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芥川賞をぜんぶ vo1 父が消えた

読みはじめて、あ、読みやすい、令和のいま読んでも共感できるな、どこかですれちがってるかも。と思ったら、赤瀬川原平さんのペンネームだった。すでに出逢っている。「老人力」や「超芸術トマソン」連載などは読んでいたから、既知の作家だったとも言える。


父が消えた:
先輩と後輩、男ふたりの軽妙な会話のやりとりはユーモアにあふれ、実は、亡父の墓探しの道中と知っていながらも、くすりと笑える。人間は悲しくても腹が減るし、怒っていても笑いを求めたい、どうしようもなくお馬鹿な生き物なのだ。

お湯の音:
短編集の最終譚、銭湯の出前の話は、とぼけていて大好き。
圧縮された銭湯をふくらますと、どこからか“ひと風呂浴びにご近所さんがやってくる”なんて、ほのぼのしていいなぁ。読後感もさっぱり気持ちよかったわ。

青空にほんのりとオレンジ色がはいってきている。オレンジ色は青空の下の方からほんの少しだけはいり込み、そこからほんのわずかに黄色がひろがり、だけど黄色はすぐに黄緑色になっていて、その先の緑色というものは、もう広い青空の中に消えていてわからない。青空はまだちゃんと青空で、そういう色の動揺はまだほとんどわからない。だからオレンジ色といってもほんの耳掻き半分くらいが、青空の1番下の、地平線の1ミリくらいのところに、ハラッと撒かれているだけである。

星に触れる

さて、芥川賞ぜんぶとは、還暦になるまでに何か記録めいたものを残したい、ふと思ったのがきっかけ。
芥川賞作家と言っても、受賞あと順調に読者をつかみ作家人生を歩み続ける人もいれば、受賞作が頂点でそのあと続かない作家もいるだろう。たいてい書評を参考に図書館予約をしているのだから、先輩作家陣のお墨付きの本を、より好みせず読んでみたらいいんじゃね? となった。

ただし自分の誕生年より10年あとの受賞作,既知の作家は除外とする。
それでも50年×上半期・下半期、たまに該当なしもあり、数えてみたら108作。すでに読んでいるのが22作品だから86作品。おぉけっこうあるやん。
面白いことに、十代で読んだのは3冊、二十代と三十代は5冊づつ、四十代は3冊、五十代は6冊だった。四十代は子育てしながらの派遣社員で忙しかったのだろうな。

ひと月二冊読めば43ヶ月、3年半まぁがんばってみます。
毎年受賞作が増えていくため、追いつけるか問題だけど。

父が消えた 第84回(1980年下半期)芥川賞



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