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Vol.3 Toda Chitoku|全身代謝と感情をコントロールする脳内メカニズムを知りたい博士

1.どのような研究をしていますか?

食欲、体重、血糖値など、全身の代謝調節に関わる脳の機能を研究しています。また、満腹で心地よく感じることや精神的ストレスが糖尿病を引き起こすなど、代謝と感情の結びつきから起きる脳内変化のメカニズムも研究しています。私の研究では、組織が分泌するホルモンや血中栄養素の濃度など、末梢組織から送られる全身の栄養状態を知らせる信号が、どこの脳の神経細胞に作用し、どのような神経回路を介して食欲や代謝を変えるか、に着目しています。また、肥満、老化、精神的ストレスを受けた時などに糖尿病になりやすくなる理由について、脳を標的に研究しています。具体的には、マウス脳内神経核へのホルモン微量注入や、神経細胞の神経活動を人工的に調節するなどにより、血糖値、食べる量、エネルギー消費量などの様々な指標の変化を測定しています。また、シングルセルRNA seq、メタボローム解析、行動中のマウスの神経活動測定なども行っています。これらの研究は、糖尿病・うつ病の予防、治療法・治療薬の開発に繋がっていきます。食べる事は幸せの1つだと思うので、美味しいものを食べて健康に歳を重ねることを目指した研究をしたいです。私自身、研究を進める中で様々なデータが出てきて、それに関連した文献を読むと、色々と仮説が生まれてとてもワクワクします。実験をして、次の仮説が出てくると言うサイクルが楽しくてやめられません。先生、先輩、後輩、学生など、”人”との出会いもとても面白いです!

生理学研究所(箕越靖彦先生の研究室)での大学院時代
Yale大学留学中(Sabrina Diano Lab)

2.どんな人生を経て、熊本大学に?

10代は剣道、ブラックバス釣りで遊んでいました。典型的な田舎の子供でした。20代は臨床獣医師を目指していたので、かなり実習に積極的な学生だったと思います。希望者だけが参加する知床実習でヒグマを捕獲しようとしたり、外科実習で率先して術者をやりたがるような学生でした。その後は、北大獣医が研究に力を入れていると知って、学生の時だけ研究をしようと思って生化学教室に入りました。褐色脂肪組織の研究をしていましたが、この組織の熱産生を調節する脳の機能に興味を持って、生理学研究所の大学院に行き、研究の世界から抜け出せなくなりました。アメリカ留学後、北大獣医の助教を経て、運良く熊本大学で独立PIとして准教授になることができました。人生に正解は無いので、いまだに迷い続けています。上手くいった時もあれば、失敗した時もあって、それも全て経験として蓄積しているかなと思いますが、結局同じミスをすることも多いです。成長していかなければダメですね。。。

全米大会閉会式後の写真

3.研究以外で実は没頭していて自分にとって欠かせないものは?

剣道です。小学3年生から続けており、大学時代には個人戦も団体戦も全国大会出場しています。大学4年の時は北海道予選の団体戦優勝メンバーです。アメリカ留学時代もニューヨークのチームの一員として2017年の全米大会で団体戦2位になりました。熊本に来てからは子育て等があり、稽古する時間がなく、2月の久しぶりの稽古では左足の肉離れを起こして、現在回復を待っています。今後は、熊大剣道部の稽古にも出る予定です。研究以外の活動をすることで良い気分転換や研究以外の人たちとのつながりができて、自分にとって欠かせないものになっています!

AMED-PRIME「マルチセンシング領域」で同じ1期生の榛葉健太先生(東京大学大学院新領域創成科学研究科)。北大廣田剣道場にて。趣味が人脈を広げてくれることもあります。私の研究室の助教と秘書さんも剣道経験者ですが、特に剣道で採用したわけではありません。
現在のラボメンバー。
2022年12月研究室スタート時は2人だけだったのが、少しずつ増えてきました。

▼所属研究室▼
〜生命科学研究部〜

〜研究室HP〜

▼紹介記事1▼
〜食欲を抑える神経細胞の一種を発見!肥満治療への貢献に期待〜

▼紹介記事2▼


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