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「#旅のようなお出かけ」企画に参加してくれた、tsumuguito さんの「一期一会の旅」を読んだ感想。

 サッカーとかの試合では、ロスタイムというのがありますが、これとあともうふたつの作品はその言葉に近いかもしれません。
 日本時間での締め切り後にいただいた作品ですが、これは複数の人でやっている企画でもなければ、賞金のかかるコンテストではありません。いわゆる個人の「ゆる企画」でした。だから問題なく受け付けます。(16時23分投稿なので、19時間の時差があるハワイなら間に合った。まさかハワイで投稿されたわけではないと思いますが)
 さて、第三十二弾目のtsumuguitoさんのこちらの作品。一期一会。これは旅先ではよくあることですが、このエピソードはちょっと違うようです。



1.語るじい様を相手する文乃

 いきなりインパクトあるシーンからスタートするこの作品。主人公文乃は、ショップの店員さんのようです。ところが客として... ...なんて人がいるもの。それが高齢者だと余計に面倒です。
 暴走老人という言葉があるように、ちょっと癖があると、相手するのが一苦労。人生を長く生きたという自負があります。今メインで活躍している人たちが、自ら動くことも声で意思疎通を図ることも困難な赤子だったことを知っているから「何をえらそうに」となるのだろう。体が日々動かなくなるといういら立ちもありそうでした。
 だからどうも厄介なことばかり言ってきます。しかし文乃は笑顔を絶やすことなく相手をして、どうにかことなきを得ました。

2.じい様の明日を考えれば

「よくあんなじい様の話の相手できますね?しかも満面の笑顔で!私、ああいうがさつな人すごく苦手なんですよね・・・」

 同僚の店員(若いパート)たちは、そういう相手をするのが本能に面倒。文乃もそれなりの年配者で、少し近いからできるのだろう。がさつな爺さんと言えばそうだけど、なぜかその爺さんを適当にあしらうことができなかった。特に80を超えるような高齢者。果たして次の日も同じように元気でいられるかがわからない。少なくとも現役の労働者である我々よりは、はるかに死に近い存在なのだ。
 そして彼らからすれば年下の私に話しかける。話をするに足る人間でもあるし、また話し相手がよそにいない寂しい人間かもしれません。

 まあ、こういうことは現実にありえそうですし、この文乃さんがいなければ、若いスタッフが相手をしないといけない。ここまでズケズケと者は言わないかもしれないが、代わりに相手してくれているのだから本当は感謝しないといけないんでしょうけれど。そんなこととか感じました。


3.バス停の道のりは通勤風景だけど

 さて、そんな文乃は娘を育てながら忙しくて仕方がありません。休日だってすることが多いもの。まあたまにはと、映画鑑賞やジャズバーでウイスキーを飲むことだってあるけど、本格的な旅はしない。 
 でも知っている。日常にだって旅のような楽しみ方があると。例えばバス停までの道のりを少し変える。別の道を使ってバス停を変えてみるだけでずいぶん違うもの。草花や畑の作物も違えば、すれ違う人、あるいは彼らと共に散歩している犬だって違うのだ。
 その都度、例えば里芋の乗った朝露ひとつだって違う。それを見て心が揺れれば即撮影。そんなことはスマホに限らずフイルムカメラの時代からやっている。

 その一瞬一瞬が「一期一会」として旅のようなお出かけに違いない。

4.と言いつつも遠方に行けば楽しい旅行に間違いない

 でも最後に本音らしきものがちらっと出てきます。仮に電車の乗ったらどうだろう。それはバスのような通勤経路とは違った本格的な旅行だ。そんな日になれば当然高揚するものが違う。だから同じカメラを向けるにしても違うのだ。文乃はそんなことを考えながらまた日常に戻るだろう。そしていつもの一期一会。たまにはもっと遠くの一期一会を楽しめるときを待ちわびながら。

5.もし私がこの小説書いたら?

 そうですね。前半のじい様とのやり取りが際立ちすぎているので、後半のバス停との往復時も一期一会のおでかけといったところに、付け加えても面白いのかなと思います。

 例えば、

 あんなじい様とのやり取りがあった3日後、いつものようにバス停を歩いていたら、あのときとそっくりなじい様が歩いていた。そのじい様は私のことには気が付かず、何かの花をゆっくりと眺めている。
 遠くから見るとあれ?メモ用紙と鉛筆? 何かを書いている。あ、そうか花の絵を描いていらっしゃるのか。あのときのとげとげしいさ、がさつさがみじんも感じられない。爺さまって本当はこんなに心優しい人だったのか。でも文乃は声をかけるのをやめた。爺さまの別の顔が見えただけでも違った一面。そう、これもひとつの一期一会なのだから。

とか入れてみたいですね。

まとめ

 じい様とのやり取りも一期一会、バス停との往復も一期一会、そして電車での塔でも一期一会。すべての瞬間が一期一会であるということを気づかされた作品でした。毎日の生活が旅というのは人生そのものを旅と考えたときに成立する。でもより非日常を求めるから旅に出るのだと。
 それは楽しい。それでも普段から旅のような気分になれる気づきがあったらもっと楽しいはず。そんなことを考えさせてくれる作品でした。


募集は終わりましたが、企画参加してくださった方の作品を集めています。よろしければご覧ください。


第一弾が販売されました。

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