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子どもの科学への興味を深める、大人の働きかけとは!?『科学の力で無人島脱出ゲーム』リアルイベントの実現!!

今年3月に発売をした新商品『科学の力で無人島脱出ゲーム』
漂着した無人島で遭遇する様々なミッション=サバイバル課題を「科学の知識」と「島で調達する部材」を使って解決しながらプレーヤー全員で島からの脱出を目指す協力型のボードゲーム。
このゲームを通じて、様々な科学の知識とその活用方法を学ぶことができる。

商品のご紹介はこちら

「レインコートを作るには?」
「油を作るには?」

ゲーム中に登場するミッションを解決するたびに、子どもたちから漏れる声。
「やってみたい!!」

親としてもやらせてあげたいものの、知識もないし、どう環境やって環境を整えるかわからない……
そんなとき、なんと、実際にやってみるイベントがあった。

本商品の科学監修者、羽村太雅さんが館長をつとめる手作り科学館Exedra(エクセドラ)において開催された「Exedra研究部 夏季コース 理科の修学旅行」。今年の修学旅行は、なんと「科学の力で無人島脱出」を実際にやってしまおうというもの!!

※手作り科学館 Exedra(エクセドラ)については、記事の最後のリンクからご覧ください。

ゲームを体験し、子どもたちの興味のわいたミッションに、科学実験・自然体験を通じて取り組んでいこうという、科学好きな子どもたちにはワクワクが止まらないイベントだ。

千葉県柏市にある手作り科学館 Exedra(エクセドラ)で行われたゲーム体験会に潜入してみると、子どもの興味を深める秘密が見つかった!

エクセドラ外観

1日目:7月某日 ゲーム体験会@手作り科学館Exedra(エクセドラ)

この日は、ゲームの体験会。
エクセドラのスタッフを含め、3~4人ずつのグループに分かれて『科学の力で無人島脱出ゲーム』を体験した。
参加したのは、科学への興味・関心が高い子どもたち。中にはエクセドラの研究部に毎月通って、実験や研究に取り組んでいる子どもも。

体験会の様子

冒頭、ゲームの紹介・ルール説明から。
“科学”、“無人島”、“脱出”、“サバイバル”というキーワードに歓声があがり、ゲーム開始に向けたモチベーションが目に見えて上がっていく。

そして、いよいよゲーム開始。ミッションに出会うたびに皆で額を寄せあい、解決方法をひとりひとりがプレゼンしていく。

子どもたちが検討しあう様子

ミッション解決に使用できるアイテムは、最初に配られる「磁石」、「マッチ」などの人工物に加え、山やジャングルのマスで集められる「水」「木」「石」などがある。

アイテムカード
ミッションカード。右側のアイテムを組み合わせて、解決策を考える。

「火を消すには?」のミッションに遭遇。
子ども「燃焼の3原則、燃えるものか、酸素、点火源(※1)のどれかを失えばよいはず」
子ども「水をかければいいね」
子ども「でも布袋もあるから、水をかけた布袋をかぶせてもよいよね」(※2)
(※1)可燃物と酸素を活性化させるエネルギーを与えるもの。小学生では発火点以上の温度と教わることもある。
(※2)アイテムの使用個数が多いほど、ポイントがゲットできる。

ミッションのポイントは火の性質、水の特性、力のはたらき、天体の運動など多岐にわたる。

星座盤を使った星座探しミッションも

カードの表にはミッション、裏には複数の解決方法が示され、答え合わせができる。

ミッションカード30 表
ミッションカード30 裏 解決方法によってもらえるポイントも異なる。

「レインコートを作るには?」のミッション。
子ども「油は水をはじくから、紙に油を塗って、着るとか?」
子ども「でも油を持ってないよね」
子ども「”アルミはく”と”つる”はあるね。“アルミはく”は水を通さないから腰を“つる”でまけば、着られるようになるんじゃない?」
子ども「うん、それがいいね。」

あふれるアイディアと、論理的に説明をする姿……
取材中、私は感動と驚きで目を白黒させていた。

しかし、なぜこれほどにアウトプットの量が多くなるのか?
子どもたちにアウトプットを促す、秘訣、関わる大人としてのアドバイスを羽村さんに聞いてみた。

イベント中の羽村さん

羽村さん「発言を促すには、問いを立てるのが有効です。その点、『科学の力で無人島脱出ゲーム』はミッションカードに問いが示されているので、子どもたちが思考をめぐらし始めるスタートラインに立ちやすいという特徴があります。
また、アウトプットするためには、考えるのに必要な知識を自分の脳内から抽出してくる必要がありますが、子どもたちは、自分がいま考えようとしている問いと、過去に見聞きした情報がリンクしていないことも多いです。見れども視えず、聞けども聞こえずという認知バイアスが存在するんですね。
そこで、子どもたちが見聞きしたことがありそうな現象を示して問いと関連づけてあげると、思考が動き出してアウトプットにつながっていきます」

この日の最後は、ゲームで出てきたミッションの中で実際に試してみたいことを共有し合った。

子ども「木の上のえものを捕まえるための飛び道具を作りたい!」
子ども「海水から塩を取り出してみたい!」
子ども「炭作りをしてみたい!」
羽村さん「じゃあ合宿のときの夕食は、みんなで作った炭でバーベキューしようか!」
子ども「やった~!」

次週の体験と、その後に予定されている宿泊合宿で実際にミッションに取り組む科学実験や自然体験を行う。子どもたちは今日の楽しみと次回以降へのワクワクを胸に家に帰っていった。

2日目:7月某日 科学実験@手作り科学館 Exedra(エクセドラ)

ゲーム体験1週間後の7月某日。再びエクセドラに潜入。
今回は、ゲームで遭遇するミッションの中から実際に試してみたいと選ばれたものを実験室で試したり、原理を学んだりする日だ。

準備された実験器具

今日もエクセドラに訪れた子どもたち、テーブルには、実験器具がすでに準備されている。
ビーカー、アルコールランプ、木くず。……ん?さきイカ?ピーナッツ?
やってきた子どもたちはすでに興味津々だ。

今日の実験メニューを副館長・宮本さんが紹介する。
まずは、こちら「肉をくさりにくくするには?」ミッションカードを提示し、子どもたちに問いかける。

宮本さん「前回のゲームで生肉を腐りにくくするには、どういう方法があったっけ?みんな覚えてる?」

一斉に手が上がる


子ども「塩をかける!」「燻製にする!」「塩を擦り込む?」
宮本さん「みんな簡単なことを忘れてない?」
子ども「あっ、氷とかにつけて冷やす」
宮本さん「そうだね。みんなお肉とか買ってきたときに冷蔵庫にいれるよね」
宮本さん「中の水分を出す。さらに燻製にして、長持ちさせるというのもあったね」
宮本さん「腐らせたくないから、こんなことをする。でもそもそも腐るってどういうことなんだろう?」
子ども「う~ん」

提示されたミッションカード
ミッションカード23 裏


宮本さん「微生物っていう小さい生き物も、えさを食べて生きている。みんなもご飯を食べたらうんちをしたりおしっこしたりするよね。微生物も同じ。腐っているものってくさいよね。あのくさいのは微生物が食べて出すガスなの」
宮本さん「微生物が食べ物をえさにして増える状態を腐っている、というんだよ」
子ども「ふーーん」
宮本さん「腐らなくするためには、微生物が活動できないようにすればよい。みんなもさ、寒くなると動きたくなくなるでしょ?」
子ども「いやー、逆に外に出て遊びたくなる(笑)」
宮本さん「あと10年したら動きたくなくなるよ(笑)微生物も同じで暑すぎたり寒すぎたりすると動けなくなったり死んだりする。
あと水分もなくなると動けなくなる。他にも、燻製して煙の成分や熱で殺菌といって微生物を殺してしまっても腐りにくくなる。そうすると長持ちさせることができます」
子ども「おーーー」
宮本さん「じゃあ、今日は燻製を実際にやってみよう!」
子ども「いぇーい」

大人でも知らないようなワクワクする話を、子どもの身近な例に結び付けて話していく宮本さん。
子どもたちは机から身を乗り出して聞き入っていた。

実験方法を説明する宮本さん

宮本さんの説明にあわせて、準備された実験器具で燻製器を組み立てていく子どもたち。この日は、さきイカとピーナッツを燻製にする。
そして興奮の火入れ作業。

後は、皆でじっくりと変化の様子を見つめる。

子ども「あ、ビーカーの内側に水滴がついてきた!」
子ども「さきイカの色が変わってきた!」

子どもたちは、細かい変化を見逃さず、お互いに気づいた点を共有しながら、実験を進めていく。

子どもたちはじっと観察

同じ実験をしているのに、グループによって実験の進み具合や結果が違うのも子どもたちの好奇心を伸ばす材料になる。
お互いの結果を観察しあって比べたり、ときにはうまくいかない理由をみんなで話し合ったりしていた。注目すべきポイントを見逃しそうになったときや、子どもたちだけで考察に行き詰ったときには、スタッフがうまく声かけをしながら子どもたちの考えを引き出していく。

仕上がった燻製は、火にかける前のものと見比べる。
色、におい、温度、あらゆる角度から観察が進んだ。

次なる実験はこちら。
「油を作るには?」というミッションだ。

ミッションカード13 表

今回は、牛脂に熱を加え、液状にする。
そしてその後の活用方法を皆で考える。

羽村さんの問いかけで議論が始まる。
羽村さん「油ってなにに使う?」
子ども「燃やすんじゃないの?料理で使う」
羽村さん「ほかには?」
子ども「ほかに~?」
一瞬思考が止まった様子の子どもたち。

羽村さん「油の性質ってなんだっけ」
子ども「滑る、水に浮く…そうだ!地面に撒いて獲物を滑らせて捕まえればいいんだ!」
羽村さん「(笑)ほかには?」

そこには、意見を否定しない雰囲気があり、子どもたちはどんどん意見を出していく。

そして、「水をはじく」というキーワードから次の実験へつながっていく。

ここで追加ミッション。
「レインコートを作るには?」

前週でも話題になったカードを実際に実験していく。

油を使って防水の雨具をつくろうということで、液状にした油を布に塗る。
水は弾くが布にしみ込んでしまう。

羽村さん「これで着れる?体が油まみれになるよね。」
羽村さん「どうしたら実際に着れるものが作れるだろう?」
羽村さん「そもそも体を覆うには、どれだけの大きさを作らなければいけないの?」

原理は説明できる子どもたちだったが、羽村さんからは実際におこなった際に想定される問題点が投げかけられる。
うすく塗ってみたり、油を冷やして固めてから塗ってみたり、と色々試したが、実用化にはほど遠い……知識として知っていても、実際に活用するには試行錯誤が必要だということに、子どもたちも気づき始める。

布に油を塗る

次に「油は燃える」というキーワードから、麻ひもに溶かした油をしみこませ、油にひたして、明かりをともす。
火はついても細いし、すぐに消えてしまう。

麻ひもに火をつける

羽村さん「どうやったら長い時間つけられるかな?」
羽村さん「明るさは十分?」

同じく、問題点を投げかけていく。

焼く、以外の油の抽出方法も紹介。
ミッションカードで紹介されていた、「鍋で肉を煮込んで上澄みを集め、布でこす」という方法。

大鍋登場

実際に肉を煮込んだ大鍋が登場するも、のぞきこんで見ると抽出された油分は少なく、灰汁も浮いていて、きれいな油を集めるのは大変そう。

最後は、身の回りで使われている油の工業的な製法を紹介し、この日は終了。

今回の実験のねらいはどんなところであったか聞いてみた。

羽村さん「知っているつもりになって知的探求を終わりにするのではなく、手を動かしてやってみることは、とても重要です。想像していたのと異なる結果になることはとても多く、それは試行錯誤しながら探求を繰り返せるチャンスです。
逆に予想通りの結果になったとしても、それで終わりにするのはもったいない。子どもたちはアイディア豊富な研究者ですので、手を動かして目の前で何らかの現象が起これば、インスピレーションを得て別の実験を試してみたくなることでしょう。そんなときは興味のおもむくままに、さらなる体験をおこない、発見や学習を繰り返していくのが良いでしょう。」

この1週間後、修学旅行の参加者たちは、無人島……ではなく、人の少ない山奥に宿泊合宿を行った。ボードゲームに登場する「山」や「川」、「森」を舞台に、まさにリアルなフィールドで、ミッション=サバイバル課題に挑戦した。
今回はここまでだが、子どもの科学への興味を育むために参考になることが数多く見られた潜入となった。
夏休み含め、今後、子どもの活動にどう声かけをし、働きかけをするか、どういった機会を提供していくか、ぜひ今回のレポートを参考にしていただきたい。(マーケティング部マーケティングチーム 小川)

参考:手作り科学館Exedra(エクセドラ)についてはこちら http://selexedra.stars.ne.jp/


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