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消雲堂綺談

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私は怪談奇談が好きで、身近な怪異を稚拙な文章にまとめております。
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2022年6月の記事一覧

東京万景「葛飾区柴又」壱

東京万景「葛飾区柴又」壱

かみさんの奢りでうなぎを食べに柴又まで出かけた。はじめは四つ木とか浅草橋のうなぎ屋の新規開拓をするか、出版社時代にお世話になった神田のきくかわに行くか迷った挙げ句、比較的交通費のかからない自宅近くの柴又帝釈天参道にある馴染みの(といっても先方は僕のことなど知らない。もう何度も行っているけれど、内向的な僕は女将さんとも女中さんとも親しく話したこともない。じゃあ馴染みじゃないじゃんw)川千家(かわちや

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百物語5「辻斬り」

百物語5「辻斬り」

生涯に81人を斬ったという侍がいた。神田佐久間町にあった佐竹藩の中屋敷に暮らしていた佐竹藩士の岡部菊外という男だ。

人を斬るのが飯より好きな彼は、新刀を買う度に「七人を斬ってみなければ刀の本当の切れ味がわからない」と言っていた。彼の刀には血糊が付き、これが刀の柄に染み付くと、柄が腐ってしまうので、刀の柄巻師へ次々に刀を持ち込む。

しかし、辻斬りというのは通り魔か無差別殺人鬼のことだ。侍だから殿

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百物語4「上の音」

百物語4「上の音」

僕は3階建ての古いアパートの3階に住んでいる。古いといっても、昭和40年代に西洋風建築を取り入れた鉄筋コンクリートづくりで、造りはしっかりしている。そうはいっても、やっぱり古い。

少し前からおかしなことが起きている。昼夜構わず天井の上で子どもが走っているような音がするのだ。僕の部屋は最上階の3階だから天井の上ということは屋根の上を走っているということになる。ベランダに出て屋根の上を観察してみるが

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