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ナレーションを極める26 映像のない初見

ナレーターの熊崎友香です。普段はテレビ東京WBSや、NHKアジアインサイトのナレーションを担当しています。4歳と6歳の子供を育てるワーキングマザーです。

WBSの現場で、まず驚いたのは、企画以外の収録は”映像なし”だということです。これ、今となっては、民放各局、ニュース番組はたいていそうやって収録している、当然のことと知りましたが、当時は、あまりよく知らず、また聞くと実際行うでは大違い。何を頼りに、どのくらいのスピードで、どのくらいのトーンでこのニュースを読めばいいのか、戸惑いました。

通常の企画であれば、映像があります。登場人物がいます。登場人物のトーンや、気持ちの揺れ、BGMがついていれば、企画全体の方向性が見え、それに合わせて乗せていけます。

一方、目の前のカラーバーにただただ、自分のナレーションを乗せていく。これは、ほぼ初めての経験でした。ラジオに近いような。語りに近いような。

そこで、私の場合は、”とにかく想像する”ことに注力しました。ここはどんな映像なのか?台本には、少しだけどんな映像か、書いてあることが多いので、それを頼りに、広めの絵なのか、UPなのか、動きはありそうか。ZOOMなのか。PAN(横にカメラが動く)なのか。ドリーなのか。

ON(登場人物インタビューなどの音声)も、大変参考になります。どんな内容を話しているのか。がわかれば、その前振りでナレーションは、どう持っていけばいいのか。またONの明けは、どう受ければいいのか。もわかってきます。

そのニュース項目そのものは、どれくらいのトーンで読むのが良いのか、が一番難しい。時間があれば前説に目を通します。台本をじっくり見れば、番組全体の構成がわかります。キャスターが、どんなトーンでニュースに振るのか、明るいのか、楽しそうなのか、深刻なのか、初めてで驚いているのか。

あとは、当然ですが、ニュースを知っていると強いです。日々の流れを知っていると戸惑いなく入れます。なので、できるだけ、ニュースはチェックするようにしています。

個人的に「放送は、人を幸せにするもの」という元上司の教えが根幹にあるので、”煽りすぎる”伝え方は、好きではありません。どんな悲しいニュースも、それを流すことで、誰かの幸福に繋がるために、放送している、ただただ、脅かすためでは意味がないと考えています。

我が家の朝は、まずNHKのラジオニュースから始まります。想像力を膨らませる、トーンをまなぶという意味でもいいのかもしれません。我が家には、アレクサエコショー が、テーブルに置いてあり、朝その日のNHKの7時のラジオニュースが流れる設定になっていて、みんなで朝ごはんを食べながら、ニュースを聞きます。時間も知らせてくれ、ちょうどいいです。”声だけで届けるニュース”という意味でも、”正しいアクセントを使う”という意味でも、煽らないという意味でも、参考になります。テレビもチェックしたいのですが、子供たちが釘付けになってしまうので、テレビは、子供たちが出かけてから観ます。

映像がないニュースを読むということは、ナレーションありきで、映像をつなげていきますので、こちらが引っ張っていくところもあるわけです。だとすると、やはり、ニュースの流れ、(映像も含めた流れ)ロング(外観)から入り、ルーズになり、アップになっていく。。。ような映像の流れを知っておくと、強みになります。

収録後に、放送を見て、あれ、こんなトーンだったの?こんなお話だったの?思ったのと違った!ということ、何度もあります。一般の方が気付くレベルかはわかりません。一応ディレクターさんのOKも出ているので、放送上は問題ないのかもしれません。しかし、自分としては、もっとこうすればよかった、という反省はよくあります。

そんな時、いつも自分を鼓舞する好きな言葉があります。

「転ぶのは恥ではない。転んだままでいるのが恥なのだ」

人生は失敗の連続。何もしないより失敗しよう。失敗から学んで成長していくのだから。失敗しても続けてお仕事ができる場所があることがありがたい。事務所、テレ東さん、視聴者の皆様に感謝。

朝活4日目。どなたかのモチベーション向上につながれば幸いです。


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