脳髄とはらわたのバドラッド #5-1
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わたしの名前は、アナ。
アナ・バティスタ。
わたしのパパは、魔法使いです。わるい人をやっつけるしごとをしています。
パパはとってもつよくて、かっこよくて、一度もまけたことがない、せいぎのヒーローです。
わたしは、そんなパパのことが大好きです。
ある日、わたしは、どうしてもパパがおしごとをしている所が見たくなってしまいました。
パパにおしごとをおねがいした、メガネの人にそれを言うと、メガネの人はとくべつに、パパのおしごとを見せてくれると言ってくれました。
わたしは、まやくおう?さんの車でこっそりとパパを追いかけて『白のとう』というところにつれて行ってもらいました。
ぼうえんきょうで、パパのかつやくを、遠くから見ていました。
わるい人は、とってもこわい顔で、パパと同じ魔法使いの人でした。保安官さんたちにひどいことをしていました。
大きな音と、くさいにおい。
わたしはとってもこわくて、気持ちがわるくなっていました。
そこに、パパがやってきました。
パパは、とってもかっこよくて、つよくて、わたしの想像したとおりのヒーローでした。
わるい魔法使いの人を、もう少しでやっつけれそうでした。
わたしはそれを、がんばれ、がんばれと、おうえんしました。
けど、その時がやってきます。
わるい魔法使いに、パパはまけてしまいました。
パパの体から、血が出ています。
パパ。どうして。パパ。パパ。死なないで。死なないで。
パパはたおれて、そのまま動かなくなりました。
あんまりにもつらくって、苦しくて、かなしくて、わたしは大きな声でなきました。
ないて、ないて、なきました。
そうしたら、わたしにもパパと同じ、そして、あの男と同じの、魔法使いの力が、めざめていました。
◆
「こりゃあスゴイ」
『白の塔』で殺戮が起きてから一ヶ月ほど、あの魔法使いのチンピラは姿を見せなかった。
恐らくは、そのときの負傷をどこかに潜伏し癒しているのだろう。
その間に、アナは『完成』した。
「アナ・バティスタ。君は最高の戦士になれる。あらゆる勢力が、君の力を欲しがるだろう」
齢70は超えているだろう、顔に大きな傷がある醜悪な容姿の老人。
彼こそが都の裏社会に君臨する麻薬王。
デルト・コルネオだ。
「次のトレーニングがしたい……」
アナの表情は失われ、最低限の言葉しか口にしなくなった。
だがその目は復讐に燃え、爛々と輝いている。
周囲には、穴が開いた標的の残骸が散らばっている。
アナから標的までの距離は、一番遠いもので2キロ以上も離れたものまである。。
すべて、アナが呼び出したバレットM82A1によって打ち抜いたものだ。
驚くべき狙撃能力だ。
魔法使いには、掌に特定の物体を『どこか違う世界』から呼び出す能力がある。
そして、その中には『どこか違う世界』へ強制的に干渉できる、更なる進化をするものがいる。
あのチンピラは未来予知に近い能力を持っているようだ。
対してアナが持つのは、『絶対命中』の能力。
アナが撃った銃弾が命中するという未来以外の可能性を、全て消し去ってしまうのだ。
つまり、百発百中。
だが、アナはまだ10歳でしかも女だ。ハンドガンやアサルトライフルで同じことをしても撃つことすら難しいだろう。
故に、地面に置いて使用できる、長距離狙撃が最も有効な方法だ。
彼女が呼び出せる銃がバレットM82A1であったのは、最も相性の良い組み合わせだったと言えるだろう。
「まだ、パパの仇はどこにいるか分からないの?」
ズドン。標的を撃ち抜く。リロード。また撃ち抜く。
その鬼気迫る様子に、彼女に武器の扱いを教えているマフィアたちも恐怖を覚えた。
「早く。早く殺したい。早く、早く」
◆
「ここは───」
ゆっくりと目を開ける。腹部に鋭い痛み。
アンチ・マテリアル・ライフルで撃たれたのだ。痛みで済んでいるだけ相当に幸運だろう。
「俺の知り合いの病院」
俺が寝ているベッドの隣には、あのお節介の若いドクター。
彼が、また俺のことを助けてくれたのか。
「宗派かなんかでキメラ手術はしない主義ならスマンな。腸が破けて死ぬとこだったから、勝手に置換させてもらった」
腹に手をやる。大きな手術痕。
「……治療費を払うには、カネがない」
「いいッて、そんなの……ってオイ、何をしてるんだ?!」
俺は、点滴を引き抜き立ち上がった。
身体が弱っており、立つだけでもやっとだ。
「あと一人、殺さなきゃならない」
「お前、本当に死ぬところだったんだぞ! どうしてそこまで拘るんだ」
一度誓ったことだから。やり遂げなければならない。
俺は、引き止めるドクターの手を振り解き、病室を後にした。
終わりが近い。
【◇最終話へ続く】
【◇4-4へもどる】
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