政治家に向いている人の見分け方
「鈴鹿さん、今回は本気で考えてみたら」
国会が閉会して1ヶ月ぶりに会った議員が、眉を寄せてこう言った。
「あり得ませんて。私は政治家は向いていません。」
「いや、だってどんな話してたって、筋は通っているし、考えは曲がらない。政策だって、どの局面で話しても常に芯がある。
俺よりずっと向いてるって、政治家」
次の瞬間、彼は自分の言葉に傷ついて、ため息をついた。
テレビ番組でも聞かれたことがあります。
「鈴鹿さんは、政治家にはならないんですか?」
そのたびに答えます。「はい、向いていないので」
次に必ず言われるのは「鈴鹿さん、ハッキリしてるし」
――キツイってことですか? 「論が崩れないし」
――頑固って意味ですかね 「話し方、上手いし」
――教えてますし 「演説原稿だって最高だし」
――元政策秘書ですからね 「霞が関のことも良く判ってるしさ」
――一緒に働いていましたから 「だから」
――何がですか 「政治家に向いていると思うよ」
――いえ、私は向いていません
このあたりで毎回ムードが悪くなってくるので、この話題は終わらせるようにしているのですが、次に聞かれることもだいたい決まっています。
「どうしてやらないの?政治家嫌いなの?まさかだよね」
――私、自分の名前を連呼して町中歩くなんて、恥ずかしくてできません。
この点が決定的に政治家に向いていないポイントです。私は町中に自分の顔のポスターを貼ることを「恥ずかしい」と思ってしまいます。自分のポスターが貼ってあるのを見て「嬉しい!」と思えたら、この点はクリア。この先を考える時、どんな人が政治家に向いているのでしょう。
選挙は国政選挙だけではありません。県議会から市議会、それぞれの地域の首長まで、さまざまなクラスの選挙があります。私は政治家には向いていませんが、政治家を応援するのは得意です。そこで、今日は選挙にチャレンジしようと考えている人が、自分のどこをチェックしたら向き不向きを見定めることができるのか、考えてみようと思います。
政治家に向いている人
向き不向きといっても、乗り越えられるものと乗り越えられないものがあります。「乗り越えられる不向きな要素」を含めて考えると、政治家に向いている人の共通項はいくつかあります。そのうちのひとつに「怒りがあること」は外せないポイントです。怒りと言っても、プンプン怒っているということではありません。社会の在り方や問題に対して、解決できていないことに対する怒りがある人は、その解決策を見つけることができる人です。
国の課題を解決するということは、善悪で判断して断罪できるようなシンプルなことではありません。政治家に求められる資質として「清濁併せ呑む」とよく言われますが、これは、良いことも悪いことも、良い人も悪い人も、美しいものと濁ったものをあるがままに受け入れることを意味します。
濁りを避け、清らかなことばかりを好み求めるのではなく、社会や人の濁りをも受け入れてここを受容する社会をつくることにまい進する心構えが政治家には求められています。懐が深いとか、度量が大きいともいえるのかもしれませんが、政治家にとって何より重要なのは、国家と社会は清廉潔白を求めては成り立たないことを腹に収めていられることだと思っています。
民主主義を実現するには「濁」が必須
99対1で賛否が分かれたとしても「1」の意見を見捨てないことが民主主義。どうやってその「1」を取り入れるのか、ここを悩むのが政治家の本質的仕事です。だから、考えること悩むことを由(よし)とする人でなければ、この仕事は成立しません。たとえ自分の考えと真逆の意見であっても、その意見を受け入れ、その背景の存在を認めて、そこでどうやって受け入れる環境を整えるのか悩むこと。これが仕事です。
ですから、悩むことが苦手な人、そして絶対的な考え方や原理主義的な思想を持つ人は、社会の問題を解決するには力不足と言わざるを得ません。逆に、これが「好き」と言える人は向いているのだと思います。
政治家に向いていない人
政治家に向いている人に比べると政治家に向いていない人は、分かり易いです。向いている人の逆、といっても分かりにくいので、こう考えるとシンプルに判断できるかもしれません。「自分の考えや悩みを人前で表現できるかどうか」です。引っ込み思案な人はそもそも政治家になろうとは思わないのでしょうけれど、他人と議論する前提として自分の考えを整理して相手に伝えることができるかどうか。これは不向きな人を判断するのに分かり易い指標です。
私のブログを読んで頂けているということは、政治に全く関心がないということはないはず。ですから、あなたが誰かに「立候補してみない?」と声をかけられたとき、第一関門となる自分の資質について考える時は、このブログを思い出してみてください。
選挙だけでなく、政治家を支えるコンサルティングとして私がアドバイスできる理由は、永田町が私の職場だったからに他なりません。永田町の理屈、霞が関の論理、それぞれの言語を持ちながら、駆け引きの海に溺れないよう生き抜いてきた経験が、今悩んでいる政治家の役に立つのだと思っています。
今年必ずくる衆議院議員選挙
今日も私の携帯に電話とメッセージがバシバシ飛び込んできていたのは、「○○衆議院議員が地元で会合を開いていた」「△代議士は、派閥を移るかもしれない」「□氏があの選挙区で出ることを阻止したいのだけど」…。
今年の選挙は血で血を洗うものになるでしょう。山口三区では、自民党が自民党を斬り合う生臭い選挙です。派閥で言うと、岸田派が官僚派、二階派は党人派。ちょっと入り組んだ話になりますので、ここは近いうちに必ず分かり易く切り出してみたいと思います。
選挙にでるなら、まずはご自身を一度点検してみてください。選挙は民主的な殺し合いです。生き残り、その怒りの源泉である政策を実現するために、勝たなければなりません。その第一歩として、向き不向きを点検することをお勧めしたくて、今日はこんなことを書きました。それでは、また!