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毎日連載する小説「青のかなた」 第4回

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「そのようです。パラオの風景なんて、写真や動画でいくらでも見られるっていうのに、どうしてそうなるのか……」

 と言いつつも、はるの頼みを断れなかったのは光の方だ。小学校の頃から大人になるまでの期間、光はほとんど祖父母に育ててもらった。幼い頃からそばにいてくれたはるの頼みを、どうしても無下にできなかったのだ。
 運転席のレイは何か考えるような顔をしていたが、やがて「うーん」と口を開いた。

「もしかしたら、おばあさんは単純にパラオの景色を描いた絵が欲しいっていうわけじゃないのかも」
「どういうことですか」
「おばあさんにとって、パラオはふるさとみたいなものでしょう。自分の大好きな場所が、孫の目にどう映るのか、見たいのかも」
「私の目に、パラオがどう映るか?」

 車の窓から外を見る。光にとっては見知らぬ場所だが、はるにとっては思い出深い、しあわせな記憶の残るふるさと――。

「今のところ……真っ暗な山道しか見えないんですが」

 正直に答えると、レイはおかしそうに笑った。

「そうですか」

 空港のあるバベルダオブ島からコロール島に移ると、外の景色も大きく変わってきた。何かの商店やレストランらしい建物が並んでおり、その前の歩道を人がちらほらと歩いている。さっきまでは人の姿をほとんど見かけなかったのに、ここは明るくて、にぎやかだ。

「ここがコロールのメインストリートです。パラオでたったひとつだけの繁華街」運転席のレイが言った。

「レストランもスーパーマーケットも、それからスーベニアショップもこのエリアにあります。明日はスーが休みだと言っていたから、ゆっくり案内してもらうといいですよ」 

 繁華街を抜けると夜道はまた静かになった。といっても空港を出たばかりのときのような山道ではなく、明かりのついた民家が並んでいる。住宅地のようだ。いくらも走らないうちに、レイはとある民家の前に車を停めた。

「ここが、今日から光さんのホームですよ」

 白いコンクリート造の二階建てだった。一階部分はガレージになっており、車が二台駐まっている。レイはアパートの前の空きスペースに車を停めると、スーツケースを運ぶのを手伝ってくれた。外階段を昇ると扉があり、レイはそれを拳でノックした。

「スー、僕だ。光さんを連れてきたよ」

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