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#141 今まで出会った中で一番真面目な人

Yさんは会社でも屈指な真面目な人だった。
真面目を辞書で引くと、「嘘やいい加減なところながなく真剣であること。」「真心であること、誠実であること」とあった。

うーん。ぴったり。

どういう風に真面目か。

例えば、仮に「電車でYさんが痴漢しました」という報告があったとすると、Yさんを知っている人なら、状況聞くまでもなく間違いなく、「それは冤罪」と思うくらい。

もしくは、何かあったという報告も「Yさんが言うなら本当だろう」と思われるくらい、周りから信頼が厚かった。

真面目と言うか、正しさをもった人なんだと思う。

でも堅物すぎてとっつきにくいかと言うと、そんなことなくて真面目な顔して言う冗談が結構私にはツボで、一緒に話しするのは楽しかった。結構、適当な私だけど、そんなYさんと何故かウマが合い、私の話もよく聞いてくれた。職場が離れてからも、そこの部署に用事でいくたびに休憩に誘って一緒にお茶したりした。
そして大体奢ってもらっていた。
(ありがとうございます)

そんなYさんのエピソードで、私が好きなもの。

当時、Yさんはとあるプロジェクトを抱えており、シンガポールに出張へよく飛んでいた。そんな折、同じタイミングで別の部署のHさんが出張でシンガポールへ。Hさんは結構抜けているところがあって、なんと日本へ帰るために乗ったシンガポールチャンギ空港行きのタクシーの中にスーツケースを忘れてきたらしい。(普通忘れるかな)でもフライト時間もあるから、Hさんはそのまま日本へ。

そのスーツケースは、どんな経緯で戻ってきたのかわからないけど、シンガポールにある会社のブランチに戻ってきた。

そこで登場するのがYさん。
Hさんとは何と、たまたま同じマンション群に住んでいる。おまけにYさんは翌日、シンガポールから日本に帰る予定。まさに神の計らい。

と言うことで、Hさんのスーツケースをハンドキャリーする依頼をされた。日本の自宅まで。

そしたらね。なんと、Yさん断ったんですよ!
確かに他人のスーツケースを運んで、仮にそれに麻薬とか入っていて入国した場合、罪になる。だからリスキー。
でもYさんとHさんは同じ会社、同じ職種。おまけに同じマンション群。そこまで仲良しじゃないにしても全く知らない訳ではない。というか、むしろよく知ってる方の知人に入る。

でも断った!

めっちゃびっくりしたね。その話聞いた時は。
それを話してくれた人もびっくりエピソードとして話したわけだから、多分私だけが驚く話じゃないんだろう。

ついつい八方美人的な振る舞いをしてしまう私だったら、まず断らなかっただろうなと思う、と言うか断ると言う発想自体出てこなかったかも。
それがYさんのおかげで、
「なるほど、ここで断ってもいいんだ」
と言う新しい選択肢を見せられた気がした。

確かに知人といえど、スーツケースの中身に責任が持てない以上、運ぶべきではないのかもしれない。

Yさん。そんなふうに断ることでイメージダウンになるかと言うとそんなことない。逆にこう言うことで「確かにYさんは正しいね」とさらに信頼されちゃうと言うタイプだからもっとすごい。

Yさんの素敵なところをもう一つ。
私は八方美人で、ついつい人に嫌われるようなことを避けてしまうタイプ。だからそれが上の人であれ、下の人であれ、相手にとって嫌なことはなかなかいえない。

でもYさんが違う。正しくなければ、きちんと指摘する。
とある件で、すでに解決したはずのことをオーストラリアの社長がまた持ち出してきた。その時にYさんはキッパリといった。
”I am so disappointed that you brought up this issue again. ”
「あなたがこの件をもう一度持ち出してきたことに失望している」
と。

聞きながら、
「あー、私だったらこのセリフ言えなかったな」と思う。

同時に、Yさんの中にある正しさみたいなのがすごく羨ましくて、眩しかった。私もそういう正しさを持てる人間でありたいなと。

Yさん、お元気ですか。



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