#208 体系的に学べる日本と自由な発想が求められるアメリカの図工

こんにちは、くみです。
先日、息子の学校から「ターキープロジェクト」なる宿題が出ました。家に持ち帰って対応する図工系の宿題ですが、それをやっているうちに日本とアメリカの図工って違うよなと思い当たったので今日はそれについて書きたいと思います。

そもそも図工という時間割がない

日本の場合、小学校1年生から図工と音楽などそれぞれの時間があって、図工であれば切り絵作ったり、粘土で作品作ったり、小学校3年生になったら絵具を購入して、絵の具で水彩画描いたり。水彩画とかも、夏休みの宿題で「夏休みの思い出」とか「とんぼ」とかお題が与えられて描いて提出する。
いわゆる、絵とか工作とかだ。

アメリカの小学校3年生の息子ですが、そもそも図工という時間割がレギュラーではありません。普段は、英語、算数、英語、サイエンス(orソーシャルスタディ)、ランチ、体育というような時間割。

ただ、先生からの送られてくる週1の週間メールで先週、「来週から Art class for theater(演劇初級)が始まるよ。」とあったので8週間ほどの期間限定で初級の演劇があるようです。
つまり、単元ごとに組み込まれる。
今回は演劇。この中で、子供達はパントマイム、ボディランゲージ、即興演技を学ぶらしい。

即興演技ってなんだろう。
「買い物帰りに疲れて歩いているおばあさん」とか言われたら、おばあさんを演じるんだろうか。なかなか興味深いのでこれはまたちょっと聞いてみた。

でも、これって日本とはだいぶ違う。そもそも演劇って図工の範囲にないし。アメリカではArt美術という括りの中で3年生でも、ダンス、演劇、絵画、音楽という範囲がカバーされている。表現するという括りであらゆるものを学ぶのだろう。

興味がある人がいるかわからないが、美術で3年生は学ぶ内容についてWEBに学校区のホームページにあったので掲載しておく。

Visual and Performing Arts Overview 美術概要
The doors of knowledge open wide for third-grade students, offering them new possibilities through the arts. As they start thinking abstractly and their levels of perception become more sophisticated, they can describe their thoughts orally, graphically, and in writing. Their increased fine motor skills help them learn all kinds of things, from cursive writing to playing classroom musical instruments. As they begin to learn about their community, they become more curious about themselves and about others. Their study of the arts leads them to gain knowledge about many different subjects. For example, excited by a walking trip through the community, they draw pictures representing landmark buildings. They also learn to dance and sing to music from their community’s many cultures and use their theatrical skills to portray a character. 
What 3ed Grade should know /3年生で学ぶ内容
 The visual and performing arts standards are designed so that students can improve their capacity to create and appreciate art over time, with the enhancement of foundational skills needed at the later grades. In dance, second-graders began to combine dance movements into short sequences, learned the vocabulary of dance, and identified dances from various countries. In music, they learned to read, write, and perform simple patterns of pitch, which opens up varieties of music that will be explored in later grades. In theatre, students performed in group improvisations and learned theatrical games to improve their skills, studying universal character types from stories both familiar and foreign. Finally, in the visual arts, students applied their knowledge of the elements of art through basic art-making processes, such as printmaking and collage. They studied art objects from different cultures and time periods and began to evaluate their own work

今回の宿題のターキープロジェクト

そして今回、息子の宿題ターキープロジェクト。
ターキー(七面鳥)は11月下旬の休み、サンクスギビングで伝統的に七面鳥を食べる。季節に合わせた宿題だ。

学校から1枚のお手紙を持って帰ってきた。

画像1

ファミリーダーキープロジェクト
ご家族のみなさまへ
助けてほしい!ターキーについてのこのお手紙を見てください。このターキーがサンクスギビングを変装することで無事過ごせるように手伝って欲しいのです。今までにターキーはバレリーナになったり、アメフト選手、農民、フラダンサー、エルビスなどになってきました。今回、家族で何か特別なものを考え、ターキーを変装させて欲しいのです。
どうか楽しんで、かつ創作的に取り組んでください。装飾するのに、思いつく限り何を使ってもいいです。過去には、クレヨン、マカロニ、工作用の羽、ティッシュ、壁紙、乾燥豆、米、新聞広告か切れ端、リボン、布の切れ端などなど使われてきました。単にターキーを色塗るだけとかにしないでください。

直訳ですが...

そして学校から配られた、2枚の紙。
1枚は切り取るとターキーの形になるもの。
もう1枚は、ターキーのセリフ。

切り取ったらこんな感じ。
ターキーというよりは、丸っこい大きな人型のようだ。

画像2

最初は、イメージを膨らませるために過去のターキーについてgoogle先生で調べたりして、「農民にしようかなー。」とか言っていた。
調べてみると、農民やらスポーツ選手やら、派手なシンガーやら色々ある。面白いのは、映画で食べるポップコーンになりきったターキーまでいる。
非常にユニーク。

息子がいいなと思ったのを簡単にイメージさせるために、まずは適当に描いたイラストを上に載せてより具体的にイメージさせる。

下の写真は、バスケット選手。レイカーズのレブロンジェームズ。

画像3

もう一つはサンタクロース。
見比べた結果、結局、息子はサンタターキーにするという。

そして試行錯誤しながら毎日少しずつ作って出来上がったのがこちら。

ジャジャーン。
クリスマスツリーの近くで、プレゼントの袋を持つサンタターキー。

画像4

セリフには
私はターキーではない。私はサンタクロースだ。私がプレゼントが欲しいたくさん子供たちのためにプレゼントを持っている。私はプレゼントを隠すので、子供達にはそれを見つけて欲しい。私は子供たちをハッピーにするために一生懸命働いてるんだ。ハッピーな子供たちをつくるためにね。メリークリスマス!

素材もまちまち。
画用紙をはじめ、ベルトはワイヤーが入ったひもだし、ベルトはチョコレートを包んでいた銀紙。サンタの衣装の白い部分はコットン素材。

持っていたら、「This is Great! これはすごいね」って褒められたよと嬉しそうだった。

自由な発想が求められるアメリカ

息子が今回作業を進めていく中で、最後まで逡巡していたのが、クリスマスツリーをつけるかどうかだった。

「こんなのつけていいのかな」というのがその理由。

なぜ「つけていいのかな?」とその思考になったのか私には理解できなかったのだが、どうも「配布されているのはターキーだけなのに、勝手に違うものをつけていいのかな」という心配らしい。

私からしたら、むしろもっともっと大きいクリスマスツリーでもいいくらいなのに。

でもね、これって考え方の癖だと思うんですよね。
日本で図工の宿題は、例えば「A4サイズの紙にトンボを描いてください」など指示が明確に出ている。例えばとんぼを描くのに、紙をひし形にきったりも丸形に切ったりするのはNGだ。
教室にもきっちり四角四面の紙でずらっと作品が並ぶ。

つまり日本の場合、ある一定の型があり、その中で技術を向上させることに主眼が置かれているのではないか。

一方でアメリカの場合、型がない。まず型を考えろと。その先にある技術はそこまで主眼が置かれていないというか、自分なりの型を創り出し、それを楽しめというのがモットー。

枠組みの中で考えるのと、その枠を外すことを考える違い。
息子は、「配られたのはこれだから、それ以上の余計なものはNGなんじゃないか」という発想を最初していた。それがクリスマスツリーなんてつけていいのかなという発想。

「そんなの関係ない、つけったっていいじゃん。面白いから」というのが枠を外した発想。技術的に絵なり工作なりが効率的に上手くなるのは、日本方式だと思う。でもせっかくアメリカにいるのだ。枠に囚われず、独創的な考え方でまず物事を捉えて欲しいなと思うのである。

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総合的な技術力というのはやはり体系立てて教える日本の図工のほうがずっと高いように思います。アメリカの場合は、体育でもそうですが、今日は野球、明日はバスケットといったように幅広くカバー、移っていくので、一つの技術が向上するというよりはまず楽しさを全身で感じようということに主眼を置いてる

そういえば、昨年のオンラインベースのスクール時は、毎週STEM関係の宿題が出されていました。今年8月に始まってから、図工系の宿題はこれが初めて。これからたくさん出てくるのだろうか。

また面白いのが出てきたら紹介します


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