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The Model と Post COVID

普段、コンサル会社で、BtoB企業のマーケティング変革をお手伝いする会社のコンサル部門長をしているのですが、今回の新型コロナウイルスの一連のビジネス面へのインパクトを見ていて少し感じることがあったので執筆してみます。

The Modelとは

世界No.1 CRMベンダーのSalesforce.com (ティッカーシンボル:NYSE CRM)の営業モデル。世界一の会社が自社ツール使って世界トップレベルの伸びをしているのでとても説得力のあるモデルです。

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(Salesforce.com Websiteより)

最近だと、元マルケト日本法人代表でジャパンクラウドに移られた福田さんが執筆した同タイトルの本が有名です。私もサイン本持ってます(照)


そのThe Modelはというと、その福田さんがオラクル→セールスフォース本社に入社し、日本に支社を作るときに作り出しているものです。

内容をざっくりまとめると、
- 販売プロセスを紐解き、分業することでちゃんと指標で管理する。
- それによりボトルネックの部分に適切な打ち手を打てるようにする

製造分野だとザ・ゴールが有名ですが、営業版ザ・ゴールを作りたかったと著書にも書かれています。
この本はまたたく間に世に広まり、The Modelを自社に作るぞ!というイニシアチブが数多く生まれているみたいですが、うまく行かないからなんとかコンサルしてくれという話もそれに比例して増えています(苦笑)

そのあたりのWhyを紐解いて行きます。

その1:そもそもベースが違う

福田さんが講演等で言っていてポイントだなと思ったのが、「これ真似てそのまま実装しても、会社ごとにビジネスモデルも状況違うからうまくいくわけじゃない。」ということなのですが、多く売りたい編集側からするとそんなこと書けるわけないので、本からは残念ながら読み取れないですね。

セールスフォースは世界No.1のCRM製品で、今はラインナップも広いですが、元がSales CloudのSFA分野がメインだったので売るメッセージもわかりやすい。また外資系でベースサラリーも高く、優秀な人も多いので機能するところはあると思います。その後設立したマルケト日本法人もそのセールスフォースから結構優秀な方移っています。また、MAの製品自体、コンセプトを浸透させるのは難しそうですが、メッセージ性はシンプルです。(私はインプリの資格持っているのでそう感じるだけかもしれませんが)

というような、外資系 x 成長市場 x 強い製品 x 明確なメッセージを持っている、という前提にある中で(コンセプトの浸透は大変だったと思いますが…)作られているのがこのモデルです。

一方で、例えば(仮の話です!)飽和した市場にある企業で、製品の明確な差別化が見当たらない、販売組織も基本がルート営業で、お客さんに言われたことを受けてくるのが主業務の営業組織があるとしましょう。

そんななかで分業して、無理やりスキル定義し、新規取ってフォローして、クローズして、サポート入れて、そんな体制いれてもうまくいくかと言われると。。不要不急なのでこれ以上の言及は自粛します

その2:ゼロから作るか、あるものを変えるか

これが一番大きい気がします。The Modelうまくいっている会社は、ベンチャー企業が多いイメージです。まだ型が完全にできていない・新しい取り組みにチャレンジする土壌で進められると、柔軟に動きやすいのかなと思っています。(割と勝手な考察です)

ただし、古い体質の日本企業は基本的に営業天下です。そのプロセスを紐解いて、「はい君の範囲は今日からここだけです」というのはなかなか厳しい。会社的には正しくても、今までのスタイルが通じなくなるのは担当レベルもそうですがマネジメントも首を縦には振れません。

あと私自身も元営業ですが、何やっても否定するめんどくさいおっさんがいてゴホンゴホン。

それまで、
a. 自分で自分で時間を見つけてドアノックで開拓
b. 案件なりそうだったら、何度か通う
c. 運が良ければ案件化して受注
d. 特に要がなくても「営業は客先にいくものなので」受注後もなんとなく話聞きに行く

という文化が染み付いていたのを、4つに紐解く。かつ役割を分担する。
役割を分担するということは、4つの組織ができ、つまり4人の部門責任者ができることです。力関係だとか社内の政治的しがらみだけでも大変なことになります。

その3:非対面の壁

The Modelのキモになるのは営業の非対面化です。

マーケ・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスに分解していきますが、特に(デジタル)マーケ・インサイドセールスに関しては、販売プロセスの中でも非対面化が求められ、新しいことへのチャレンジでスキルがついてこない面もあります。

これは売る側の視点ですが、顧客視点の話に立ちます。
いわずもがな本家のアメリカだと国土が広いです。昔私が経験した例だと、顧客の現地市場調査でアメリカ出張中、アポとれなかったのもありますが、隣の顧客いくのに州をまたいで車で3時間走りました。そのため、非対面で営業する文化が、する方も受ける方も根付いています。

一方で日本だと対面がベースで、特に小さいお客様になればなるほど「アンタから買ったんだ」みたいな例が出てとても電話で済ますみたいなのができなかったりします。日本人の30%以上が65歳以上ですしね。

また、これは営業、顧客両方に言えることですが、非対面時のビジネス会話・プレゼンテーション、するのもされるのも日本人は苦手な気がしています。

例えば、日本だと会議のときにエクセルの印刷を用意して、同じものをスクリーンにも写しながら、ポインター使ってここの話をしています、みたいなことがあったりします。

一方で、海外系の部署の人はわかると思いますが、海外の人と会議すると資料も何も見ないで、この数値は昨対比**%で全体的に見ると…みたいな話をバーっと怒涛に話し始めます。
(英語がおぼつかない中で会議に出ると、えっと14K USDは日本円でいうと、、とその数字を理解しようとしている間に次の議題に移っていて死にます)
なお弊社も外資系ですが、社内の部門長会議とかは、資料なんてほぼ用意しないで口頭で会話してコンセンサスとって終えることが多いです。

After COVIDで何が起こるか

今、日本でもリモート生活が強いられつつあります。話を聞いていると、対面の営業訪問お断りという例も増えているそうです。

この事象、非常事態宣言のあと一ヶ月とかじゃなくてしばらく続くと思われます。その中で、顧客も「リモート慣れ」をしてくるので上にあげた3つ目の点(非対面の壁)に関しては徐々にクリアされていくと思っています。

危機のたびに強くなる日本企業、今回でもキャッシュフローの重要性を再度感じますが、筋肉質な体質を目指すべくスリム化する流れは進むと思います。

トップの想いは基本的にトップライン(売上)・ボトムライン(利益)をどう良くしていくか。トップはまさに売上=数量x単価の最大化、ボトムは効率化によるコストダウン。これらを追い求めるのは急務になります。

その中で営業版ザ・ゴールであるThe Modelは再度注目されるでしょう。
とくに、営業の数をバンバン増やして、というフェーズはベンチャーを除いてあまりないと思うので、効率化を進め、営業のヘッドカウント数を維持した上での売上向上が求められるからです。

The Modelは営業活動の可視化とBCPの文脈込の非対面化の加速が大きい要素。効率化にはもってこいです。

いくつか変革プロジェクトに入っていますが、営業マンの工数を紐解くと、移動時間と打ち合わせ時間にかける時間は一日でも結構かけている例が多いです。例えば、非対面化で無駄な顧客との打ち合わせと移動時間を減らせたら…。また、適切な人間をおいた分業制でさらに効率化ができたら…

確実に余剰人員が生まれてくるでしょう。

また、分業化により求められる役割が明確になり、必要なスキルも明確化されます。またそれまで曖昧だった「成果」が定義化され可視化されます。
なぜなら営業は評価者が社内+社外と2軸あるからです。
社内の必要なことを何もしなくても、売れていれば正義だし、売れていなくても社内で何故か評価されれば謎に出世する生き物なので、成果がファジー(言いたかっただけ)な側面が強いです。

そんな変化に適応できずに成果が出せない人は、その余剰人員のカテゴリーに入り、スリム化の対象になるでしょう。

結果、AIより先に隣の部署の人間に仕事を奪われます。

一方で、雇用が流動的ではなく新卒一括採用、給与も横並びな日本企業(私は日系企業の賃金体系は共産主義と同義だと思っています)では、分業時の課題も大きいです。

例えば、私はこれまでの経歴が全部上であげた部門の要素あるので、Linkedin経由で全種類の役職における求職の紹介が来るのですが(ALL外資)、明確にサラリーのテーブルが違います。

究極同じ職位(マネージャー・ディレクター等)でも、行く部門でインセンティブ入れると2倍くらい年収変わったりするので、分業によりスペシャリストが増えていくと、更に優秀な人材の確保が難しくなるかもしれません。そうするとそもそも各職種の職能こなせる人がいないので分業うまくいかないかも(?)

キュアリアパス、採用の仕方、給与テーブル全部、人事領域にも入ってくる壮大な話で、企業変革と位置づけるレベルの事案です。

そんななか我々個人にできることは何でしょうか。
特に法人営業をしている人は、「これから変わっていくという自覚」をもつことは大事ではないでしょうか。じゃあ具体的にどうすればいいか?という相談は友人には乗ったりしますが、パブリックな場で無責任なことは言えないので人材会社の人に相談することをおすすめします(急に尻すぼみ)

つらつら書きましたが、The modelは企業変革レベルの事案。昨今のCOVIDは日常生活に変革をもたらしています。そのなかで真摯に変革に取り組む企業様と、一緒にチャレンジしていく今の仕事は、山あり谷ありですが、とてもやりがいがあるなぁと最近感じている次第です。

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