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遠方之友

友が無いブログに記すその夜の夢に現る亡き友笑いて

友が無いブログに記すその夜の夢で出かける亡き友との旅

またひとり近しき人がいなくなる世の喧騒が静まる一瞬

憂きことも嬉しきことも悉く十年経てば只笑い事

はっきりした夢だった。あるいは夢を見た直後に目覚めたというだけのことかも知れない。自分はバリ島で遊び、現地にあるゲームメーカーで新作のゲームとかアミューズメントパークの体験をして何事か意見を述べるというような仕事の後、ロンドンへ行く。空港から街中へ向かうヒースローエクスプレスの車内で数年前に亡くなったはずの友人を見かけて話しかける。互いの近況を話し、彼の今のことを尋ねるが、なぜか話しにくそうだ。「取締役ロンドン支店長とか?」と言うと、満更でもなさそうな様子だ。電車が駅に着く頃、「いやそんなんじゃなくて、デコボコで大変なんよ」とにこやかに答えた。「デコボコ?」とその意味を問いながら、下車する人々の動きに合わせるように立ち上がった時、そうか夢かと気がついた。夢の中ではあったけれど、彼が元気そうでよかった。

夢の中に出てきた彼が亡くなったのは2016年9月のことだ。彼が亡くなったことを知ったのは10月初旬のこと。ちょうど旅行で京都にいて、三年坂のイノダコーヒーで妻と昼食をとっている時に友人から彼の死を知らせるメールが届いた。彼は京都の出身で、大阪在住だった。旅行から帰って、早速彼の奥さんにお悔やみの手紙を書いた。彼と最後に会ったのは2012年2月4日土曜日だ。私は失業中で暇だったので、就職活動も勿論していたが、暇に任せて遊び歩いていた。広島に行ったことがなかったので、2月1日から広島に遊びに行き、東京へ帰る途中に大阪に立ち寄って、彼と晩飯を食べた。その時のことを手紙に書いた。

私の頭髪が薄くなっているのを見て、彼は「ずいぶん薄くなったな」と言うので、私が「そうなんだよ、去年の原発事故の所為でさぁ」と答えると「えっ、ホンマ!」と真に受ける真面目な奴でした。

なんてことを書いた。奥さんからは丁寧な返事が届き、いまだに年賀状のやり取りが続いている。

ここに記した四首は角川短歌に昨年11月に投稿したもので、昨日届いた2021年2月号を開いたら落選していた。

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