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運命を紡ぐ三つの星:ヴィタリス、エルデリア、ユウキヨの物語

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月岡蒼汰、灘波風花、寺井星良、三人の全く異なる生活を送る日本人が、突如として異世界に召喚された。 蒼汰は歴史学の大学院生で、広範で深い知識を持つ。彼が召喚された国、ヴィタリスは…
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運命を紡ぐ三つの星:ヴィタリス、エルデリア、ユウキヨの物語 第27章

美晴と星良は炎煌城に向かう道中で突然、野党に襲撃された。荒野の中、どこからともなく現れた野党たちは、獰猛な表情を浮かべて二人に襲いかかった。
美晴はその活発さと俊敏さを生かし、次々と迫り来る野党を避けながら、星良に攻撃の隙を作り出した。一方の星良は、その冷静さと練度の高さを活かして、美晴が作り出す隙を確実に突いていった。

美晴が敵を巧みに撹乱し、星良が冷酷に刀を振るう。その戦いは二人の連携によっ

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運命を紡ぐ三つの星:ヴィタリス、エルデリア、ユウキヨの物語 第26章

輝く光の中から、若き陶芸家、寺井星良が姿を現した。目を覚ますと、見知らぬ景色が広がっていた。彼女の心の中には確信が湧いてきた。自分がユウキヨと呼ばれる異世界に召喚された。そして、彼女の目の前に広がる壮大な建物は、明らかに通常の世界とは異なる場所だった。水晶で彩られ、輝く光を放つその建物は水晶城と呼ばれる場所だと、星良は直感した。
「ここはどこだろう?」彼女はそっとつぶやいた。その声は空気を震わせ、

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運命を紡ぐ三つの星:ヴィタリス、エルデリア、ユウキヨの物語 第24章

「風花!」
風花は激しい衝撃と共にその場に倒れ込んだ。炎の矢が彼女の体を貫き、熱を帯びた風が舞い上がる。それは一見すると致命傷に見えた。しかし、彼女はまだ息をしている。それは小さな希望の光だった。
「風花!」アリアーナは驚きのあまり声を失った。彼女の瞳からは驚愕と絶望が混ざり合った感情が溢れていた。その一方で、テオは声を上げてサルヴァトールに向かった。その目には強い憤りと決意が燃えていた。
レナは

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運命を紡ぐ三つの星:ヴィタリス、エルデリア、ユウキヨの物語 第23章

馬車の車輪が轟音を立てて石畳を転がり、エルデリアの広大な風景が目の前に広がっていた。五人はほとんど黙り込み、窓から見える風景をただただ見つめていた。リアヌイ港を離れて、彼らが向かっているのはフェーズゲートのある都市、イリューシャだ。
馬車が進むにつれて風景は変わり、彼らの目の前に広がるエルデリアの風景は異彩を放っていた。まず目についたのは広大な農地。緑の絨毯のように広がる畑には、農夫たちが汗を流し

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運命を紡ぐ三つの星:ヴィタリス、エルデリア、ユウキヨの物語 第20章

蒼汰と風花は海底神殿の中を探索し始める。蒼色と金色の壮大な神殿は、壁や柱、床全てが声で振動し、その声が二人の耳に響く。声の主は海底神殿に封じられた古代の存在だった。
神殿は古代の神々や精霊、人々の生活が彫り込まれた壮大な柱で美しい。その絵と文字は今でも鮮やかさを保っている。
蒼汰は静かに神殿を見回し、風花は周りに何か異変がないか確認している。
再び、声が響く。「求める者よ、それが何であれ、真実を示

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運命を紡ぐ三つの星:ヴィタリス、エルデリア、ユウキヨの物語 第19章

風花は恐怖におののき、身をすくめた。「お兄ちゃん、あれは……」
蒼汰は眉をひそめながら、その姿を詳しく観察した。「まさか、こんなところで海獣が現れるなんて……」
海獣はその巨体をゆっくりと動かし、蒼汰と風花のいるセレスティアル号に向かって進んできた。その姿はまるで、獲物を見つけた猛獣のようだった。

風花はその姿を見て、恐怖で震えながらも、蒼汰のそばに立っていた。「お兄ちゃん、どうするの?」
蒼汰

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運命を紡ぐ三つの星:ヴィタリス、エルデリア、ユウキヨの物語 第18章

風花、アリアーナ、そしてテオ、レナ、蒼汰の5人は早朝、ミドラータへ向かうために出発した。まだ朝露が地面を濡らす静かな朝、5人は馬車に乗り込んだ。蒼汰とアリアーナが先頭、その後ろに風花、そして最後にテオとレナが並んだ。
馬車はしっかりとした木製の車体を持ち、中には程よく柔らかい座席が配されていた。それぞれの席には、旅の間に必要となる食料や道具が積み込まれていた。一行は馬車を引く2頭の馬に気を使いつつ

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運命を紡ぐ三つの星:ヴィタリス、エルデリア、ユウキヨの物語 第16章

明け方、シルバーグローブの静けさは何か特別なことが始まろうとする予感で一杯だった。それはアリアーナの儀式の始まりだった。

エルデンはアリアーナにとって最も安全で、力を最大限に引き出せる場所として、村の中心にある神聖な祭壇を選んだ。祭壇は古代エルフによって建てられ、世代を超えて受け継がれてきた。その祭壇の上で、アリアーナは黒い宝石の前に立っていた。
エルデンはアリアーナの横に立ち、神聖魔法の呪文を

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運命を紡ぐ三つの星:ヴィタリス、エルデリア、ユウキヨの物語 第21章

冷たくて透明な水の中を通り抜け、目の前の景色が海底に変わった。鮮やかな珊瑚、色とりどりの魚たち、そして上半身が人間で下半身が魚の姿をしたマーメイド族の人々が、新たな来訪者たちを好奇心洋々な眼差しで見つめていた。
「私たち、人間界から来ました。」蒼汰が自己紹介を始める。その言葉に、マーメイドたちがちょっとした騒ぎを起こす。人間界からの訪問者は滅多にないからだ。
彼らの前に一人の少女が現れた。彼女の名

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運命を紡ぐ三つの星:ヴィタリス、エルデリア、ユウキヨの物語 第17章

テラクロスの街への道は、無数の緑豊かな木々が道を縁取る美しい風景が広がっていた。蒼汰とアリアーナは、この木々の間を進み、遠くに見える街の景色に息を呑んだ。
「まるで違う世界だな……」蒼汰は驚嘆の声を上げた。大陸の北東部に広がるこのテラクロスの街は、彼がこれまでに見てきたどの場所とも異なる風景を提供していた。街はフェイズゲートと呼ばれる巨大な構造物を中心に広がっており、その周囲にはさまざまな建物が点

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運命を紡ぐ三つの星:ヴィタリス、エルデリア、ユウキヨの物語 第14章

森の中、蒼汰とアリアーナはテラクロスへ向かっていた。あたりは静かで、風が木々を揺らす音と、鳥たちのさえずりが聞こえるだけだった。2人はこれからの計画を練り、日々の生活で集めた情報を整理していた。突然だった。前方から、悲鳴が響いた。蒼汰はアリアーナに警戒するように言った。「アリアーナ、あっちだ。慎重に進もう。」

2人はその音の方向へと進み、やがて目に入ったのは、1匹の巨大なオオカミ型の魔物、フェン

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運命を紡ぐ三つの星:ヴィタリス、エルデリア、ユウキヨの物語 第12章

重々しい空気が彼らを包み込むにつれて、四人はダンジョンの深部に到達したことを確信した。トーチの明かりは不規則に揺らぎ、周囲の影が幽玄な光景を作り上げた。足下に感じる床の硬さ、壁から立ち込める冷たい湿気、遠くで聞こえる滴り落ちる水滴の音…これら全てが、ダンジョンの恐ろしさを高めていた。
「さて、これが最後の部屋のようだな。」蒼汰が静かに述べた。
「やっと最後ね。でも、ここにきて何かが待っていそうで怖

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運命を紡ぐ三つの星:ヴィタリス、エルデリア、ユウキヨの物語 第11章

レムニアの町はずれには、石と木で作られた古い家が点在していた。その中でも一際目を引いたのが、蒼汰とアリアーナが選んだ家だった。これは、古びたブルーグレイの石壁と、緑に覆われた屋根が特徴的な愛らしい小さな家だった。家の中に入れば、囲炉裏がある広いリビングと、必要最低限の家具が配された二つの寝室があった。この家がふたりにとって最初の家となることを、彼らは心から喜んでいた。
しかし、その家を借りるために

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運命を紡ぐ三つの星:ヴィタリス、エルデリア、ユウキヨの物語 第10章

朝、最初に目覚めたのは蒼汰だった。彼の目を覚まさせたのは、柔らかな光と微かに香る木の匂い、そして自分の手に感じるぬくもりだった。彼が目を開けると、その手の主、アリアーナが彼の隣で深い眠りについていた。
彼女は無邪気に眠る子供のように、安らかに息をしていた。その姿を見て、蒼汰はほっとした一方で、新たな責任感を感じていた。彼女の安全と幸せは、これからは彼が守るものだということを改めて感じさせられたから

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