Aalto大学IDBMではどんなことが学べるか(2024年編)BIZトラックの場合
「な、夏が終わってしまった…くぁwせdrftgyふじこlp」
もとい、
もいもい。くまたろうです。夏休みが終わって2年目が始まり早速授業に子育てに奔走していて体調を崩しました涙 社会人になってしばらくしてからというもの季節の変わり目には体調を崩しがちなのでこっから整えて行きたいところ!
さて、アアルト大学のIDBMという修士プログラムに留学しているくまたろうといいます。息子(1歳)と、妻(日本企業にリモート勤務)といっしょにフィンランドで留学生活を送っています。
受験記録とか(めっちゃ落ちます、ここまで落ちる受験録なかなかないんじゃないの・・・)滞在記録とか、子育て記録とか書いています。
IDBMとは
デザインとテクノロジーをグローバルなビジネス展開と統合することで、アアルト大学の理念を体現する先駆的なプログラムです!
BIZの募集要項をみると、アアルトの6つの学部すべてに配置されている唯一のプログラムです!ともあります。
ARTS,TECH,BIZの3つのどれかの分野を専門として持ちつつ、クリエイティビティの促進を目的とした分野横断的なマネジメントを学ぶπ字型人材の育成を標榜しています(人材類型としては一昔まえにもてはやされていたような記憶も)。つまりは、修士レベルの専門知識+クリエイティブなチームマネジメントスキルみたいなものの育成が目標って感じです(と、どっかに書いてあったのですが出典が見つからず・・・)。
実際に、1年目の殆どを占める専攻(IDBM)の授業では、3分野(といっても更にみんな、〇〇デザインとか〇〇工学とかいうレベルでの専門はバラバラ)の学生が一同に会して一緒のチームでいろんなプロジェクトに取り組みます(次回以降の記事で解説します)。
2年目は始まったばかりですが、誰とも授業で会いません笑
IDBMのプログラムの構成
概要(全体の構成)
ARTS,BIZ,TECHの3つのトラックがあり、トラックごとにもらえる修士号とそのプログラム構成が違います。
私はBIZトラックなので、もらえる修士号はMaster of Science in Economics & Business Administration(略すのがむずい。たぶんMSc.Econ&BA)ということになっています。毎年試行錯誤が繰り返されているようで、2年目の今年から急に下記のThesis Seminarが6単位から2単位に減り、 Elective(選択科目)の割合が増えました。
卒業に必要な120単位のうち、1/3がIDBM共通の専攻で必修で1/4が修論のこりの50単位で、副専攻と選択科目を取れる感じです。
筆者の場合
1年目には、必修のほとんど(37/42単位)と、Minor(スタートアップ関係、22単位)を取りました。ほんとはMinorは1単位取りすぎてElectiveにまわっています。なので、37+22+1=60単位取得しました。
2年目は、秋学期にElectiveのほとんど+残りの必修を取り切り、年明けの春学期には修論+選択の残りくらいにしようと思っています。
必修で何を学ぶか
とにかく、デザイン思考やデザインフレームワークを軸にしつつも、 とにかく実際にcollaborationすることがメインです。デザインの方法論を体系的に学ぶみたいな感じではありません。具体的な科目としては以下のようなものがあります。
必修科目のひとことレビュー
IDBM Challenge:
プログラムのキックオフとして位置づけられるデザインスプリントプロジェクト。ダブルダイアモンドとは?みたいな話や、5whys、how might we?等々いくつかのフレームワークを与えられながらもとにかく短時間でのワークショップを繰り返し、6週間のうちに自分たちが選んだ社会課題に対して解をデザインしてプレゼンする感じ。Corporate Entreprenureship and Design:
カーデザインとマーケティングやコーポレート・アイデンティティみたいな話をする感じだったのですが、講義があまりにorganizeされていなくて学生側から批難が殺到。24年からStrategic Designに入れ替わりました(いいな・・・)Networked Patternering & Product Innovation(NEPPI):
IoTマシーン=ピタゴラスイッチを作る過程を通じて最低限のプロダクト開発とその過程でのエンジニアとのコミュニケーションを学ぶ。最終的にはチームで販売する仮定の下にIoTプロダクトを実作・最終日に学内のEXPOで展示するもの。我がチームは、トイレの蓋や冷蔵庫を占め忘れた場合にアヒルが叫んで(What the DUCK!!)知らせるという荒唐無稽なプロダクトでした。ベトナム人のチームメイトのプレゼン(資料もデリバリーも)が鮮やかすぎて、一瞬世界を取れるんじゃないかと勘違いしました。IDBM Capstone:Industry Project :
IDBMの看板プロジェクトです。実際の企業をパートナーに、半年間コンサル(デザインリサーチ)プロジェクトを実施します。パートナーはいずれもフィンランドを代表する大企業。または新進気鋭のスタートアップ企業です、アフリカに行くソーシャルなプロジェクトもあります。予算がついてるので、外国に1−2週間リサーチトリップに行けることから、MinorでIDBMが人気の理由にもなっているプロジェクト(2チームが日本に行ってました)。個人的にも実際に学ぶことが一番多かったプロジェクトかもしれません・・・。Business Model Design:
「ビジネスモデル」に関する話題をつまみ食いしながら、週一回は課題論文に基づく講義、もう一回はワークショップという感じ。体系的にビジネスモデルとは、を学ぶわけではない。かといって広く浅いので講義の内容が日経やNewspicks、HBR、ダイヤモンドオンライン、東洋経済あたりの記事で知ってるよというレベルを超えて来ず個人的には不完全燃焼な感じ(その点、日本語でよめるビジネス記事のコンテンツのレベルって結構すごいなとも感じました)。例えば、ポーターのCSVとそれに対する批判を紹介して、「みんなどう思う?」と問われる感じ。Advanced Topic in IDBM:
2年目に受けることが推奨されており、未受講。なんとなく、1年目は必修で顔を合わせるIDBMerたちも2年目になるととんと顔を合わせなくなるので顔合わせられるように設計されてる授業なんちゃう、と思ってたりします。
Minorでは何を学ぶか(BIZの場合)
アカウンティング、マーケティングみたいなゴリッとしたのから、スタートアップマイナー(筆者が去年取ったもの。去年まではAVP Aalto Ventures Programmeだった)やサステナ関係まで幅広く選べます。結構みんなバチェラーからの延長を掘り下げているイメージ(体感です)。
ARTSはMinorではなくデザイン系のコースが必修+選択必修、TECHはスクールごとの指定のMinorがあって、選択できたりできなかったりするみたいです。詳細はこちら。
筆者は1年目の冬に頑張ってMinorを履修し終えたので、別記事でそのレポをまとめようとおもっています(Coming soon)。ちなみにIDBMのクラスメイトで唯一同じMinorを取ってた子は、必修科目の履修登録をミスったのと「なんか違った」のと、「できるだけ遠くに交換留学に行くから」と言ってMinorを途中で変更していました。自由だ・・・。
Electiveではどんなことが学べるか
BIZの場合は、Elective Minorとして2個マイナーを取ることもできます。その場合、マーケティングとアカウンティングを取ったり、サプライチェーンとサステナを学んだよ、みたいなことができるわけですね、就活で強そう!(しらんけど)。
実際のところ、必修がゴリゴリ重複したり、2年目の最終学期まで残んないように戦略的に、などいろいろあります。その点、学費もかからず2年で卒業しなきゃみたいな圧も特にないフィンランド人の学友たちは比較的自由に学びながら考えているイメージ(労働市場が極寒で卒業するのが得策じゃない状況もあります…)。
筆者は、「あれ、デザイン学びたかったのにデザイン全然学べてなくね・・・?」という感じがあるので、デザイン系の授業をゴリゴリ取っていくつもりです。
今学期は、Collaborative&Participatory Technique for Design、来学期にDesign for Social Change(Codesign, Strategyの2科目ある)、あと国会議事堂見学に行けるというシラバスが面白そうなのでPolitical Organization & Decision-makingという授業を取ろうと思っています。こちらもいずれレポできれば。
1年終えて見てどうか
◯◯ではないよ、という気づき
なんとなく、日本のビジネスパーソン、特にジェネラリストというか管理人材みたいな方々って、30前後にして「自分には何も確かなスキルがない・・・」みたいな悩みにぶち当たって、技術系とかデザイン系とか学びたくなったりしません?
僕がそうで、IDBM、技術(PythonとかAIとか?)とデザイン(UI/UXとかサービスデザインとか?)をバランスよく学べるのめっちゃいいじゃん!みたいな気持ちもあったのですが(おい!(いや、わかってたっちゃわかってたけどね))、そうじゃありません!
冒頭にも書いたとおり、各自の専門分野を深めつつ、学際的/多様性の高いチームをうまくマネジメントしてクリエイティビティを解放したり、イノベーションを促進する人材を育成する、みたいなプログラムです。なので必修はどちらかというと後者のマネジメント面を混ぜて困らせながら学ばせるみたいな要素が強いです。
UXデザインとかコーディングみたいなスキル系を学べる授業もあるし、取れるのですがあくまで修士課程なのでゆるふわ入門、一からやってみよう〜みたいな感じではない(シラバスで発見してもバチェラー用だったりする、そりゃそうか)のでその辺は本当にやりたいなら専門のスクールに通うか自分で勉強するしかないよなあ、と逆に納得した感もあります。
また、これは同級生か教授と話してて気づいたのですが、学部やファーストキャリアで(又はそこそこのキャリアを詰んで)自分の専門領域に対して「あー、これ向こう何十年やるのキツいわ・・・」or「新しいことやりたいな」と感じたデザイナーやエンジニアがクリエイティブ、テクノロジータグのついたマネジメント人材として労働市場に出るための(リカレント)プログラムみたいな側面もあります。その点はもしかしたら大学で何を学んだかをそこまで問われない日本の採用戦線とはやや毛色が異なるのかもしれません。社会人経験を持って留学、経験者として労働市場に戻る方には大いにありそうですが。
◯◯が予想外に学べた、という気づき
スキル面:
様々なプロジェクトの中で、だいたいチームにデザイナーがいるので、ピッチのスライドやポスターのデザインなどをデザイナーがやってくれがち、そしてクオリティが高い。それ自体ありがたいことなんですが、たまに「俺やるよ!」と拾ってチームのデザイナーに相談しながら(といいつつ指導してもらう※)、自分で手を動かしてやってみると、めっちゃ初歩的ですがFigmaやCanvaで必要に応じてそれっぽいヴィジュアルを作ることができるようになりました。
スキル外の面:
逆に自分が精通している、というか体に染み込んだ直線的なプロジェクトマネジメントや、リーマン的な根回し能力(一部ではnegociationと呼ばれるらしい)は、アートスクールを卒業して職業経験のないチームメイトには新鮮だったらしく、年齢も国籍もバックグラウンドも違う同級生と相互に学びあえた体験は(自分は)「誰とでも共創できる」「誰からでも学べる」という感慨というか自信を得ることにつながりました。それをフラットなチームにおいて、その一員として「チーム全体」に広げることはとても難しく、できませんでした。それでも、その難しさから得る洞察もあったりなんかして、またいずれマネージャー的な立場にたった時に活かせる経験だと思っています。
あとは、弱い英語、職業上の肩書を剥がされた一学生という立場、若見えするアジア人、というのを総合して、日本で中年のおじさんをやっているときに比べて圧倒的な「弱さ」を感じられたことがよかっと思っています。たぶん、あのまま垂直的な日本の官僚機構の中で過ごしていたら無自覚なままに年齢とともに自分の立場は「強」くなっていくばかりだったと思うので、圧倒的な「弱さ」を感じる環境にこのタイミングで身を置けたことは、自分の他者や社会に対する共感力/想像力を保つ点で本当によかったと思います。