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流浪の月 水無月の読書

広瀬すずと松坂桃李主演で話題の映画の原作。
本屋大賞を受賞後、図書館予約を入れ、たまたま映画上映と重なる時期に読みはじめた。

まだ読んでない方のため、ネタバレしないようにボカしています。


兄妹でなく、親子でなく、友人でなく、
バディでもなく、師匠と弟子ですらない。
性愛のない男女の関係は呼び名をもっていない。
世間の基準からはみ出した彼らは、どこにも居場所がないのだ。

痛くつらい。
そう感じるのと、思われるのと、どちらが本当につらいのか。第三者に憐れみを受けながら人生を暮らすなんて、痛いたしい。更紗も、そして文も。

どんな痛みも誰かと分かち合えるなんて偽り、と作者は言う。

私の手にも、みんなの手にもひとつのバッグがある。それを代わりに持ってもらえない。一生自分が抱えて歩くバッグの中に、文のそれは入っているし、私のそれも入っている。中身はそれぞれ違うけれど、決して捨てられないのだ。

デジタルタトゥー。自分や他人を検索すれば、いとも容易く過去があぶり出される現代。
つらいことは忘れてしまっていいよ。あなたはあなた、他人の評価や分析なんて気にしなくていいよ。と言ってくれるひとがそばにいてくれたなら、軽くなれるのに。興味本位や偽善者が世間にはなんと多いことか。

ただ、更紗をぎゅゅーと抱きしめてあげたい。

二人のこれから、もう誰にも後ろ指さされたり、邪魔されたりしませんように。もう誰にも許しを請わなくてもいいんだよ…と本を閉じた。

流浪の月
凪良 ゆう

関西では6月に「水無月」の和菓子を食す

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