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「#旅のようなお出かけ」企画に参加してくれた、古畑 時雄(Tokio Furuhata) さんの「小江戸ぶらり珍道中」を読んだ感想

 いよいよラストスパート。まだまだ間に合いますから思い切って最後にこの企画にチャレンジされる方を歓迎します。感想記事のほうもペースアップ。

 さて、第23弾は古畑時雄のこちらの作品。川越へのお出かけが舞台となっております。ところなんと、五話の連続シリーズ。さすがにすべてをリンクとして貼るのは大変なので、第一話のみを張り付けさせていただきました。一話に飛べば二話以降にリンクが張り付いていますので、そちらからご覧ください。


1.金田家にかかってきた電話(第一話)

 主人公は東京・大塚に住む金田家のご夫婦。江戸っ子気質の夫、勝治と妻・信子のふたりです。一人娘はすでに嫁いでいますが、その嫁ぎ方が気に食わない勝治とは距離ができてしまいました。
 昔ながらの八百屋を継いでもらえなかったことが悔しいのです。そんな娘からの電話は娘夫婦のところへのお誘いでした。その内容は銀婚式のプレゼントだという。25年の記念をお祝いするとなれば、気に入らねえ娘夫婦とはいえ、会うことを承諾。まずは服装チェックから始まるなど、何やらあわただしいお出かけの予感。

 勝治は典型的な頑固な江戸っ子ですが、その不器用さというかそういうのが物語からにじみ出ています。

2.目指すは小江戸・川越(第二話)

 娘夫婦は、小江戸として名高い川越で宿屋を経営しています。若い夫婦の宿屋はどういうものか、書いていないのではっきりわかりませんが、恐らくは夫婦でのんびり経営しているゲストハウスのようなものではないかと想像します(違っていたらごめんなさい)。
 大塚から池袋そこで乗り換えますが、バームクーヘンのお土産。頑固な勝治はこのようなことにもケチをつけますが、四半世紀も一緒に生活している信子はそのあたりを軽くかわし、孫が洋菓子派だからと説きます。

 どの家庭もそうですが、孫という存在はやはり大きく、勝治が最も頭の上がらないことは間違いない見込み。そんな彼に間もなく会えるのです。
 とはいえ、西武沿線の風景をながめるふたり。都会から郊外へ、少しずつ変わる風景を見るのは旅、そしてお出かけをより楽しくしてくれますね。

3.若殿・俊太には頭が上がらず(第三・四話)

 さて川越に到着しました。ここで登場するのは娘婿の長山正平。信子の前では否定的な反応をする、勝治ですが、ここは大人の対応で、孫の俊太を喜ばそうとします。妻信子は黙って「貸し」としてそのままにし、あとで返してもらうと算段。
 こうして鰻割烹の店に案内します。ここで若夫婦は、若干の距離がある勝治と少しでも近づきたいと思ったのでしょうか?鰻こそが彼の好きな料理。これは、単純に口癖を覚えていたからであるが。

 そして大好きな孫を「若殿」として肩車にのせて堂々入店。勝治はここからは、俊太を「殿」と呼んで機嫌をとります。事前に予約、用意されていた鰻をみんなでいただきます。割烹の鰻御前、さぞかしおいしいのでしょう。読んでいるだけで、頭の中に鰻の味や情景が浮かんでしまいました。

4.ジャケットの色に込められた意味(第四・五話)

 殿こと俊太と、どちらかわかりませんが、若夫婦の運転手を除いたメンバーは、昼間からビールで乾杯。こうして美味しい鰻をいただく、滞りなく食事を楽しみました。さて、いつもの八百屋の格好とは全く違うジャケットを着こんでいた勝治。それを見た娘・美穂が次の言葉を発します。

「お父さん。 ひょっとしてそのジャケット……川越の芋をイメージして着て来たの?」

 勝治は意外な言葉に思わず反論。それは本来この9月6日に開催される予定であった東京オリンピックの閉会式用であるといいます。1年延期になったとはいえ、これは有効チケットということで、来年こそはこのジャケットを着て行くと宣言しました。
 ところがそれは、妻・信子のあずかり知らぬことだったよう。このような内容にうれしさがこみ上げました。

 勝治さんと信子さんの年齢がわかりませんが、56年前に行われた前回のオリンピックをリアルに知っていたかどうか?仮に知っていたとしても年齢からしてふたりとも俊太かそれよりも幼かったと推測されます。
 こうして楽しい銀婚式の昼食会となり、また思わぬサプライズまで発表されて終了。このあと川越見学と続くのでした。

5.もし私がこの小説書いたら?

 そうですね。「金田家を出ていったもの」と考えていた、息子夫婦との雰囲気が良くなったので、そのことについて「あとがき」として加えるかもしれません。例えば孫の若殿と「菓子屋横丁」に行き、若殿が気になる菓子を探している間、
「良かったわ。久しぶりに美穂たちと食事ができて、素敵な銀婚式だったわ。そう思わない」「あ、ああ、まあな。あいつらに本当は八百屋を継いでほしいが、こればかりは仕方がねえや」
「そうそう、あなたがトイレ行っている間、正平さんが八百屋の件も気にしてたの。手始めに川越の農家さんの野菜を宿屋の店先で売って、ネット販売も考えながら、少しずつノウハウを蓄積したいとか言ってみたわ」「何?野菜を売る。八百屋を継いでくれるのか!そ・それは本当か」
みたいなのを加えてみたいですね。


まとめ

 銀婚式のお出かけ。親子間のわだかまりも解消されつつ、まさかのサプライズまで発表されるという。楽しい時間が伝わってきました。また川越までの料金の説明や鰻屋さんのことなど、川越観光の情報にもなりそうな内容。疑似トリップを楽しませてもらえる。そんな作品でした。

 ちなみに古畑 時雄さんは「二人称の愛:カウンセリング(心理学物語)」という電子書籍も出されているそうなので、興味のある方はそちらもどうぞ。



まだ間に合います。10月10日まで募集しています。
あと4日と少し。よろしくお願いします。

第一弾が販売されました。

#旅のようなお出かけ #感想 #古畑 時雄さん #小江戸ぶらり珍道中 #読書感想文

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