「B/Sが...」「P/Lは?」なんて日常会話はまだまだ遠いけれど。 会計も決算書もきっと面白いよ、という話。

社内の経営戦略勉強会「Tribal Professional Academy」、通称「TPA」。今回のお題は「財務理論」です。 

課題図書は3冊。

スピードテキストを齧りながら、平行して『さおだけ屋はなぜ〜』→『MBAより簡単で〜』を読み流すスタイルで進めたのですが、総じて感じたのは2点。

ひとつは著者さんの「財務とか会計とか、難しくないから嫌いにならないで!」という悲痛にも思える優しさ。大丈夫ですよ、むしろ好きになれそうです。

もうひとつは、欠けたピースから想像を働かせていく面白さ。 

例えばさおだけ屋はアップセル策があるに違いない!と睨んだ結果、その解の一つとして導き出されたのが、紹介業。購入してくださったお宅に物干し竿を搬入してあげた”ついでに”「台座が痛んでますね〜、安くていい業社紹介しますよ」なんて言ってキックバックもらうという。

そんな「どうやって儲けてるの」「どのくらい儲けられそうなの」な視線を保ちつつ、『MBAより簡単で〜』を読むと、実際の決算書がベースなだけによりリアリティの高い想像力ゲームが追体験でき、臨場感のある経営のリアルがジリジリと、時にヒリヒリと感じられます。

そう、「何をしているか」「結果はどうなのか」の数字のアップダウンだけではなく「なぜそうしたか」「どんな戦略を取ろうとしているのか」「何を目論んでるか」までに思いを至らせられる、それが決算書らしい。

決算書(財務諸表)には決められた型があるけれど(そしてその型がとっつきにくいのだけど)、それだけにストレートに「なぜ」に答えてくれない。

本書にもあったけれど、発表される情報には常に抜けたピースがある。だからこそ、「なぜ」な本質を見抜くには、業界業種ごとの重要指標(例えばリテールだったら「テイクレート」、広告だったら「ARPU」など)をベースに過去現在を分析し、さらには国を超え、似たような構造の業種をベンチマークしながら、「なぜ」を追い求める。すると、経営者の手腕だけでなく姿勢や目論見を読み解く想像の楽しみが溢れ落ちてくる。

そう考えると、決算書って色気のある存在、なのかも。

財務諸表の意味するところ

さて。経営戦略を学ぶという立ち位置で今回の財務「理論」の入り口に立つと、これらの“画一的”かつ「なんで“T”なんだー!」な会計資料たちには、当然、役割と理由があってそんな形になっている模様、ということが理解できます。

スピードテキスト以上に、超初心者のお勉強に素晴らしい先生たちがこちら。

TPAのチューター、我らが亀ちゃんのnoteもさすが!

これら財務3表とか会計の基本を学び始めたところで、『MBAより簡単で〜』を読み込んでいた時、この「バランスシート」のリアルを感じ、思わず膝を打ったシーンがありました。

見出しは「ヤフーのカードビジネスが抱える「時限爆弾」と、その回避方法」。ヤフーの事例を通じてクレジットカード事業による多角化の光と影について説明する中で、ヤフーのバランスシートから、カード事業が急伸した際に起こるであろう未来を予見しています。

ちょっと長いけれど、以下、引用。

インターネット企業であるヤフーは、金融業に比べると非常にコンパクトなバランスシートを保ってきたわけですが、クレジットカード事業が急拡大するにつれて、先ほどの「営業債権及びその他の債権」の額が大きくなり、貸付けるための現金が足りなくなる事態も想定されるのです。これが「時限爆弾」の正体です。とはいえ、この「時限爆弾」を回避する方法はもちろんあります。オプションは2つです。会計の専門的な話になりますが、バランスシートというのは、左側の項目(=資産)と右側(=負債・資本)がバランスする(≒同額になる)必要があります。クレジットカード事業が大きくなると、貸付金(債権)が増えて左側(資産)が大きくなるわけですから、同じだけ右側(負債・資本)を大きくする必要があります。それをどう実現するのか、という話です。一つ目は最も単純な方法で、ヤフーが自力で負債・資本を増やすことです。資本を増やす方法としては、一般的に株式での調達、債券での調達、借入があります。

(中略)

そこで二つ目の方法は、カードビジネスと真逆のビジネスモデルの会社を買収して、連結する方法です。「カードビジネスと真逆のビジネスモデルの会社」というのは、お金を「貸す」ビジネスではなく、お金を「預かる」ビジネスのことです。つまり、端的に言うと「銀行」を買収して連結してしまう、ということです。このパターンを説明するには、楽天の例を取り上げるのが一番いいでしょう。楽天グループの2015年12月末時点の連結バランスシート(図321)を見てみると、楽天銀行での「預金」が1兆4655億円ある一方で、楽天カードの「貸付」が8321億円と明記してあります。見事にバランスしています。

シバタ ナオキ. MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1660-1666). Kindle 版. より引用

連結決算のバランスシートから事業単体を読み取るのも、カードビジネス特有の「債権」を割り出すのも、それを解消ために「なら真逆のことやりゃいいじゃん」という発想も、B/SやP/Lに見られるケッタイな左右の関係がなけらば決してあり得ない・・・! 

ああ、びっくりした!もっと勉強しよう。ちなみに、新規事業のモデルが常に頭の片隅にあるので「あ、これ使える」「ここもらおう」と思えるのも楽しいです。

もっと仲良くしようね、財務会計!

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