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中国人の思う面子と日本人の思う面子のお話

中国人の言うメンツって日本人の思うメンツとは意味が幾らか違います。

日本語のメンツは「顔」と言い換えることができます。例えば「顔を立てる」とか「顔を潰された」などの言葉を「メンツを立てる」とか「メンツを潰された」と言う場合があります。

つまり日本語のメンツは「面目」「対面」の意味が強く、人前でどう扱われたかが強く関係しています。そして多くの場合「恥をかかす」「恥をかかされる」という感情と深く結びついてます。

それで偉い人が「メンツが潰された」と顔を真っ赤にして怒り狂うのでしょう。彼が切れているのは「恥ずかしい」からです。

それに対して中国語のメンツについて、わたしの持っている辞書は次のように説明していました。

面子(miànzi)名詞
1(物の)表.
2メンツ;体面;(他人に対する)義理.
3〈口〉粉.粉末.

小学館 中日・日中辞典より抜粋

よく、メンツ(面子)は麻雀のメンバーが語源なんていいますが、中国語の語源はどうなんだろうと調べてみると、どうやら中国語の面子は、辞書の説明の「物の表」が本来の意味だったようです。

一番目立つところ、例えば玄関とか店先に並べている商品をより美しくすると、評判が上がる。逆に玄関に落書きしたり、商品をダメにしたりすると評判が下がる。

そこから相手の評判を上げたり下げたりする行為のことを「メンツ(面子)」という言葉に絡めて表現するようになったのでしょう。

そうなると、中国人の思うメンツとは単に恥を掻かされる以上のことが関係しているはずです。彼らの思うメンツとは自身が所属する社会の中での評判、つまり影響力と関係があるからです。

また辞書の説明では「メンツ」を「他人に対する義理」と説明しています。

中国人って義理に対して本当に敏感です。

例えば、最近は変化しつつありますが、グループで食事をする際、誰かが代表して会計する習慣が中国人にあります。ご馳走してくれた人にみんなでお礼を言い「メンツをたてる」ことが大事です。

また次回、別の人がみんなをご馳走します。これを繰り返して関係を強化していきます。つまり義理(人間関係)とメンツが深く関わっています。

自分の仲間の間で、どう思われるか、相手がどう感じているかがとっても大事なので、関係強化のために努力します。これが中国人のメンツです。

そして、中国人にとって自分と関係のない人の評判なんてないも同然です。また知らない人からどう思われようが気にしません。

それで、他の人がどう感じるか、どう思うかなどをまったく考慮せずに振る舞えます。彼らの見ている社会の範囲が狭いので、公共の場所での振る舞いも適当になります。ゴミを散らかしたり、列に割り込んだりしても気にしないのです。

もちろんこれって日本人にも少なからずある傾向です。

旅の恥はかき捨てって言いますよね。つまり自分のことを知らない人、また2度と会うことがない人ばかりの環境だと、日本人も気持ちが大きくなって普段しないようなことしてしまうことがあります。

この「旅の恥はかき捨て」を、日常的に見られるのが中国です。

さらに日本人は自分が所属する社会の範囲が広いのか、知らない人に囲まれた状況でどのように振る舞うかに敏感です。さらに、みんなと違うことをして恥ずかしい思いをしたくないって感情が関係し行動を規制します。

でもこの範囲がビックリするくらい狭いのが中国。そして狭いくせに密度は濃い。それで、中国人は知らない人が何かとんでもないことをしていても、眉をひそめるくらいはしますが、相手を注意したりしません。

相手との距離が保たれている限り無視します。だって相手が何を仕様と自分と自分の人間関係の影響が及びませんので・・・

それで、もし中国人友人知人と一緒にいて、相手が自分のことを気遣ってくれたり、明らかに建前だろうという褒め言葉を言ったときは、モヤモヤする必要はありません。ただ、相手が自分のことを仲間と見てくれているのだろうと受け入れればいいと思います。

そして相手が自分のことを気遣ってくれていると思うようにしましょう。

しかし、一般の中国人が自分の中国語を褒めてくれたからといって仲間だと見なしたわけではないので気をつけましょう。その褒め言葉に「今日は良い天気ですね」くらいな意味しかありません。ただの挨拶です。わたしだって日本で外国人にカタコト日本語で挨拶されれば褒めます。それだけのことです。

そんなわけでメンツという日本でも中国でも使われる言葉ひとつ考えても、似ているようで違ってるんだなって思ったお話しでした。

今日も最後まで読んでくれてありがとう。また明日。

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