事な脚線美も眩い「歌って踊れる」実力派シンガーにしてエンタテイナーだった。  2010年3月、急性心筋梗塞により57歳の若さで帰らぬ人となったが、本当にその死が惜しまれる。  スペクトラムは語るまでもなかろう。彼らこそ日本におけるブラスロックバンドの始祖である。  未だその存在を越えるバンドは出現していないことから鑑みても、彼等がいかに凄い存在であったかが推察できよう。

エッセー「敢えて苦言を呈す」

 クルマの価値は絶対的なパワーやクイックな運動性だけじゃない。  乗っていて幸せになれる。思わず笑顔になるクルマ、そんなクルマこそが素晴らしいクルマなのである。  例えばW201型メルセデス・ベンツ190E 2.3-16、ラフな一般路の凹凸を時速50kmで通過した時のリヤサスペンションの「こなし」。  車体が激しく揺れることもなく、不快な突き上げを感じることもなく、進路が乱れることもなく、まるでフラットロードを走っているが如く何事もなかったように通過する。  ステアリ

ショートエッセー「人生に一度は言ってみたいセリフ」

 一生に一度は言ってみたいセリフ。  松田優作主演「遊戯三部作」最終章"処刑遊戯"より。  成功率100%を誇る凄腕の殺し屋・鳴海昌平を組織に引き込むために罠を仕掛けた女エージェント 直子(故リリィ)が、次のターゲットの資料を持って鳴海のもとを訪れた時のセリフ。 女 「抱いて」 鳴海 「一度抱いた女を二度抱くほど暇じゃない。帰れ。」

ショートエッセー「昭和46年(1971年)の記憶」

 眠い目をこすり、TBSラジオを聞きながら、深夜放送で至福の時間を過ごしていた昭和46年(1971年)。  23時から始まる「桂三枝のグリグリ20分」が終わると、いきなり小川テツヤの名調子が耳に飛び込んで来る。  「さ~! ヤングのみんな、そろそろ夜のドライブの時間じゃないかな? 今晩はどこに行こうかって考えてる君達、稲村ヶ崎なんかどうかな? 今から一時間後、稲村ヶ崎のトルネードに集合だー!」  今では考えられないナイトドライビングへの誘いである。  クルマがヤングの

エッセー「私的スポーツカー論」

 単なる移動手段としてではなく「運転そのものを楽しむ」ためのクルマ、「走る・止まる・曲がる」といった基本性能をハイレベルで満たしているクルマ。そんなクルマ本来の姿を遵守してつくられたクルマをあえて「スポーツカー」とよびたい。  テクノロジーの進化は、ドライバーから「運転を楽しむ」という要素を奪いつつある。単なる移動手段としてクルマを使うのならそれでもいいだろう。しかし、クルマを操縦し、運転そのものを楽しみたいというドライバーにとっては、なんとも寂しいことである。  どんな