基準を定め厳選した、名刺代わりの10冊
つぶやきを除けば去年11月以来の投稿、そのつぶやきで漏らしたけどやっぱりnoteって良いですね。
アウトプットしたいことがあれば、毎日投稿とか気張らず戻ってこようって思えました。しょーもない前置きはここまでにして本編開始です。
大分遅れたわけ
アカウントの開設日から中学や高校ぐらいは卒業できるほどが経ちました。
やめたり再開したり、また止めて始めなおしたときに以前投稿していた稚拙な記事を見て恥ずかしくなったり。
『名刺代わりの10冊』
このタグの素晴らしさは小説好きとして理解していたのですが、丁度10冊を揃えるのは中々難しいんですよね。
厳しくしたら某『例の一行』作品のみになるし、優しくしたら20作品も30作品も紹介したいってのが出てくる始末。
別の内容の記事を書いていたところ自然と後回しになり、モチベを失って止めて、、といままで投稿できませんでした。
良くも悪くも、10ってホントよく出来た数字だと思います。(無論、悪くもの方は勝手に自爆していただけですが……)
いい感じの条件は出来たのですが……どうにも最後の一冊、自信を持って「これだっ!」って思う作品(いい作品は数え切れないほどあった)には出会えず、無駄にハードルも高くなって後回しにしていたら記事自体投稿すること無くモチベが下がり……
ってので投稿休止につながるわけですが、なんと!
最近になってようやく自分勝手で厳しい基準をこえ「これだっ!」と思う作品に出会えました。
同時にあっ、この#タグ使えんじゃんってことを思いだし、復活記念の記事にしてやろうと考え投稿させてもらいました。
全人類読めってのができあがったぞ!
……とにかく、私くまくの名詞にある本棚が空から満の表示に変わったことを心から喜びつつ、その条件とやらを提示して僭越ながら共有したいと存じます。
この10冊が満たしている条件
出会った小説作品:不明、おそらく220冊以上、全部が全部傑作だ! といえる段階は過ぎたが、まだまだ趣味としてはひよっこでどんどん新たな作品と出会いたいレベル。当たり前だが10冊には絞れない。
ここから段々と厳選を重ねていきます。条件が進むたび、既にある条件は前提になっていることをご了承ください。
条件1 最後まで読めたか
まだまだ本を途中で投げ出す勇気も無く(その結果素晴らしい読後感で終えられた作品も多い)、せっかく買ったのだから全部読まなきゃ主義なので、この程度の条件なら絞れません。
条件2 (読書日記を見ず)作品名から内容を思い出せるか
タイトルと表紙だけを見て、その内容を思い出して一喜一憂出来るかどうかです。面白くなくは無かったはずだけれど、
あれこれオチ何だったっけ?
どんな内容だったっけ?
……となってしまうことがあり、恥ずかしながら読んだんだけどオチ、内容の一片すら思い出せない、、という作品もあります。
上記のような作品もここで紹介は出来ないなと感じ、満たすべき条件とさせていただきました。
内容まで覚えているのって思っているより難しく、思ったより絞れちゃった(要改善)。
条件3 今、人へ胸を張って勧められるか
面白く、十分に不満点を超えて満足度が高い作品のことです。
人によって趣向は異なりますので、ここでは「この本どう?」と聞かれたときを想定し、胸を張って勧められるかということですね。少なくとも記事の体裁をとって共有しているんですからこれも必須条件かなと。
文頭に「今」としたのは、読了した直後でカタルシスなどがない、時間が経った現在でも「やっぱり面白かったよな」というのも条件として入れた方が良いかなと。
人へってのも大事で、自分に刺さるのは何万字もあるから刺さらないのを探す方が少ない。
おかげでまぁまぁ絞れましたけど、まだ20冊程度は残ります。ここからがどうしたもんかと唸りましたが、最後の条件をこうすることでピッタリはまってくれました。
条件4 自分の何かを変えたか、自分大賞を与えていいか
ピッタリはまったとか言いながら二つも入れてすみません。
もうここからは完全に個人の世界で、私を作っているか、文字通り「名刺」に刻めるか……といったところから偉そうに選びました。
どうか楽しんでいってくれれば幸いです。
くまくが選ぶ10冊
1.十角館の殺人
すべての元凶
忘れもしない高校2年の夏、あの場面に出会ってから人生が変わりました。読書という、大切な大切な趣味はここから始まりました。
国語は公立小学校のテストでありながら30点を取ってしまうようなほど出来が悪く、本なんて大っ嫌いで屁理屈しか喋れなかった私を変えてくれた作品。実用書や教科書も簡単に読めるようになり、どれだけ感謝しても仕切れません。
『十角館の殺人』のあの場面に出会えたことは、「女手一つで大切に育ててくれた、世界で一番尊敬する母親の元に生まれたこと」の次に誇りに思っていることです。
流石の名作ですのでこの文言も不要かと存じますが、もしもまだ未読の方がいらっしゃれば、どうかネタバレを見る前に一読をお願い申し上げます。
2 暗黒館の殺人(四)
全ミステリー小説部門・シーン大賞
一作品目で紹介した『十角館の殺人』より始まる”館シリーズ”屈指の巨編で、文庫本にしてなんと4冊もあります。
館シリーズは上記の通り思い出深いシリーズで個人的に外れは存在せず、どの作品も驚きと恍惚の狭間にいるような感覚を最後には味わい続けました。
満を持して本作品に手を出そうとしたのですが、シリーズの順番でいうと『暗黒館』の前に当たる『黒猫館』を読んでから少し間が開いてしまったんですよね。
理由は簡単、長すぎるから。
2,600頁あるとか。いや読めるかいと。
でも折というものはいつか訪れるもので、ついに読み始めました。当たり前ですが当時はまだまだミステリ初心者。百鬼夜行の百の字もしらないひよっこです(百鬼夜行シリーズで検索!)。当然時間はかかりました。
しかし今、その読んだ何倍もの時間が経とうとも、私の中の十冊にとどまり続けています。
その理由は『暗黒館の殺人(四)』の第五部のラストである346頁。そこは私が読んだミステリ小説の中で一番大好きなシーンだからです。
なんで尻込みせずもっと読んでおかなかったのか、なんていう後悔すらありません。辿り着いていただいた方なら納得していただけると思いますが、時間をかけること自体にも意味があったからです。
十角、水車、迷路、人形、時計、黒猫。
スマホやテレビ等々やることが沢山ある中、辿り着くまでの道のりは本当に長いです。
しかも、本作品は賛否両論寄りで本を投げたくなるかもしれません(無論、その中で賛の人間だからこそここまで刺さった)。
でも、どうか辿り着いてほしい。その価値は 絶対 にあります。
あのシーンは本当に「ずっとお前のことを……」とかごちながらボロボロ涙を流しました。
私はここで待っています。館シリーズを順番通りに、是非。
3 硝子の塔の殺人
あっ、全部のミステリー小説読んだろ
十角館の殺人があっても、この作品が無ければここまで読書を好きになっていなかったと思います。
論理的な解決、、かと思われたら——っという本格ミステリのお手本のような作品で、ミステリ小説を含め読書を始めたての方に読んでいただきたいお話になっています。
大分読んだ今だとおそらくこの位置には入ってこない気はしますが、作中で随所に顔を出す作者の「ミステリ愛」が無ければこの先の読書人生も絶対に待っていなかったと断言できる傑作です。
4 六人の嘘つきな大学生
活字で、初めて腹の底から泣かせてくれた。
おそらく名刺代わりの作家10名とかあれば最初の3番目以内には必ず入ってくる、今最推しの最高傑作と呼び声高い作品になっており、例に漏れず。
後半、とある人物の告白を聴き、私もようやくドラマや映画などで手紙を濡らすシーンバリに単行本を濡らしました。
あっ、物語で泣いていいんだ。全く恥ずかしいことじゃないんだ。
今でこそ逆に泣いちゃだめ、それは恥ずかしいと思っていること自体が恥のように視野は広がりました。
しかしもし、この作品と出会っていなければ未だにそんな古くさく脆い考えの中にとどまってしまっていたかもしれません。
これ以来、普通に感動すれば普通に涙が出るようになりましたし、感受性が上がって絶対QOLとかも上がったと断言できる、感謝しても仕切れない作品です。
5 世界で一番透き通った物語
トリック部門大賞
こちらも大きな話題となった作品で、ミステリ作家だった主人公の父が描こうとした幻の遺作『世界でいちばんすきとおった物語』を探す物語なのですが……
何でしょうね、本当に「透き通る」んです。最後に。
最初に紹介した十角館以降、どんでん返し系の作品にはたくさん出会ってきました。本を投げたくなった作品も多々あります。
そんな中、このどんでん返しがただのトリックに終わらず、作品の主題と共に示され、電子書籍では絶対に不可能な施しとした上で、極めつけにアイデア一発作品にありがちな結末のために途中は面白くないという不可抗力な現象すらも最小に抑えられている作品はこれを除いてあるのか……
と、読み終わった後はこの衝撃に3日ぐらいは油断するとこの作品のこと考えてしまうレベル。ネタバレ前に読めて良かった。
少なくとも結末の衝撃、及び読後感でこの作品の右に出るのには未だ出会っていません。いつかは出会うと思いますが。
未読の方はネタバレ・レビューを読む前に。
6 エレファントヘッド
絶対に思いつけない、作者は頭おかしい部門大賞
「死にゲー」といわれるゲームジャンルをご存じでしょうか?
簡単に言えば、クリアまでが難しく何度も死んでやり直すことでたった一度のクリアを目指すゲームジャンルのことです。
そしてそれにも二つパターンがあって、一つは主人公の能力が変わらず、純粋にプレイしている自分が、地形や敵の攻撃になれてクリアしていくパターン、
もう一つはゲームオーバーになる度に自分が強くなって、敵やステージに対抗できるようになるパターンです。
体感的には前者の作品が多いですが、今回は後者を使って自分が人生で死ぬ度に何かしらの能力やスキル、ステータスを引き継げるとします。
2週目は1週目の何かが、3週目にはさらにプラスで何かが付与されているわけですからチートですよね。記憶とかにしてしまえば文字通り人生の2週目を歩めるわけですし。
ようやく『エレファントヘッド』の話に戻るわけですが、多分上記の条件で100週ぐらいやり直しても作者には追いつけないと思うレベルで頭のおかしな作品です。どうやって思いついたんだと。
この事件()の真相が端的に語られている図(物語の最後で提示される)を見て爆笑しない人いるんですかね?
少々グロく人を選びますが、胸を張ってこの場所に入れられる作品です。狂い度でいえば同レベルの『名探偵のいけにえ』も同じ作者様とのことで、いやはや恐ろしい限りです。
奇書を読めばまた変わるかな?
7 medium 霊媒探偵城塚翡翠
最高の主人公大賞!
作品の素晴らしさは前代未聞の5冠を獲得していることもあって自明ですが、私は何より殺人を許さないという確固たる価値観を持ち、精一杯頑張る翡翠ちゃんが大好きです。
活躍も城塚翡翠シリーズが進むたび顕著になり、彼女の幸せを願わずにはいられなくなりました。
すべての小説の中で推しを訊かれれば、沢山いて迷うことこそあれ最後には彼女になるかと存じます。
8 をんごく
読後感部門大賞!
ホラー小説新人賞3冠の傑作は文句のつけようがありません。
やはりホラー小説ということもあり、道中はまぁ怖いです。
活字は映像やゲームのように音で驚かせることも出来ません。
……にもかかわらず鳥肌が立つのってやばくないですか? もちろん挿絵は一枚もありません。
そんなこんなで何度も顔を伏せそうになりながら辿り着いたエンドマークでは、かつて無いほど胸が熱くなり、最高の読後感で終えられていました。
時は大正、場所は大阪。主人公が知るたった一つの真実を、勇気を出してご覧いただければと存じます。まだまで有名ではありませんが、読後感はこの身に誓って保証します。
9 かがみの孤城
一生の中でいちばん読んだ本
言わずと知れた、本屋大賞史上最多得点受賞作です。
学校に行けず、ままならない日々を過ごしていた5月のある日、部屋の鏡が光って、その先で出会う仲間達と「何でも叶う鍵」探しが始まり……
愚かなことこの上ないのですが、私の逆張り病が猛威を振るって中々読めずにいた作品です。いやあ本当に愚か。
よってミステリ経験値の方が少しは溜まっていまして、読んでいる途中で「こういうオチなのでは……?」
と予想し、見事に当たった! ……かと思いきや、この本の一番伝えたいことと共に示される、3転4転の大どんでん返しにはどれだけ拍手を送っても足りない傑作となりました。
これを読んだのが大学1年の冬でしたが、もしも中学生の時に読んでいれば間違いなくこの作品から読書にはまったと思います。
これまた既に読了済みの方も多いかと存じますが、まだ未読の方は是非。
10 コンビニ人間
ようやく揃った10冊目
最近読み、上記の9冊と共に大きな衝撃を与えてくれた作品です。唯一ミステリ、ホラー要素の無い文芸作品で、私もようやくこの辺の作品も読めるようになったのだなと。
文章が洗練されているとかそんなレベルでは無く、もうページごとに気付くことが多すぎるんですよ。
うわっ、そんな表現あるの?
めちゃくちゃ頭の中で想像しやすいんやが〜〜!!!
って感じに。そんな絶頂が毎ページおこるって凄すぎません??
多くの文学賞、及び海外への翻訳も納得の作品でした。
誰だって普通じゃ無いところを持ってて、そこを治療するとか直すとか、そんなアプローチとは真逆なことをしてくるのに、何故だか不思議と前を向ける。
noteの休憩期間を破り、このタグ『#名刺代わりの小説10冊』のことを思い出させてくれた『コンビニ人間』に感謝を。私もnote人間になります。
蛇足 ここにある作品は、誰かにとっての駄作
ってなわけで色々駄文乱文拙文ながら色々紹介させていただきました。
ただここにある小説にも必ず五つ星評価で星1が罵詈雑言と共につけられていたり、無言でつけられていたりします。
嗜好とかも偏っている方だとは思いますし、この十冊を見て馬が合わない、幼稚と感じられた方も少なくはないと思います。
こんなので君は変わったの? いやいやもっと素晴らしい作品はあるよね……と。
でもそいういうのも含め、本ってのは素晴らしいと思います。どの作品が人の人生に影響を与えるか分からない。
同じ作品が選ばれるならともかく、理由まで一緒で選ばれることは10冊どころか1冊も無い。
自分には合わなかった作品で、時間の無駄だったと壁に投げたくなるような作品でも、もしかすると人の人生を変えているかもしれない。
映画やアニメもそれは同じですが、ほとんど文章だけの小説って娯楽の中でも自分が想像できる余地が大きく、良くも悪くも感想や刺さり方の多様性が顕著に見られる媒体だと感じます。
信者のように疑問や批判を受け付けないファンやその対極にいるアンチ、その良い感じの中間にいて、良い点も悪い点もそうだよね、それはあるかもと受け入れられる。
そんな小説を含めた読書の世界が、私はとんでもなく大好きです。
自慢の趣味、出会えて良かった。ここの10冊には自信がありますが、いつかは更新されるでしょう。その時を心より楽しみにしています。
これなら越えられんじゃね? と思う作品があれば是非教えてください。
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