「#旅のようなお出かけ」企画に参加してくれた、宇佐美真里さんの「秋の遠足 -栗拾い-」を読んだ感想。
9月になったとはいえ、昼間はまだまだ暑い残暑。10月ごろまで続けば急激に冷え込みますからもう四季ではなく、夏と冬の二季ではと思うことがしばしばです。でも9月から11月だから味わえる秋があるのは確か。
第16弾目の宇佐美真里さんは、「秋」を意識して9月になるのを待って企画に参加してくだいました。お出かけ先は遠足の栗拾い。季節が感じられるお出かけですね。
1、バスで行く遠足が苦手
○○の秋という言葉があるように、何かをするのに秋の季節は良いといわれています。もちろんお出かけも秋にするのが最適。小学校でも秋の遠足として、秋の味覚の代表格「栗拾い」を計画します。
主人公の小学生・チバ君もそういう遠足に同行します。でも本音はバスが苦手。実は私も子供のころはバスや自動車は苦手でした。乗り込んだときのガソリンの匂い。それが混ざった冷房臭にどうしても弱くて、それを吸い込むだけで気分が悪くなります。長時間乗ると本当に戻すこともありました。(しかし、なぜか鉄道は平気。電車はもちろん、ディーゼルも問題ありませんでした。大きな揺れがなければ船もOK)。
やがて成長とともに、そのようなことが完全になくなりました。それはもかくもう一人の主人公といえる、サクライさん。彼女は本当に苦手です。気分が悪くなれば、そういうことがよくある見込み。今回のバスでは乗り物酔いをするふたりが並ぶという展開です。
2、栗拾いにチャレンジするけど
そしてチバ君よりもはるかに乗り物が苦手なサクライさんは今回もひどい状態。だからせっかく現場に到着したのにバスに下りずに休憩するといいます。(でもこれ本当は間違い。経験上乗り物で苦しくなったら、バスから出て外の空気を吸えば、体調が素早く戻せる可能性があります。中にいると残留するガソリンとエアコン臭が厳しくて)
チバ君は他の児童と一緒にバスから出て栗拾い開始。イガのとげがついたまま投げたり、隠れている毛虫で遊んだりと、栗拾い会場では小学生らしい遊びで大盛り上がり。このあたりが情景がよく見えていいですね。
もちろんチバ君も、他の児童に負けじと多くの栗を手に入れましたが。
3、バスに戻ってふたりだけ
ここでチバ君は、バスに残ったサクライさんを気にかけます。バスでは運転手とガイドが世間話。光景が浮かびますね。戻ってきたチバ君を気にかけるふたりは、気にせずサクライさんの席へ。
「バスの中じゃ、つまらないかなぁ~と思って…。
せっかくだからクリいっぱい拾って来たよ?!」
そう言って、ボクはかかえていたクリの袋を差し出した。
幼心に淡い恋心が芽生えたか、優しいですね。本当は大好きな栗を、「好きじゃないと」いって差し上げるのですから。そういいつつもどうやら顔の色は正直だったようで、下を向きながら赤くなります。でもそれがサクライさんには良い方向に行きました。必然とサクライさんの表情が明るくなります。
4、栗よりも素敵なポケット中
そして遠足で手に入れる予定だった栗は、サクライさんにすべて渡しました。だから母親に半ば呆れかえられた。でもチバ君はそのようなことはどうでも良かった。そうポケットの中には「栗のお返し」にと、もらったものがあります。
そのものも好きだけど、それ以上にもらったサクライさんとの些細な思い出。それ以上に、恐らくは大人になっても記憶に焼き付く素敵なお出かけとなったのです。
5.もし私がこの小説書いたら?
そうですね。せっかくバスが苦手という設定があるので、そこをもう少し詳しく書くかもしれません。たとえばサクライさんが、動けなくなるほど気分が悪くなったので、行きのバスの時に「ウグッ」と体を前かがみに手を口につけてついに戻しかけてしまう。
チバ君は慌てて手持ちの袋を差し出し、最悪の事態を回避する。このときのサクライさんに礼を言う余裕はありません。そしてバスが到着して栗で遊んでいるクラスメイト(たとえば本文で登場するマツイ、タケシあたり)の中には「サクライ、あいつ吐いたんだって」「ウソー!だから途中から臭かったのか!」と、心無いことを言いだす。それを聞いたチバ君が心を痛め、そして怒りに満ちます。無意識のうちに彼らに突きかかって、先生に止められる。それでバスに戻る。そんなシーンを加えてみたいです。
まとめ
バスの乗り物酔いというのが、ストーリーのメインということもあって、自分自身の経験を思い出すような内容でした。(思わず実経験まで少し話をしてしまいましたが)そしてそれ以上に恋心を感じた主人公の心意気というのがいいですね。
栗以上の思い出という、素晴らしいお土産をもらったといいますか。彼にとって生涯記憶に残るものとして、大人になってからも実のなる栗を見るたびに思い出してしまう。そんな素敵なエピソードになってほしい。そういう風に思いました。
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