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【#一日一題 木曜更新】 空腹クリエイティブ

山陽新聞の「一日一題」が大好きな岡山在住の人間が、勝手に自分の「一日一題」を新聞と同様800字程度で書き、週に1度木曜日に更新します。 

 夕方6時、へとへとになってスーパーマーケットへ向かう。
 冷蔵庫の在庫を思い浮かべながら、今晩のメインとできれば明日明後日のメイン、献立をイメージしてどうにかカゴへ材料を放り込む。
 お腹がすいている時の買い物はいらないモノを買いがちでキケンだけど、献立に対する貪欲さは断然空腹時のほうが強い。今夜は冷蔵庫のアレに今日買ったコレを半分だけ組み合わせて、残りの半分は冷凍庫のアレと一緒に明日のメインに……と、売り場を歩いていると作れそうなものがどんどん浮かぶ。
 
 空腹は最上の調味料、空腹は最上のソース、空腹は最上のスパイス。空腹を枕詞にしたコトバは、「食べる」だけを指しているわけではないのかもしれない。ハングリー精神という言葉もあるし、空腹は人をクリエイティブにするんだなあ。

 なんて考えていたら唐突に若い時のことを思い出した。いつも夕食の前に女の子をベッドに誘い、射精してから食事に出掛けたがる男がいた。「お腹いっぱいだとセックスする気が半減するんだよね」と言いながら唇を寄せてきたのはそういうことだったのか。空腹だとセックスもクリエイティブになるんだろうか。
 食事の店はワインバーだったりラーメン屋だったりして、お酒はあったりなかったり。とにかくおいしそうに食事をする男で、もしかしたら女の子との情事も食事の一部だったのかもしれないなんて、今になってクリエイティブのかけらもないことを思う。
 
 おかしな男を思い出しながらぼんやりふらふら歩いていたら、空腹時買い物導線の最後のトラップ、総菜売り場にたどりついた。夕方4時以降に作りました!のポップが目立つ。わたしは油のにおいに誘惑されてれんこんの天ぷらをひとつ、買い物かごに入れてレジへ向かった。
 車の運転席で天ぷらに行儀悪くかぶりつく。このスーパーのれんこん天ぷらは、甘辛い醤油で煮たれんこんに衣をつけて揚げているたいへんおいしいクリエイティブ天ぷらである。
 
    クリエイティブグッジョブ。献立とセックスと天ぷらと、なんだか忙しい買い物だった。

 



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