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noteでメセナを

みなさんこんにちは、上田久美子です。
今日は私のnoteについてお話させていただきます。

このnoteでは、上田久美子とその制作団体であるProjrctumïの活動にまつわる記事をお届けし、その売り上げを創作活動・公演制作に充当します。
Projectumïが主催する公演は、利潤を追求するものではなく、批評性のある作品をとおして、なるべく多くの人々に楽しみながら社会や世界について考えていただくことを目的としています。
公的助成を創作費に充てていくつもりではありますが、それのみに頼っては、活動の規模や発表の機会が限定されてしまい、作品をできるだけ幅広い観客の皆さまに届けたいという目標になかなか近づけません。

そこで私は、皆さまに「メセナ」を呼びかけたいとおもいます。「メセナ」は芸術文化支援を意味するフランス語で、古代ローマの初代皇帝アウグストゥスのもとで文芸作家などを手厚く擁護した高官マエケナスの名を語源としています。
現代におけるメセナの役割は企業が担うことが一般的であり、私がかつて所属した宝塚歌劇団もまた、実業家小林一三氏により文化振興を目的として運営された背景があります。私はかつてそのような劇団の成り立ちや歴史に強い愛着を抱いていました。

私は今、これからの日本社会で文化振興に重要な役割を担うのは、国家や企業以上に市民ひとりひとりであると感じています。私は「メセナ」を誰にでも気軽に行えるものにすることで、多くの方々に社会創造の担い手になっていただくことはできないかと考えました。

このnoteの記事をご購入いただくことは、上田久美子およびProjectumïが作品を世に送り出すための貴重な支援となります。この小さなメセナ活動を通じて、世界に資する創作活動を皆様と共に行ってゆけることを、私は切に願っています。

どうぞよろしくお願いいたします。

上田久美子



●これからの上田久美子の創作活動◯

・2024年8/2~8/16 城崎国際アートセンター アーティスト・イン・レジデンス
 「プロジェクト・プネウマ」(一般参加ラボラトリーあり、見学会あり、無償)

・2025年1/23~2/3   都内某温泉の宴会場
 Projectumï主催公演「寂しさにまつわる宴会」(詳細は後日リリースします)



◯どうして個人による「メセナ」なのか●

ここから先は、「メセナ」や文化事業にご関心を寄せてくださる方へ向けた情報です。

日本の現代演劇のマーケットは、フランスやドイツに比べて小さいです。
なぜなら国の文化予算の桁が違うからです。
先日、先々の企画のために俳優に支払うギャランティの目安をこの業界に詳しい知人に尋ねたことがありました。その答えに驚きました。時給に換算すると800円ほどと、アルバイトの最低賃金よりも低かったのです。そのような活動は、サステナブル(持続可能)ではないと強く思いました。
そして考えてみれば、俳優にはギャランティを支払いますが、私はその企画のための準備や構想、助成金の獲得などに費やした時間に対してほとんど何も対価を受け取っていません。
好きなことをやっているのだから手弁当でも当たり前、そんな考え方が日本人の芸術観を支配しているような気がします。
けれど、専門的な教育を受けトレーニングを積んできた俳優の能力は、1時間800円の価値しかないものでしょうか?私が社会に資する作品を実現したいと費やす事務作業や交渉の時間は、0円の価値しかないものでしょうか?

なぜ、日本では舞台に対する公的助成がフランスやドイツより小規模なのか。それは劇場というものの歴史的な成り立ちに起因しています。
現在の文化大国であるそれらヨーロッパの国では、かつてオペラ座などの大劇場は王朝や州侯ら王侯貴族によって設立され、保護されてきました。フランス革命や世界大戦を経て、民主主義の時代になっても、かつて権力者のものだった芸術を市民のものにするという理念から、現在も国家が劇場に多額の助成をし、舞台芸術を幅広い市民に安価で提供しています。
一方、日本で演劇の歴史というと能・文楽・歌舞伎が思い浮かびますが、室町幕府に庇護された能を除いて、文楽は大阪の商人らによって、歌舞伎は江戸の町人らによって、貨幣経済の中の消費活動として享受されてきました。日本に、幕府や皇室によって設立された劇場はありません。つまり日本では元来、劇場は公的な支援を受けない商業施設だったのです。
そのため今でも日本では、高価なチケット料金で収益を上げて成立する商業的舞台のほうが圧倒的なシェアを占めていて、安価にアートを市民に届けようとする現代演劇のシェアは、助成の規模に準じて小さいままにとどまり続けています。

今後、国家の文化予算が持続的に増額されていくことは、昨今の日本の経済状況を見るに望むべくもないことでしょう。
経済成長が止まって久しく、企業がメセナに割く予算も全体として増えていくことも今は望めないでしょう。
日本では、演劇は一人一人の個人によって支えられてきました。
今、こうしてオンラインで津々浦々の人々が繋がれるこの時代に、皆さまの好奇心、見たことのないものが生まれることを期待してくださる気持ちを、現代演劇の世界にもお寄せいただけますようお願いしたいと思います。
消費ではなく、小さな「メセナ」を、楽しんでいただくことを夢見て。




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