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おばあちゃんときゅうり

昔から大好きな食べ物、きゅうり

パリパリしてて、みずみずしい、緑色の細長い野菜。

夏になるとよく食卓に並びがちで、どこか懐かしい野菜でもある。

なぜ、いつから、どこが、好きなのかはわからない

それが、私にとってのきゅうりなのだ。



小さい頃、おばあちゃんがよくきゅうりのお漬け物を漬けてくれた。

私は、おばあちゃんがぬか床からお漬物を出すタイミングに携わるのが好きだった。

「手が臭くなるから」

と言って、私が出すことはなかったけど、

いつも側で眺めながら

“大人になったら私もぬか床からきゅうりを出せるようになるんだろうな”

と、思っていた。

出した後は、周りについたぬかを水で洗い流し、食べやすい大きさに切ってくれた。

夕飯の時間まで待ちきれず、毎回一口食べさせてもらっていた。

漬けた時間の長さによって味の濃さが違い、私は濃いめが好きだった。

それを知っていたおばあちゃんは、少し長めに漬けてくれていた。

そのせいか

「将来は酒飲みやな〜」

と、よく言われていたものだ。


そんなお漬物の習慣も、大きくなるに連れていつしかなくなっていった。

気がついたら冷蔵庫にお漬け物が入っていて、ただそれを夕飯の時間に食べるだけ。

それでもおばあちゃんは一人でお漬物を漬け続けていた。




おばあちゃんが亡くなったのは、私が中学2年の頃だった。

悲しさと寂しさと、お漬け物

これが当時の心境のベスト3となった。


もうあの味に触れることはないけれど、

毎年夏になると思い出す、

温かくて大切な、みずみずしい夏の思い出

それが、

“おばあちゃんときゅうり”




おわり


MAI♡

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