僕らの街は、スマホゲームが禁止された。
その動きは、静かに始まった。
A県スマホゲーム禁止条例
・18歳未満 1日60分まで
・18歳未満 22:00まで
18歳未満のスマホゲームを制限する条例の制定である。
A県議会の動きは早かった。
1月に条例案の公開、2月にパブリックコメント募集、4月から施行。
これに驚いたのは、地元の中高生、youtuber、e-sport選手、起業家。
反対意見を集める署名活動、議会を揶揄する動画作成、スマホゲームの肯定的プロモーションなど短期間で準備し、実行。
世間は賛否両論。
一時、多くの人を巻き込んだ世の中ごととして、ネットを席巻。
条例案の撤回になるかと思われた。
しかし、A県議会もまた用意周到であった。
政治的手腕、地元経済界との連携など、独自のネットワークを通して、望み通りの条例制定を実現した。
まさに、風林火山陰雷。
当条例に関する勝敗は、A県議会に軍配が上がった。
A県、おわた。。
A県の若者たちは真剣にA県脱出を検討。若者定着率全国ワースト1に。
また、県内ゲームイベントについてのスポンサーが激減、文化として根付きそうであったe-sportsや、ゲームクリエイター育成の機運が消えていった。
一方で、自分たちが選んだ県議会議員がこのような条例を制定するんだ、と一気に政治が自分ごと化し、若者投票率が爆上がり、全国1に。
また、条例をきっかけに親子間の対話が増え、学力上昇、少年犯罪率の低下などポジティブな変化も生じていった。
ただ、
この街から「ゲーム」は消えていった。。
.....おもしろことが起こり始めた。
始まりはこちらも静かだった。
「ゲームって本当に悪いのかな?」
そんなちょっとした高校生のふとした疑問。
「ゲームが悪いとしたら、なんでこんなに世界中で愛されてるんだろう?」「悪いゲームといいゲームがあるの?」「てかそもそもゲームってなんだ?」「何がゲームで、何がゲームじゃないんだろう?」
1人の高校生が投げかけた疑問は、どんどん広がっていき、賛同するスマホゲームのスタートアップ、協力を願い出るゲーミフィケーションを導入する私立の学校、実証実験を共同で行いはじめる他自治体。
一つの問いは、大きな波紋を生んだ。
A県では誰もが、「ゲーム」について話をする。
近所の頑固なおじいちゃんも、学校ではうまく話せない中学生も「ゲーム」については、話が生まれる。立場も考え方も違うけど、「ゲーム」について話をするとき、相手の話を聞こうという姿勢がある、自分の話を丁寧に話そうとする真摯さがある。
はじまりは「ゲーム」を規制する条例だった。
だけど今では、「ゲーム」はみんなの中に当たり前になった。
結局、条例は撤廃されなかった。
だけど、この街に「ゲーム」は戻ってきた。
より良い形で。
おあとがよろしいようで。
問題解決型のように「未来はこうあるべきだ」と提唱するのではなく、スペキュラティブデザインは「未来はこうもありえるのではないか」という憶測を提示し、問いを創造するデザインの方法論である。このデザインの目的は、未来を予測するのではなく、「私たちに未来について考えさせる(思索=speculate)ことでより良い世界にする」ことである。上記のようにしばしば、問題解決型のデザイン思考と対比される。このスタンスは、世の中の価値や信念、態度を疑って、さまざまな代替の可能性を提示する役割を担っている。
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