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OKYと言われて中国に乗り込み切れられたK氏のおはなし

最近の華村さんの投稿を読んで思い出したことがあります。

それはK氏のことです。

K氏は日本で家具販売をする会社に勤務するサラリーマンで、家具はすべて中国の広東省H市より輸入していました。そしてまさにOKYと言われ、実際にH市まで出向き、切れられた経験の持ち主です。

その物語を今回はご紹介したいと思います。この物語は事実を元に作られているフィクションです。しかしほぼ事実です。

K氏の悩みは価格と品質の問題

あるときK氏はコンテナから下ろされた家具を検品していて気がついてしまいました。

この家具って品質が悪いんじゃない?

そもそも寸法もあっていない気がする・・・

価格も安くもない・・・

K氏はこれはいけないと思い、中国現地事務所に調査を依頼します。しかしここに不幸な事実が存在します。K氏は中国語が堪能な日本人で、H市には駐在員などはいません。いるのは現地の中国人スタッフのみです。

K氏と中国人スタッフのコミュニケーションにまったく問題はありません。しかしK氏が期待している「品質」の確保と「値段交渉」という課題が解決できません。

そして徐々に現地スタッフはOKY(お前が来てやってみろ)状態でお互いにストレスを感じる状態になってしまいました。

それで彼は単独で広東省H市へ乗り込むことにします。中国人スタッフのOKY(お前が来てやってみろ)から、OKYY(俺が来てやってやる)状態に変化したわけです。

OKYYなんて言葉なんてあるか知らんけど・・・

K氏、家具の製造元で焦る

仕事大好きK氏は得意の語学力を生かし、製造元工場へと乗り込みます。そして製造現場を見学します。

ちょうど本棚を製造していたのですが、手作業で木材を加工していました。ただ、カットする寸法は「段ボール製」の定規で採寸されていました。

木材をカットするごとに段ボールで作られた定規は少しずつ短くなって行きます。そしていくらか短くなったところで作業員は段ボール製の定規を廃棄し、次の段ボール製定規を用意し作業を続行します。

K氏はすぐさま並べられていたカット済み木材を並べ、長さが違っていることを工場の責任者に指摘します。

すると工場責任者は「お前の家にはこの本棚を並べて使うほどのスペースがあるのか?」と言います。

K氏は「そういう使い方をする顧客もいるから、サイズはキチンと合わせて欲しい。ネジ穴の位置なども微妙にずれているのが気になっている」と反論しました。

この時点でK氏、ちょっと雲行きが怪しくなってきたことに気づいており、同時に製造現場のリアルをみてちょっと焦りを感じたそうです。

ただOKYY(俺が来てやってやる)と乗り込んだので、引くに引けない状況となっています。

工場責任者から「ところでおまえの注文数はいくつだ?」と聞かれる

ここで工場側からの反撃が・・・

「ところでおまえの注文数はいくつだ?」

毎回の注文は多くても100程度です。だってK氏の勤務先は家具の小売店で商社ではありません。

彼の勤務先であるお店に行ったことがあるのですが、非常に個性的なデザインの家具を扱う興味深い品ぞろえが特徴で、恐らく日本に0.01%くらい存在する強烈なファンを対象にしたような家具屋さんです。

正直に数量を答えると、一言「帰ってくれ・邪魔だ」と言われ、その場で契約を切られてしまいました。

現地のスタッフが慌てて取りなしをしようとしましたが、工場側は「中東やアフリカに毎月数万単位で出荷しているが、サイズのことでクレームがでたことはない。それなのに日本から来たこいつは100程度の注文でクレームをつけてきた。しかもわざわざ中国まで乗り込んできた。面倒くさいから出禁で」と言われ関係回復できませんでした。

いくらか事実を脚色していますが、まあこの通りです。

K氏はそのご駐在員となり酸いも甘いも噛みしめる

その後、彼は駐在員としてH市に派遣されて、品質と価格で折り合いのつく製造元を探し、検品し、出荷する毎日となるのですが、よりより成果をだすために人間関係に気を遣うようになったそうです。

彼は駐在時代に「OKY」と言うことはありませんでしたが、きっと心の中でいつも叫んでいたのではと思います。

追記:
このK氏は非常に物腰の低い人でして、そもそも「OKYY」しようとしたのも、乗り込んで懲らしめてやろうってしたからではありません。
ただ品質が悪いので困っていると言いたかっただけなのですが、数の力をまだ理解しておらずこんなことになってしまいました。

その後、彼は経験を積んで、中国人からもすごいね君っていわれるようになりました。

小さな工場で品質もいまいちでも世界的な企業かもしれない

中国の小さな会社でも、結構南米や東南アジア、そしてアフリカなどに大量に輸出している企業もあります。

わたしは以前自動車向けLEDライトの製造販売をしていましたが、そのときに1個0.1USDくらいのLED電球を大量に製造して輸出している企業と知り合いました。

彼らの価値観は不良発生率を抑えて価格を上げるよりは、安いんだからこんなもんだと思ってねって感じです。

彼らは片言の英語で世界中の企業と取引しています。そして大事なこととして利益を上げています。

工場は粗末でも社長の車はベンツとかポルシェだったりしますしね。

というわけで日本向け製品を作ると技術が上がるとかより、彼らにとって「今」儲かるかどうかが大事ってことを見抜けないと痛い目に遭います。

そもそも日本企業だって儲からなければやっていけないはずですよね。

おっと!

なんだか悪口になってきたので、この辺でやめておきます。ちなみにこのK氏ですが「くまてつ」ではありませんよ。わたしのことではございません。でも彼の気持ちは痛いほど良くわかります。

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