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わたしやかぞくのはなし

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わたしやわたしをとりまく家族たちの話です。
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2023年3月の記事一覧

キャラメルとオブラート

潮の香り。 引き戸の玄関をガラガラと開ける。 石段が2段あって、下りると目の前には右側にコンクリートの塀があり、その中にある2階建てのベランダにはそよ風に揺られて洗濯物のシーツがゆらゆらと軽やかに踊っている。 左側には雰囲気のある日本家屋が静かにたたずんでいて、その隣は昔は旅館だった細長い家屋が続いている。 左右の家の間にはアスファルトの細い道が続いていて、その先に海が見えた。 私の街の港には商船がたくさん停まっているので、〇〇丸のように大きな文字が書かれた船が停泊してい

彼女の傷はばんそうこうの中にかくしている

あれ……? と思ったのは、評価学の授業の時だった。 私はまだその頃はリハビリテーションの専門学校の学生で 「評価学」というのは、関節の固さ、筋力、感覚、バランス、反射、高次脳機能といった、患者さんなどの対象者に起きた困りごとや困難感の一因を探るような、身体機能を確認するアセスメントの技術を学ぶ授業である。 その日の授業は、筋力のテストをお互いに実技を交えて確認するものだった。二人一組で検査する役と患者役を交代しながら、体を接近しながらクラスメイトと技術を確認していく。

ハグが好きな私たちとハグを禁止された息子の話

今年も言われたな....と思いました。 学校の年度末には、面談がだいたいあるものです。 私の息子は小学校の支援級に所属しており、交流級と半々の生活を送っていて、毎年、年度末には支援級の学級担任と面談があります。 一年のおさらい。 できるようになったこと。 これからものばしていきたい良い面。 まだ引き続き課題となっていること。 一年を通しての行われた行事や学業の振り返り。 来年(6年生)を迎えるにあたっての見通し。 話している中で昨年に続き話題に出たのです。 それは

2011.3.11のあの日

6分前の14時40分。 そのあたりから気づいたら会議は始まっていた。 会議のメンバーは、これから退院を控えた患者さん、ケアマネージャー、ソーシャルワーカー、看護師、リハ担当のPT、そしてリハ担当のOTである私。 ソーシャルワーカー主体で話が進行していた。 私たち病院スタッフは、今までの入院生活の様子を各コメディカルの目線から伝え、そしてそこから患者さんの退院後の生活を皆で話し合う。 話し合いの場は患者さんの病室。8人部屋の多床室で患者さんのベットを囲むように私たちは向か