マガジンのカバー画像

消雲堂綺談

275
私は怪談奇談が好きで、身近な怪異を稚拙な文章にまとめております。
運営しているクリエイター

#朱の盆

妖異戊辰戦争「江戸城」

妖異戊辰戦争「江戸城」

薩長土肥(実は西洋の妖怪率いる悪霊たち)に率いられた倒幕軍が江戸城に向っています。

江戸城内には倒幕悪霊軍を迎え撃つために亀姫、朱の盆率いる「妖怪たち」が待ち構えています。

亀姫の援軍には本栖湖の纐纈城主もいます。

まずは先鋒の朱の盆が駿府に飛び、悪霊倒幕軍の首領・西郷隆盛(実は吸血鬼ドラキュラの末裔が化けている)を暗殺できるか偵察に向います。

朱の盆は箱根を越えようと飛翔していると、箱根

もっとみる
霊視者の夢「憑依」3

霊視者の夢「憑依」3

「初めてお目にかかります。私は新選組の土方歳三にございます」

土方と名乗る男の写真は、ネットで見たことがある。確か「幕末の美男たち」というサイトだったと思うが、写真はかっこ良く見えたけれど、今、目の前に立っている実物は背が低く、教師ドラマで一躍名を馳せたフォーク歌手のような顔をしている。

ー現実はこんなものだ。

東子の心の中の呟きを亀姫が読みとって笑った。

「土方殿は美男の誉れが高いのか?

もっとみる
霊視者の夢「憑依」2

霊視者の夢「憑依」2

2.

あれから8年が経った。その間、東子は、いたるところで幽霊らしき姿を目撃した。そしてそれは他人には見えないのだと言うことも知った。自分にははっきりと幽霊らしき姿が見える能力があることを確信していた。

あのとき猪苗代城跡で亀姫と名乗った女性が「お前には霊が見えるようじゃの」と言ったことは本当だったのだ。東子に霊が見えても特に害はない。ホラー映画のように死因によっては大変な姿で現れるようなイメ

もっとみる
土方と亀姫 捌

土方と亀姫 捌

「あやつが長崎の海軍伝習所に入門した際(安政2年)に悪魔に魂を売ったと姉から聞いた」
「まことでございますか」
「まことじゃ。あやつは安政以降に起きた事変の大半に関わっておる。桜田門の外で彦根の井伊が水戸や薩摩の者に斬られた(安政7年)のもあやつが裏で糸を引いていたのじゃ。そのときあやつは知らぬ顔をして咸臨丸でメリケンに渡っておる。他にもいろいろあやつによって起きた事変は数えきれぬほどじゃ」
「海

もっとみる
土方と亀姫 柒

土方と亀姫 柒

朱の盆もまた亀姫と同じく、猪苗代氏から藩祖の保科正之を経て、今の藩主である松平容保まで代々仕えてきた妖怪なのだった。

保科正之とは二代将軍徳川秀忠の庶子(御落胤)である。正之の母・静は、秀忠の乳母に仕えたが、その際に秀忠に見そめられて関係を結び、慶長16年(1611)に正之を産んだ。将軍職を継げる庶子ゆえに命を狙われる可能性が高いため、秘匿されて江戸城北の丸に邸を与えられていた武田信玄の娘・見性

もっとみる
土方と亀姫 陸

土方と亀姫 陸

*プロットもなしに感覚だけでテキトーに書いているので辻褄が合わないこともあると思われます。真面目に読むのはおやめ下さい(笑)。

「朱の盆…」

「んだっぺ」

「変な名前の化け物だな」斉藤が笑った。

すると、朱の盆が斉藤を睨んだように見えた。朱の盆の目は大山椒魚の目のように小さいからわからない。ただ彼の紅い身体は怒りに満ちて、さらに朱の色を増した。

「食ってやる」朱の盆は畳を這うように亀姫の

もっとみる
土方と亀姫 参

土方と亀姫 参

「ふふふ、情けないのう。そなたらは京での戦いに負け、江戸に逃げ帰ったと思うや、甲州でも負けた。近藤を見殺しにし、その後も負け続け、この会津でも負け戦か。ほんに情けないのう」
土方は落ち着いていた。もしかすると猪苗代城の高橋権大夫の姫君かもしれないからだ。高橋は会津藩士で猪苗代城代をつとめていた。
「これは手厳しい。確かに負け戦続きで誠に情けのうござる。して、失礼とは思いまするが、高橋権大夫様の娘御

もっとみる