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アメリカまで海を手作り船で渡った男の話。

拝啓。ホセ様。
お元気ですか?

私たちは無事日本に到着して2ヶ月が経っています。
今日は息子のバスケットボールの試合で、千葉県にある小学校に行きました。

小学校に行くといつも息子が通っていたカリフォルニアの小学校でジャニター(Janitor)用務員をしていたあなたを思い出します。

息子のバスケットボールが屋根の上に乗ってしまった時にハシゴをかけてとってくれましたね。
小学生の子供たちはじめ、保護者たちもいつもあなたを頼りにしていました。

東京の冬は寒いです。でも今年はカリフォルニアにも雪が降ったと、いつも私と一緒に歩いていたカリフォルニアの友人が写真を送ってくれたのでそちらも寒いのでしょうね。

ホセは、仕事を3つ掛け持ちしていますがかぜなどはひいてないですか?
用務員の仕事は午後3時くらいから夜までですが、他の仕事を二つもしているのに、いつも学校で会う時は疲れも見せずに笑顔でいてくれたことに、尊敬の念すら覚えます。

私は1月から新たに仕事を始めました。新たな環境、新たな仕事で、まだ特別に何かをしているわけでもないのに(苦笑)、毎日疲れてます。久々に仕事をしてるからでしょうか。カリフォルニアで過ごした数年でもしかしたらもはや仕事できない体に変わってしまったのかもしれません…。

仕事の合間にとる紅茶やカフェオレ、スイーツでホッと一息つくのが至福の時間です。

そういえば、ホセは「僕はシュガー(砂糖)はとらないんだ。もう身体が欲さないんだよ」といってましたね。

私なんて、スイーツだらけの毎日なのに。
今日は辻利の抹茶ゼリーをいただきました。年のせいか、一度に全部は食べれません。

ホセはシュガー摂らないから、他のもの、例えばお酒とか呑むのかと思いきやお酒も嗜まない。
お酒どころか、コーヒーなどのカフェインもとらない。

一体どうなってるんでしょう。

それを聞いた時、思わず
「何食べて生きてるの?」
と聞いてしまったことを思い出しました。

食事は極めて淡白で、サラダとかチキンとか。なかなか私には真似できそうにもありません。

スイーツも大好きだけど、ジャンクな食べ物も大好きですから。

でもそんな生活だから、ホセは体つきも締まって無駄なものは何一つありませんでしたね。

ホセは、休みの日によく自転車に乗っていましたね。一回サイクリング中に会ったこと覚えてますか。

ホセの自転車はホイールだけで1つ2000ドルくらいすると聞いて驚きました。ホイールも通常のママチャリにあるようなスポーク(車輪に放射線状にある棒)なんかなくて、全面びっちりと埋まってる。競輪選手のタイヤみたいでしたしね。

全体で100万円くらいすると言ってましたね。

でもそれよりも驚いたのはあなたがアメリカに来た経緯です。

キューバとアメリカが国交断絶となって久しい。
だからキューバ人であるホセがどういった経緯でアメリカにやってきたか気になって、私が質問した時を覚えてますか?

What brought you here?
アメリカにはどうして来たの?

お決まりのクエスチョンしたら、

すると、
「簡単だよ。海を超えて来たんだ」
ってあなたは言いました。


え?

もう一回言って?
海を超えて来たって?

「そうそう。文字通り、海を超えて来たんだ。」

「20代の時にアメリカに行こうって決めたんだ。それで、木を運んできて船作って海を渡ったんだ。5日くらいかかったかな」
なんて、ちょっとそこらへん散歩してきましたくらいのノリで言ってたけど、私は心底びっくりしました。

えー?
海渡った?
5日くらい?

「怖くなかったの」と
誰でも思いそうな質問をしたら、
「方向さえ、合ってれば必ずアメリカに着くってわかってたからね」

と言ってましたね。

生命力、人間力の強さに感嘆するやら、声も出ませんでした。そういうふうに逞しく生きる人がいるからアメリカは国としてどんどん栄えていくんでしょうね。


ところで息子は週末にバスケットボールの試合で6、7試合ほどプレーしました。
ホセのいる小学校で毎日、毎日練習していた成果がでたのでしょうか。コーチにも褒められて本人も嬉しそうでした。

私はそんな息子を小学校の体育館で見守りながらホセは元気にしてるかななんて、ホセのことを思い出してました。

ホセの最近はどんな感じですか。


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