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1億円集めても手取り8万円。それでもベンチャーキャピタリストとしてつくりたい未来。

「あんまり大きい声で言わない方がいいよ。」

年末年始。
地元に帰って親戚、旧友と会いました。
交わされる会話のほとんどは、子どものこと、趣味のこと、最近のニュースのこと。でも時たま、仕事の話も出たりします。

そんな時に言われたのが冒頭の言葉。
他にもここまではっきりとは言われないけど、「未上場株」「投資」などの言葉が出るたびに眉をひそめていく親族、旧友の顔は中々に堪えるものがあります。



ベンチャーキャピタリスト?

私は、「ベンチャーキャピタリスト」という少し変わった仕事をしています。この仕事は、誤解を恐れずに言いきってしまうと、投資家からお金を集めて、スタートアップに投資する、それだけの仕事です。

投資家:LP
ベンチャーキャピタル:VC
投資先:スタートアップ
ちょっと誤解を招きそうな絵ですが、こんなです。


それがどうして仕事になるの?

こちらも言い切ってしまうと、投資先のスタートアップが成長して、価値が上がるから、です。安く買って、高く売る。基本的な原理は、他のビジネスと変わりません。扱っている商品が、「会社」というのが特殊なだけです。


たとえば
・1億円の会社の10%を1000万円で買う。
・その会社が100億円の価値になる。
・持っていた10%を10億円で売る。
・1000万円→10億円になる。
・9億9000万円儲かる。

そういう感じです。

この「%」が株のお話です

だから、こちらも他のビジネスと同様、

よい商品を探す
②商品をより良くする

わかりやすさのため会社のことを
「商品」とか言ってます。
ご理解いただけましたら..。

が重要です。

そのため、ベンチャーキャピタリストは、①として、業界を研究したり、イベントを開催したり、人格者になったりしながら、よいスタートアップ企業を探します。

また、②として、投資先スタートアップ企業の起業家のメンタリングしたり、採用広報をバックアップしたり、アライアンスのサポートをしたりしながら、投資先スタートアップ企業の価値向上を頑張ります。


そうして、数年が経過し、投資したスタートアップ企業が上場やM&Aした際、リターンとしてお金が入ってくるというわけです。


投資した時はまだまだでも。


月日が流れ…
上場したりすると、いっぱいリターンがある



なんかとても儲かりそう...。

その感覚はとても正しいです。

2023年の「日本ベンチャー投資家ランキング」では、1位のインキュベイトファンド赤浦徹さんは、個人で200億円をゲットしています。凄まじいですね。


いいお仕事ですね!

あらゆるお仕事のA面はキラキラしてるものです。
これらの話はすべて、投資先のスタートアップ企業がうまくいった場合です。中にはもちろん、うまくいかない場合もあります。端的にいうと倒産したりします。投資したお金がゼロになります。

ただこれは、他のどんな商品を扱う場合でも同じです。高く売れると思ったのに、安くなった、売れなかった、全然あることです。

特殊なのは扱っている商品が「会社」であることです。そのため、仕事そのものが人間ドラマの塊になります。これがベンチャーキャピタリストのおもしろみでもあり、つらみでもある、って感じです。


あなたのところもそんな感じなの?

いえ違います(違いますっていうのもどうかと思うのですが...)。

私たちの瀬戸内VCは、運用総額1億円です。
1億円と聞くと大金だなって思うのですが、先ほどのランキング1位のインキュベイトファンドさん、運用総額1250億円です。桁がちがう、っていうのも烏滸がましいくらい桁が違います。

おそらくですが、うちが日本最小のベンチャーキャピタルなんじゃないでしょうか?

そして、できて2年です。
まだまだ、投資先スタートアップ企業は絶賛成長中です。さっきの話みたいなリターンが来るのは数年先です。


え、じゃあお金はゼロ?

安心してください。ゼロじゃないです。
VCは、ファンド運用額の2%がキャピタリストたちに支払われます。

つまり、瀬戸内VCは1億円の2%、200万円です。

私たちは、2人でファンドを運用しているので、私の分は100万円です。月額じゃないです、年額です。つまり、月8万3000円です。ここから、活動費、事務管理費、お茶代、もろもろ支払います。

そうです、赤字です。



なんでやってるの、、?

私は30歳まで東京で働いてました。
地元なんて大っ嫌いで、早く出たくて出たくてたまらかった。だから東京で働くのは刺激的でとても楽しかったです。

特に、アカツキというスタートアップ企業で働いてるときはまさに青春で、みんながつくりたい未来のために本気でした。全部本気だからこそ、つらくてくるしくてたのしくてやばかったです。

そのアカツキが上場し、自分を一度ゼロから見つめ直すために地元に戻り、いろんな人に会いました。

そこで一番感じたのは、「す、すごい人いっぱいいる...」です。
こちらでお会いさせていただいた起業家のみなさん、ほんとにすごい人だらけでした。私が比較する様なことじゃないんですが、東京で大成功している起業家の方とセンス、人格、グリップ力、どれをとっても遜色なく、まさに素晴らしい人たちです。

ではなぜ、この差が生まれてるのか?

もちろん様々な理由があるし、そもそもその差が悪いのかって議論はあると思うのですが、1つ明確に理由を言うことができます。

それは、ベンチャーキャピタリストがいないからです。


だから、つくりました。

瀬戸内VC。ロゴは水見式もイメージしてます。

まさに同じ課題感を持っていた藤田さんは、その前からスタートアップコミュニティをつくっていて、「じゃあいっしょにやろっか」と。


私たちは2人ともキャピタリスト未経験で、もちろんVCもつくったことなくて、いろんな人に話を聞いて、やってみて、失敗して、どうにかつくって、またやってみて、を繰り返しながらなんとか2年間運営してきました。


つくってどうだった?


よかったです!

と、感想聞かせられても困ると思うんで、実際に起こったことでお話しすると、

・16社のスタートアップ企業に投資完了
・「瀬戸内」というエリアでのコミュニティが生まれる

が大きいところかなっと思います。

1つ目はある意味ほかのVCとも同じなので、2つ目を中心にお話しすると、今まで「瀬戸内」ってエリアになかった独立系のVCをつくることで、このエリアでのスタートアップコミュニティが生まれてきました。今までは各県毎にキーマンのような方がいてふわっとコミュニティがあったのですが、それが「瀬戸内」というサイズで形作られてきたのを感じます。

象徴の1つとして、BLAST SETOUCHIというイベントが開催されてます。昨年度「愛媛」、今年「岡山」、来年「大分」(大分も瀬戸内!)で開催されるこのイベント。スタートアップを中心に、今まで関わっていなかった人たちがコミュニティに参画してきました。


順風満帆ですね!

そんな中でよくいただく質問がこの辺りです。

「スタートアップは東京にいけばよくない?」

じゃーなんでアメリカに行ってないの?

おっと。いや、一定その通りだと思っています。ただ、人にはいろんな事情があって、どうしても地元を離れることができない方やここで頑張りたい理由がある人もいます。そういう個別具体的な事情を全部すっとばして、一番経済合理性のある場所に行け、はさすがにちょっと乱暴かなっと。


「東京のスタートアップに投資しないの筋悪くない?」

ぐぬぬ...。

私たちは瀬戸内VCです。つまり、瀬戸内エリアに特化したVCなんです。だから、筋悪いと言われてもここやるんですよ。ただし、「瀬戸内」ってエリアは最広義です。大分や和歌山も入りますし、出身者もokです。


「お金あるなら奢ってよ」

話聞いてました?

え、と、月8万3000円なんですが、、。
「1億円」ってワードが強いのか、まるで私たち二人がお金持ちで、その道楽で、キャピタリストをやっているように捉えられたりします。勘弁してください。完全に地方の虎の皆様の方がお金持ちです。



夢、叶えた感じですか?


そうですね!

...なんてとても言えないです。
まだまだやりたいことの3%もできてないですね。1億円しかないので、投資を断らざるを得ないことも多いですし、投資先スタートアップ企業にまだまだできることたくさんあるはずです。



つくりたい未来

ベンチャーキャピタリストとして、投資したスタートアップ企業が成功してくれたら嬉しいです。でも、失敗をしてもそれはそれでいいと思っています。前のめりに、全力で、やれること全てやった上での失敗はとても尊い。

最終的に私たちVCと、投資先スタートアップ企業の利害が対立する部分があることは理解しています。あくまで安く買って、高く売るが基本なので。だけど、それだけじゃなくていいんじゃないでしょうか?

経済合理性だけでは説明できない部分、もっと私たちVCもチャレンジしてもいいんじゃないでしょうか?

だから、私たちは1億円集める時、こんなやりとりをよくしました。

LP「で、投資のリターンはどうなるの?」
VC「増えるか、、、、減るか、です!」

文字にすると、ほんとひどいな...。

VCとしてはダメダメなんですが、「それでもいいよ」って笑いながら出してくれた人だけが今LPになってくださってます。だからこそ、私たちもベンチャーキャピタリストとして現在の経済合理性で説明ができないチャレンジングな投資ができています。


「若手のリーダーとして、今後「瀬戸内」をどうしていきたいですか?」

そんなふうに聞かれることがあります。でもそんな大それたものはありません。(てか、そもそも若手のリーダーじゃないですし)

だけど、10年後、全力でチャレンジし続けてるみんなと集まって、酒を飲む。その酒が美味しいかどうかは、私たちが同じくらい全力でチャレンジし続けられてるかどうかです。だったら、美味い酒飲むために、リスク背負って、日々チャレンジしたいなって思います。




そんな未来、叶ったら最高だ。



「あんまり大きい声で言わない方がいいよ。」

「いやいや、瀬戸内にはすごい人が沢山いてさ!そもそもベンチャーキャピタリストって仕事は〜云々〜、僕たち瀬戸内VCは〜云々〜、、、だから、10年後美味い酒飲むために頑張ってるんだよ!!!!!!」

地元の親戚や旧友に、きょとんとされても、言い続けていきます。



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