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プラットホーム

閉ざされた空間に何かひとつだけもちこめるとしたら…

知識?武器?財産?信仰?希望?それとも友情?

 数ヶ月から数年過ごすなにも無い部屋に、ひとつだけ持ちこめる、”何か”!
主人公ゴレンが選んだのは本、それも『ドン・キホーテ』スペインの古典小説だ。同室となったトリマカシが持ち込んでいたのは包丁。壁には42と大書。

 ここは縦型の監獄。

 最上階は一流シェフが調理した貴族の様な豪華メニュー。ところが、1階下がるに連れて、階級が下がって行くように、料理が削られていく、汚されていく、つまり上層者が食べ残した食事なのだ。
 室内には二人だけ。壁にはフロアを示す数字、1日1回だけの食事は穴の上から降りてきて、数分後には穴からひとつ下のフロアへ下っていく。1か月単位でフロアは変わり、下層フロアには残飯すら届けられない。

ひとは生きるために何が必要なのか。ひとは何のために生きるのか。

 もちろん、生きるためには食糧は絶対不可欠。しかし、それだけでは飽食となり魂は空洞である。下層階の死因は飢餓であり、上層階の死因は”頭がへんになって穴から飛び降りるんだ”、と。宗教的にぼかしが入るエぐいシーンもある。プラットフォームに飛び乗り、各フロアで子供を探し続ける女性戦士、ペットを持ち込み一人分の食糧を分け合う女性。

 needとwant、鶏が先か卵が先か、考えさせられる哲学的な映画だった。内戦が長かったスペインだからこそ、体制批判や連帯や隣人を信じることを訴えたかったのかもしれない。ラストシーンは安直に思えたから解説がほしい。
 
 さて、観終わって1週間以上もたったが頭の中からこびりついて離れず、自分なら何を選ぶか、パートナー・同室者にはどうあってほしいか等など、考え込んでしてしまうのだが、解答は出ない。ただひとつ言えることは、札束を持ち込んだ輩はド阿呆だった、それだけである。

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プラットホーム 原題:El Hoyo/英題:THE PLATFORM
2019年/スペイン/94分
イバン・マサゲ、アントニア・サン・フアン
字幕翻訳:大嶋えいじ
配給:クロックワークス

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