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Essay

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鳴海邦彦が思いつくままに、そして気ままに綴るフリーエッセー。
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2020年6月の記事一覧

エッセー「稀代の迷曲は実は社会派の啓蒙ソングだった!左卜全"老人と子供のポルカ」

 齢(よわい)50歳にして銀幕デビュー、そして76歳にして歌手デビューという偉業を成し遂げた稀代の名優・左卜全(ひだり ぼくぜん)。  大阪万博が開催された1970年(昭和45年)にリリースされたデビュー曲 「老人と子供のポルカ」 は、実に40万枚の大ヒットとなった。  いきなり「ズビズバ~!」というフレーズから始まり、「た~すけて~」で終わる衝撃的なこの曲。  実は・・・・・。  歌詞一番「やめてケレ、やめてケレ やめてけ~れゲバゲバ」  ゲバゲバは当時安保闘争で

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エッセー「女は化粧、男は武装」

男の価値は筋肉で決まる。 筋肉と言えばアーノルド・シュワルツェネガー、この男をおいて他にはいない。 1986年製作・公開「ゴリラ(原題Raw Deal)」で魅せた殴りこみ、武装の美学。

エッセー「伊東に行くならハトヤ " ハトヤ大漁苑 " の思い出」

 小学生の頃、町内会主催の一泊二日バスツアーで伊東温泉ハトヤに行った。  狂乱とカオスの一夜が明けた翌日。帰路のお楽しみ、噂の大漁苑での昼食となった。  当時は「西品川の釣りきち三平」の異名を誇った不肖・鳴海。  「釣れば釣るほど安くなる三段逆スライド方式 」を真に受けて、入れ食い状態のハマチを釣りまくったらとんでもないお買い上げ料金となりオカンに大目玉を喰らった。  しかし、さすがは ' 営業の神様 ' と畏怖される我がオカン。町内会の飲んべえ達に刺身をふるまい、気

エッセー「アクション女優の始祖 志穂美悦子礼賛 ”必殺女拳士”」

 志穂美悦子はアクション女優の始祖であり、唯一無二、空前絶後の存在である。  1974年12月に公開された「女必殺拳 危機一髪」で衝撃的なスクリーンデビューを飾った志穂美は、日本映画界に「美系アクション女優」という新たなカテゴリーを確立した。  1976年公開の「必殺女拳士」は、香港のカンフーマスター・李紅竜を主人公とする「女必殺拳3部作」でその地位を不動のものとした志穂美が、新境地を切り開くべく挑んだ意欲作である。  オープニングのトレーニングシーンで、息吹の際に子役

エッセー 「めくるめくバブルの記憶 "波の数だけ抱きしめて"」

 バブル景気が弾ける直前の1991年に公開されたホイチョイプロダクションの「波の数だけ抱きしめて」。  「私をスキーに連れてって」や「彼女な水着に着替えたら」など、幾多の名作を生み出してきた馬場監督率いるホイチョイプロダクションだが、この作品こそ、その白眉と言っても過言ではなかろう。  湘南、夏、FM放送、洋楽、恋、青春。134号線流しながら、メンソールのSometime吸ってたあの頃。 映画の中の時代設定はバブル真っ只中の80年代。何もかもが可能だった素晴らしき時代。

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エッセー 「美しき開脚 "The Epic Split feat. Van Damme by Volvo Trucks"」

かつてこれまで神々しい映像はあっただろうか。 まるで氷面を滑走するかのように滑らかに走る2台のVolvoトラック。その2台のドアミラーを踏みしめ、揺らぐことなく明鏡止水の境地で静かに目を閉じて腕を組み仁王立つジャン・クロード・ヴァンダム。 やがて2台のトラックの間隔は徐々に開きはじめ、ヴァンダムの脚は美しきSplit (180°開脚)となる。 2019年にVOLVOが大型トラックに採用している独自のステアリングシステム「ボルボ・ダイナミック・ステアリング」を訴求するために製作されたこのCMは、その発想の奇抜さ、そしてジャン・クロード・ヴァンダムの神々しいまでのSplit (180°開脚)で世界的な話題となった。 まさにヴァンダム降臨。ヴァンダムの前にヴァンダムなし、ヴァンダムの後にヴァンダムなし。 泰然自若、男、ことに臨んで一切の迷いなし。

エッセー 「18年の時を経ても未だ輝きを失わない傑作 "Returner(リターナー)"」

 2002年に公開された金城武主演の映画「リターナー(Returner)」。公開から18年を経ようとしているが、未だ想い出深い作品である。  金城武も鈴木杏も若かった。超ブチ切れイカレ役の岸谷五郎、最高だった。彼はこの映画で新境地を開いたと言えるだろう。  公開当時は「マトリックス」のパクリだとか酷評する輩もいたが、VFXを担当した" 白組 "のレベルは超高かった。正直、並みのハリウッド作品よりも完成度は遥かに上だ未だに思っている。  18年前の作品ながら、現在見返して

エッセー 「来たるべき明るい未来を描いたユートピアパペット劇 "空中都市008"」

 かつて日本にもサンダーバードを凌ぐマペット劇の傑作があった。  それは1969年4月から1970年の4月までの一年間、月曜日から金曜日の夕方(18時05分~18時20分)にNHKで放送されていた空想科学人形劇 " 空中都市008 " 。  日本SF界の巨匠・故小松左京氏の児童向けSF小説「アオゾラ市のものがたり」を原作とするこの人形劇は、突然打ち切りとなった「ひょっこりひょうたん島」の後番組として製作された。  物語は21世紀の空中都市008を中心に、海底都市や火星探

エッセー 「70年代末期を駆け抜けた松田優作の異色作 " 俺達に墓はない "」

 松田優作主演の東映映画 " 俺たちに墓はない " は、ヒット作となった遊戯3部作(最も危険な遊戯、殺人遊戯、処刑遊戯)に続いて製作されたクライム・アクションである。  予告編では、あたかも遊戯シリーズと関連がありそうな思わせぶりのコピーが踊るが、実際は全くの別作品である。  松田優作、志賀勝、岩城滉一、山谷初男といった強烈な個性の主役・準主役もさることながら、内田稔、石橋蓮司、阿藤海、山西道広といった一癖も二癖もある脇役、そして竹田かほり、山科ゆり、岡本麗、森下愛子(友

エッセー 「寺沢武一原作 近未来ノワールアクションアニメ "ゴクウ MIDNIGHT EYE GOKU"」

 寺沢武一原作の「ゴクウ」は、2014年の東京を舞台に、世界中のすべてのコンピューターにアクセス可能な「神の目」というデバイスを左目に埋め込まれた元刑事の私立探偵・風林寺悟空の活躍を描いた劇画である。  この作品は、1987年からスコラ(懐かし~)の漫画雑誌であるコミックバーズに連載され人気を博し、1989年に「ゴクウ」( MIDNIGHT EYE GOKU )がOVA第一弾として製作された。 " どこの誰だか知らんが、確かに便利な左目をくれたもんだ。だが、世界中のコンピ

エッセー 「アーマンド・アサンテの香り立つ男の色気にメロメロ " 探偵マイク・ハマー/俺が掟だ "」

 1982年公開の映画 " 探偵マイク・ハマー/俺が掟だ "は、ミッキー・スピレーンの原作を80年代向けにリメイクし、時代に合わせたハマー像を構築したハードボイルドアクション映画の傑作である。  主演のアーマンド・アサンテとバーバラ・カレラのネチっこいベッドシーンが未だ鮮烈に脳裏に焼き付いている。  「ロッキー」でおなじみのビル・コンティの音楽も最高。ピアノを上手く使ったリズムライン、アクションを盛り上げる。  この映画の見所は前半のカーアクションもさることながら、主人

エッセー 「美しき飛翔 千の顔を持つ男 "ミル・マスカラス"礼賛」

 1977年8月25日。  田園コロシアム(かつて目黒線"田園調布駅"近くに存在したテニスコートをメインとした多目的スタジアム)において、UNヘビー級王座をかけたジャンボ鶴田 VS ミル・マスカラスの世紀の一戦が行われた。  ミル・マスカラス(スペイン語で"千のマスク")。千の顔を持つ男、仮面貴族。  薄明かりが僅かに残る夏の夕暮れ、まだ蝉しぐれが聞こえる田園コロシアムにマスカラスの入場テーマ「スカイハイ」の印象的なイントロが鳴り響いた。  会場を埋めた満員の観客の興

エッセー 「う~んマンダム。"チャールズ・ブロンソン" 彼こそ偉大なる男のアイコンである」

「男らしさとは、男くささとは・・・」とナレーションは語りかける。  70年代、男が男らしかった時代。チャールズ・ブロンソンは男の象徴であり憧れだった。  ブロンソンみたいな男になりたい! 当時、日本中の男達は誰しもがそう渇望した。  名匠 故大林宣彦氏が監督したこのCMが一世を風靡した70年代初頭、全国の小学生達の間では、何かと言うと顎を手で撫でて「う~ん マンダム」と言う、通称「マンダムごっこ」が大流行した。  翻って現代日本、無味無臭、無個性、従順でひ弱な草食系男

エッセー 「近未来の超管理社会を予見したクリスチャン・ベール主演のディストピアムービ「リベリオン 反逆者(Equilibrium)」

 ガン=カタとは、コンバットシューティングとマーシャルアーツ、それに東洋武術のすべての要素を統合して創られた究極の格闘技術である。  その動きは、まるで武術の演武のように優雅で、流水が流れるが如く一瞬の停滞もない。  ガン=カタは「統計的に命中率の低い位置へ動くことで敵の射線を避け、逆にこちらの弾丸を効果的に撃ちこむ」というコンセプトから生まれ、その動き、動作は、すべて統計学的をその基盤にしている。  ガン=カタにおいては、拳銃は射撃のみならず、近接格闘における重要な武