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BeautyTech その可能性を現場から探る~Part1.「美容×AI」編~

BeautyTech(ビューティテック)を現場でやっている身として、すごく外から見るとブラックボックス過ぎてとっつきにくい領域なんじゃないかなと常日頃から思ってまして、可能性をもっとわかりやすくお伝えして、市場を盛り上げられればと思い、自分の考える可能性を書いていくシリーズになります。
まず今回は、美容とAIの課題と可能性について書いていきます。

1. 私たちの周りのBeautyTech

BeautyTechとは、Beauty(美(容))× Technology(テクノロジー)の造語であり、いわゆる最新テクノロジーを用いて美容課題を解決することで、毎日の美容体験をより良くアップデートしていくよという話です。
現在既に私たちの周りに存在するBeautyTechをいくつかご紹介します。

【ARメイク, バーチャルメイク】
カメラを向けるだけでメイクを自分の顔に載せることができ、メイクを実際にしなくても様々なコスメを試すことを可能にした技術です。
いかに動的に顔の部位座標をきちんと特定できるかと、色や質感の再現性が技術のコアになります。

・YouCamメイク(PerfectCorp)
https://jp.perfectcorp.com/

・Modiface(Modiface Inc.)※ロレアルが2018年3月に買収
http://modiface.com/

**
【AIスキンケア処方】**
AIが肌の検知を行い、状態を分析することでパーソナライズされたスキンケアを提案するものです。
例:
自分のニキビの対処法はどんなものが合うのか。
この乾燥肌にはどのような化粧水が合うのかなど。

・エファクラ スポットスキャン(ロレアル×アリババ)
https://www.wwdjapan.com/860237
https://spotscan.com/#/

【IoTパーソナライズ】
IoT(Internet of Things)を利用して、通常では不可能な日常での化粧品のパーソナライズ化を実現するものです。
機器は無料レンタルをして、毎月のカートリッジでマネタイズしていくビジネスモデルが多いです。

・Optune(資生堂)
専用アプリによる肌測定と、気候・気分・コンディションなどのデータを分析し、独自のアルゴリズムで導かれたスキンケアパターンのデータを専用マシンに送信し、マシンがその時どきの状態に適したセラム(美容液)とモイスチャライザー(乳液)を抽出・提供。
https://www.shiseido.co.jp/optune/

【人工皮膚】
人工的な皮膚を顔などの部位に貼り付けることにより、日々のメイクの時間短縮やコンプレックスとなる痕を隠すことなどに使用可能です。
花王のFine Fiber技術は今年(2019年)にも実用化されるとのことです。

ざーっと、いろいろとご説明しましたが、お分かりの通り、BeautyTechは技術自体がかなり幅広いです。
もっと幅を広げれば、頭皮や美容室のカルテ管理など、本当に多岐に渡るので一旦省きます。
これから先は、弊社が現場で進めていることでもある、メイクスキンケアに焦点を絞って可能性を掘り下げていきます。

※ちなみに、以前とったアンケートでは圧倒的スキンケアへの期待がありました。

2. 美容 × AI = ?

BeautyTechを語る上で避けて通れないのがAIなのですが、そもそも美容にAIを掛け合わせるとどんな世界が見えてくるのでしょうか。
僕は、美容にAIがもたらすのは「パーソナライズ」だと考えています。
では、美容におけるパーソナライズとはなんでしょうか。
これも正解は無いのですが、僕は美容における「ダイバーシティの実現」だと考えています。
現状どうなっているかというと、例えば、肌質は自分でわかってるようでわかってないことが多く、いわゆる自称〇〇肌であることが多かったり、ニキビならニキビでどこに出来ていて、何が原因なのかによって対処法も異なりますし、肌のターンオーバーが早いのか遅いのかでもスキンケアの仕方が全然変わります。
つまり、AIによって美容がパーソナライズされればされるほど、上記のような今まで個別にはわからなかった様々な美容課題に対して、個々にあった効果の高い対処法がわかるようになります。
**
今まで一部の美容課題に対してある程度汎用的な処方しかできなかったところ、全ての人の様々な美容課題に対して個々の処方が作れるようになる。**

これをAIが実現する美容におけるダイバーシティと呼んでいます。
「もっとこうなりたい」、「もっとこう見せたい」と思った時に、美容において「あなたこうだから、こうしたらどうかな」と教えてあげられるような世界です。
そして、僕はこれが一部のお金のある人や時間がある人だけではなくて、多種多様な肌やメイクの悩みを抱えている多くの人々が利用できるまでやり切って初めて価値になると思っています。

3. 肌検知AIはなぜ実現難易度が高いか

肌検知AIがまだ世界的にも全然出てこない主な理由は以下です。

・肌研究は化粧品会社が1番進んでいる
・その化粧品会社内のAI人材が不足
・学習に使える整った肌データが不足
・美容理論を落とし込む難易度が高い
・ブランド毎に理論が存在する
・美容に興味があるAI人材育成が進んでいない

僕が様々な化粧品会社の方とお話した上で感じたことで、推測の域を出ないのですが、特に豊富なR&D資金を捻出できる大手化粧品会社に肌研究のノウハウが集まっているのですが、事業の生命線である大事な化粧品研究の知財は絶対門外不出で、且つブランドを買ったりすることが主流だったからか、M&A思考が強く根付いているのではないかと考えています。
つまり、肌分析AIを化粧品会社がやろうとした場合

社内にAI人材が不足

肌分析AIを作れるスタートアップを買収しよう

実績のあるスタートアップがいない

投資して育てよう
何を協力できて、そもそも作れるのかどうかわからないため、この経営判断が難しい。
(スタートアップ側もやったことないので要領がわからない)

経営判断が難しいと投資部門が動けない

こうなります。
実態として、誰が音頭をとるのかが難しくAIの会社と化粧品会社が肌検知という領域において組む事自体の難易度がどのぐらい高いか察していただければと思います。

また、AIの開発にはそのベースとなる教師データ, もしく分析するためのビッグデータが必要です。
これらをAI開発企業独自で用意するのはかなり難易度が高く、多くの会社はビッグデータ, もしくはノウハウを持つ大企業から案件を受託し、そこから作成します。
そうなると、知財がビッグデータを持つ側に帰属するので、そのデータを利用して作成したアプリケーションやサービスでは、その会社の商品しか扱えなかったり、他社の案件で利用したいと思っても学習モデルを利用できなかったりします。
自社のデータを使って他社製品が売れるなんて意味わからないですからね...当然だと思います。

ただ、これが肌検知AIにおいて何をもたらすかというと、各社が各社の製品を売るためのAI開発を行い、そのAIではその会社の製品しか扱えないため、

「私の肌に合う他社ブランドってなんだろ」

と思っても、他社製品のレコメンドはされないですし、他社の分析アプリなどを利用すると学習しているものがまた変化するので、統一された基準で異なる会社のブランド間での分析比較ができないことになります。
これは弊社が挑戦している課題でもありますし、ここを乗り切れたら美容におけるAIがより多くの方に使われるものになると思います。

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弊社がどんなAIの挑戦をしているかご興味ある方はこちらをご覧ください。


4. 連続した肌データをとれる会社が美容AIを制する

http://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20180611.pdf

「今日は肌の調子が良いな」と感じたことありませんか?
それは、肌の状態が時間, 気候, 季節, どんなスキンケアをしているか, どんなコスメを使っているか, 何を食べたか, 様々な要因によって変化するからです。
だからこそ、連続した肌データが大切です。
定点の肌を見て、「乾燥肌ですね」と言うことはできると思うのですが、経過を見れるとどんな乾燥の仕方なのかや、実はこういう9月だけ乾燥肌だったりがわかってきます。

1人の人に対して連続した肌データがとれると、以下のようなAIの予測モデルが作れます。

例えば
・肌のターンオーバー周期の予測(例:ターンオーバーが2日遅れてるよ)
・ニキビなどの肌トラブルの予測(例:来週鼻の先にニキビができるよ)
・生理周期の予測(例:生理予定日は、〇月〇日だよ)
・化粧品使用想定時の効果測定(例:この成分を含む化粧水を使うとこうなるよ)

このように、美容のAIを語る上で、データの「鮮度」というパラメーターは忘れてはいけないものであり、絶えず学習するデータを取り続けられると非常に大きな価値に繋がります。

しかし、ここで問題が発生します。
ユーザーにそう簡単にカメラで撮ってもらえないですし、アプリも起動してもらえません。
人間はめんどくさがり屋で、データをとることが目的ではなく、肌に合うのか合わないのか、ニキビが改善されるのかされないか、という実利が目的であることが多いからです。

ここで必要になってくるのが、化粧品会社のノウハウでもAI会社のノウハウでもなく、インターネットサービスのノウハウです。
企画からユーザーの体験設計をしっかり行い、その後しっかり運用を行って改善を繰り返し続けアップデートを提供し続けるということが、ユーザーの継続利用に繋がります。
例えば、体験作りで言えば、肌データを撮るのに「撮影する行為(体験)」は本当に必要なのかという議論があります。
弊社の手法を暴露することになるのであまり多くのことは書けませんが、自分の顔を撮影する行為自体が自撮りになりまして、そもそもデータのために撮ること自体もモチベーションとして持ち得ていないのに、その自撮りのハードルって高くないですか?という話です。
これをどう解決するのかというのが一つのユーザー体験を考える話に繋がります。(今年のどこかでお話できると思うので、その時になったら思いっきりお話します)

5. 次回予告

本当は全部一つの記事にまとめて書きたかったのですが、途中で「あ、これ文字量と時間が大変なことになるから無理だw」ってことに気づき、分割してnoteを書いていこうと思います。

次回Part2は、「化粧品EC化率を上げるBeautyTechがマーケットを制する」というお話を書こうと思います。
時間見つけて書きますのでお待ちください(汗

※追記(2019/6/5)
書きました!5300字w


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