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横に移動するエレベーター

誰しもよく見る夢、というものがあるとおもう。
高熱のときの、ネオンカラーの曼荼羅のような模様が迫ってくる夢。建設途中の建物の中に、たったひとりで立ち尽くす夢。

幼い頃からわりとよく見てきた夢がある。それがタイトルにした、横に移動するエレベーターの夢だ。
基本的な要素としては、幼い頃住んでいた古ぼけた団地の青い扉のエレベーターが、なぜか縦ではなく横に移動し、自分がどこにいるのか分からなくなってしまうという筋書きである。同じ団地に住んでいた年上の男の子から、このエレベーターは横にも動く、という話を聞かされたのがこの夢の元になっているような気がする。もしかすると夜に見る夢は、昼間に聞いた話から生成されるのかもしれない。

それで、先日とても久しぶりにこの横に移動するエレベーターの夢を見たのだが。これまで見たどのエレベーターの夢とも違っていたのだ。

まず、エレベーターではない。いや、形状はエレベーターのそれにたいへん似通っているのだが、エレベーターの箱の上にワイヤーが通してあって、そのワイヤーを伝って街の上空を横移動しているのだ。さながらみなとみらいのエアキャビンのように。これまで見ていた夢では、エレベーターは建物の中にあって、通常の「縦に移動する」エレベーターのように薄暗い空間を右へ左へと動いていた。

街の上空をワイヤーで移動するエレベーター(のようなもの)は、古ぼけた百貨店の屋上から屋上へとひとびとを運んでいた。そこにはセピア色の写真で見た屋上遊園地があって、にぎわっていたような、しかし誰もいなかったような、不思議なざわめきがあった。

という夢を、驚くほど記憶する能力の乏しいわたしがもう2日以上も覚えていて、なんだかとても怖くなったのでここに書き留める。

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